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怖かったけど、窓の外の闇に首を突っ込んでみた。
闇だ。なにも見えない。続けて上半身ごと窓の外に晒してみた。90度カラダを折り曲げる感じだ。
若干へっぴり腰みたいな感じで、手をバタバタさせてみた。なにもない。ただただ闇が広がっているだけだった。
そのとき、信じられないことが起きた。誰かがうしろからアタシを突き飛ばしたのだ。正確に言うと、アタシのおしりを押し出したのだ。
アタシは声もないまま窓の外に放り出された。世界が暗転した。
一瞬だけ気を失っていたらしい。まばゆい光で意識を取り戻した。
アタシは落下しているらしかった。これがまるで湯船に浸かっているようで、なんとも良い心地。
だが光の正体をたしかめるとアタシの体温は急上昇した。
「タ、タキオカさん?」
またしても彼だった。彼のすがたは最初にアタシを助けてくれたときのように金色に光り輝いていた。背中に羽まではえていた。
「愛羅舞ラッシュ突入です」
「なんでもいいけど、アタシのおしり触ったでしょー……完全にセクハラですよ!」
「仕方ないんですって。貴女を窓の外に押し出すよう、言われてたんですって」
「説明していただければ自分の意思で降りました」
「……触りたかったんですって」
「ほら!」
タキオカに鉄拳制裁をくわえようと、ひたすら着地のときを待った。闇を抜けるとそこは赤色の大地だった。
地面に激突せずに済んだのは、どうもタキオカの光の加護があったからのようだ。ふうわりとアタシは着地した。さ、それとこれとは話が別よー。
「ちょっとタキオカさん、降りてきなさーい!」
殴られるのを悟ったか、彼は上空で待機していた。なんて小賢しい。
「おしりを触ったのは謝ります。でも、いまはそれどころじゃないです。ラッシュはもう、はじまってますよ!」
「なによ、ラッシュって」
彼の返答を待たずして、アタシは身をもってその意味を知ることになった。
モンスターだ。見るとそこらじゅうにいる。
「ヤ、ヤバいよ……タキオカさん!」
「こっちです」
空を行く彼に導かれるようにして、アタシは走り出した。
「愛羅舞ラッシュ開始――っ!!」
またどこかで声が聞こえた。例のナレーターさんだろう。
思い出した。パチスロで言うところのラッシュとは、一種の入れ食い状態のことだ。たぶん、アタシがこのモンスターたちをぶっ飛ばしたぶんだけ、コインが増える仕組みになっているはずだ。
冗談じゃない。ぼたんを喜ばせるために、なぜアタシが危険な目に遭わなければいけないのだ。
一目散に走った。行き先はわからないけれど。




