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コール・マイ・ネーム  作者: 大原英一
第2章 異世界と違世界
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 このヘンな世界に紛れ込んだアタシは、本当にアタシ自身だろうか。

 我思う故に我あり。なので記憶だの思考回路だのは間違いなくアタシなのだが、さて見てくれは?

 こんな心配をするのも、タキオカのプチ変身を見てしまったからだ。アタシもどんな面白いキャラになっているか、わかったものじゃない。


 バッグからスマホを取り出した。スリープ・モードになっている黒い画面は手っ取り早い鏡面になる……はずだった。

 思わず腰が砕けた。スマホのなかにも、ぼたんがいる。窓から見える様子とまったく同じだった。

 今度はバッグからコンパクトを取り出した。これでも女の子ですもの、化粧道具のひとつくらい持っとりますよ、そりゃ。

 やっぱりだ。ここにも彼女が映っている。どうやら鏡という鏡は役に立ちそうにない。するとアタシには自分の顔を確認する術がない。そもそも、どんな顔だったっけアタシ……。


 スマホのスリープ・モードを解除しようと試みたが、電源が入らなかった。電話としてもモバイル端末としても、鏡としても使えないなんて。まったく。

 無駄とわかっていながら、オフィスにある固定電話をいじってみた。やはり通話はできなかった。すべてがお飾りだ、この部屋は。

「タキオカさーん! ……ルシファーさーん!」

 無駄とわかっていても、考えられることは試さずにはいられない。助けを呼んでみたが、誰からも返答はなかった。ちっ。


 時間の感覚がなかった。オフィスには壁かけの時計があったが、これもお飾りで針は止まったままだった。

 お腹も空かず眠くもならず、トイレにも行きたくならなかった。おいおい、これは軽く拷問だぞ。そのうち退屈で死んでしまう。

 と、そのとき状況に変化があらわれた。オフィスに設置されたパソコンのディスプレイのうちのひとつが、ぼうっと光りはじめたのだ。

 さっそくアタシは飛びついた。どんな情報でも欲しかった。


 ディスプレイに映し出されたのは、インターネットのサイトのようだった。どうも小説の投稿サイトであるらしい。

 小説なんて、正直どうでもいい。こっちは生きて現実へ還れるかの瀬戸際なのだ。とりあえずヤフーのポータル・サイトへ行けるか試してみた。

 ダメだった。ほかのどのサイトへもアクセスできなかった。つまり、この小説投稿サイトを見ろってことなのだろう。誰の差し金かしらないけど!

 あらためて画面を確認すると、どうやらこれは個人のユーザ・ページで、すでにログインしてある状態のようだった。

 

 ハナノエイジ [ID:XXXXXX] でログイン中


 とある。つまり「ハナノエイジ」さんの個人ページということだ。

 勝手に閲覧していいものだろうか。だが、ここまでお膳立てされているのだから、見てくれといってるも同然である。

 ハナノエイジなんてアタシはしらない。が、ある程度予想はついた。この現場でアタシのしっている人物で、「エイジ」という名の男がひとりいる。

 これはたぶん、オオカワエイジの個人ページだ。

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