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ぼたんと偶然再会したのをきっかけに、アタシは彼女としばしば会うようになった。二、三ヶ月おきには会っていると思う。たまに半年くらい間が空くことがあるが、それ以上はない。
彼女はパチンコで生計を立てている、らしい。本当かなという気はするが、彼女がそう言うのなら信じよう。とりあえず、毎日パチンコばかりやっているのは事実だ。
学生時代、彼女がパチンコをやっていたという話は聞いたことがない。アタシの記憶が正しければ、彼女はあらゆるギャンブルを嫌っていたはずだ。きっと社会人になってから趣向が変わったのだろう。彼女自身が変わったように。
「アタシねー、まさかねー、こんなんなる、なんてねー」
「なにがあったの、ぼたん。やつれちゃったよ?」
彼女はタバコの煙をぷうっと吐き出した。学生時代は吸っていなかったはずだ。
「なんかねー。最初に入った会社で、一週間もしないうちに、発狂しそうになって」
「そうなの? 志望してた派遣業界だったんでしょ?」
「そうだっけ」彼女は笑った。「なんかもうパニクって、会社も家も飛び出した」
「そんなこと、できたの?」
「いやー、人間追い詰められると、なんでもデキちゃうんだねー。まあ、どのようにして今日まで生き延びてきたかは、ご想像にお任せします」
これが五年くらい前の、喫茶店での話だ。
あれから彼女とたまに会うようになったが、あいかわらずの暮らしぶりのようだ。そして彼女はまだ死んでいない。勝手に殺すなって(笑)
この長い夏休みを退屈しないで過ごすために、アタシは彼女に電話した。
「やあ、舞っちんぐ。元気かい」
「元気。ぼたんは?」
「元気だよ、会社辞めてからずっと」
ということは、社会人になってからずっと彼女は元気だったのだ。会社を飛び出してはじめて社会人になるという、めずらしいパターンだ彼女は。
アタシは派遣の営業職を辞めたこと、九月から派遣スタッフにまわること、そして八月中が激ヒマであることを彼女に伝えた。そのうえで彼女に提案した。
「アタシと旅行しない?」
「うーん、こちとら万年、金欠でさ」
「パチンコを打つお金はある」
「あれは投資でさ」
予想どおりの返答にアタシは苦笑した。
「じゃあ、こうしよう。旅費はアタシがもつ。でもパチンコの軍資金までは面倒みないからね」
「マジで? 行く行く!」
かくしてアタシと彼女の、おそろしく地味な夏旅が幕を開けた。
レンタカーを借りて出かけた。彼女が運転してくれた。
手始めに埼玉県は狭山市と日高市の境界にあるサイボクハムを訪れた。サイボクハムって? 有名な豚肉が食べられる、総合アミューズメント施設だ。
そこで生きている豚を観たり、パターゴルフをやったり、もちろんおいしい豚肉を焼いて食べた。
以前は温泉施設もあったそうだが、なんかウィルスが出たとかで閉館してしまったらしい。なので、そこから次の目的地、群馬県は伊香保温泉に向かった。
三十路オンナの二人旅。最高に楽しかった。




