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コール・マイ・ネーム  作者: 大原英一
第2章 異世界と違世界
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 そんなわけで、八月はまるまるお休みすることになった。こんなに長い夏休みは社会に出てから、もちろん、はじめてだ。

 有給休暇ではないのが、ちと痛いが、まあそう贅沢も言っていられまい。幸いにもこれまで、まっとうに会社勤めをしてこれたおかげで、そこそこ蓄えはある。いや、彼氏もつくる暇がなかったほど忙しくしていたおかげで、加えて独り身でもあるので、貯蓄はかなりある。悲しいかな、自慢にならんね。

 なのでお金の心配などせずに、ひさしぶりに羽を伸ばすつもりだった。


 ……ヤバい、三日で飽きた。えーマジであと、ひと月近くもあるの? はやく仕事がしたい。いつからアタシは、つまらん仕事人じゃなくて仕事人間になってしまったのか。

 はっきり言うと、これまで仕事にかまけていた所為で、アタシはプライベートの友だちが少ない。学生時代の友だちはほとんど結婚していて、子どももいたりするので、そういう方がたとは別世界にいるアタシは話が合わない。

 どうしよう……ん? ひとりいたぞ変わったやつが。


 ぼたんはアタシの大学時代の友人で、ゼミが同じだった。

 彼女はアタシと同じくらいの背丈だが、アタシより痩せていた。べつに羨ましくないっすよ、でも、ちょっと羨ましい。

 彼女はさっぱりとした男まさりな性格で、ゼミでもよく発言した。彼女の研究テーマは、いま思い出したけど、派遣(業界)だった。

 ゼミにいるときから彼女は、就職先は派遣会社を考えていると豪語していた。つまり、アタシが先般までやっていたような業種を目指していたわけだ。

 考えてみれば、アタシが新卒で入ったシステム会社から派遣業界へと転職したのも、彼女の影響が少なからずあったからかも知れない。

 でも直接的じゃない。彼女には空白の期間がある。

 彼女は新卒で念願の派遣会社に就職した。しかも大手だった。が、そこを速攻で退職した。理由はよく、わからない。

 彼女と再会したのは、社会人になって三、四年目のころだ。アタシはすでにマンパラに転職していた。だから表面的には彼女はアタシの転職と関係ない。潜在的な部分で、アタシに派遣への興味を抱かせたのは彼女ではないか、という気がする。


 いまから五年くらい前に、突然彼女と再会した。

 ひとりの女性がパチンコ屋から出てきたと思ったら、それが彼女だった。ひさしぶりに会った彼女は、みすぼらしく見えた。

 アタシはパチンコはやらないが、べつにパチンコをやる人を悪く言うつもりはない。ただ、そのときの状況がそうだったというだけだ。

 たった三、四年の無沙汰だというのに、彼女はまるで別人のように見えた。なんというか、くたびれたような感じがした。

 だが、アタシの顔を認めると、彼女は一瞬だけ学生のときと同じ笑顔を見せた。

「……舞、ひさしぶりだね」

 アタシはそのとき、外回りの営業の途中だったのだが、かまわず彼女をお茶に誘った。お互いにいろいろと近況を報告しあった。

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