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コール・マイ・ネーム  作者: 大原英一
第1章 現実と連日
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 アタシの辞表は驚くほど、あっさりと受理された。

 営業部長のウツミいわく、「降格になったくらいで心が折れるような者は、営業には必要ない」そうだ。あいかわらず熱いおとこだ。直接言われたわけじゃないけど。

 だって(これでも)女の子ですもの。そこはやんわりと、人づてに、ね。

 べつにアタシは、この会社で定年をむかえるつもりはないし、ずっと営業をやっていくつもりもなかった。むしろ、これまでよく続いてきたものだと感心する。

 世間的にみても、二〇代は正社員として働き、三〇代になったらハケンに切りかえるというのは、女性にとってはメジャーな選択である。

 アタシにかぎって言えば世間とは縁遠いのだが、まあ、あれだ、ぶっちゃけて言うと品川の現場が気になっているのだ、すごく。


 当初は営業チームに残って自分をサポートしてほしいと言っていたトミタさんも、アタシのマンパラ退職が決定的になると、例のアタシの要望を聞き入れてくれた。

 オペレータとして、オオカワたちのいる品川の現場に入る。それがいまのアタシの望みだ。

 これでもアタシは新卒のとき、SEシステム・エンジニア見習い的なことをやっていた。だからオペレータやヘルプデスクがどんな仕事をするのか、よく知っているつもりだ。まったくの素人ではない。

 問題は、トミタさんも心配したとおり、品川の現場でこれ以上の増員要請があるのかという点だった。これに関しては賭けだった。

 が、どうやら、アタシはツイていたようだ。


 品川の現場(システム・ブルー社)の担当部長に、トミタさんがそれとなく打診してくれた。

「弊社の女性スタッフで、かつてIT業界にいたことのある者が一名、いまフリーの状態なんですが、いかがでしょう」みたいな感じに。

 担当部長さんは、えらく興味を示してくれた。オペレータやヘルプデスクの分野に、これから女性を増やしていこうという考えが以前からあったそうだ。

 運良く、八月いっぱいで現場を離れる既存のオペレータが一名いるらしい。なので九月からぜひ来てほしいとのことだった。まだ面談もしていないのに。

 それで至急、トミタさんとふたりでシステム・ブルー社の担当部長さんと面談した。即刻オッケーをいただいた。

 アタシの経歴などは、ほとんど突っ込まれなかった。二四時間、三六五日の交代勤務ですが大丈夫ですかと訊かれたので、大丈夫です、と答えた。それで終了だった。


 七月末日、アタシは五年ちょっと勤めたマンパラを退社した。そして九月からまた、派遣スタッフとしてこの会社に雇用されるのだ。

 営業職としての引継ぎは遅滞なく終わった、たぶん。引継ぎと言っても、アタシがこれまで担当していた顧客とスタッフをトミタ新課長にお渡しするだけだ。そのスタッフのなかに、これからアタシも加わるわけだから、ちょっと不思議な気もする。

 営業部長のウツミをはじめ、マンパラ社員の誰も、アタシが派遣スタッフとして再雇用されることに異を唱える者はいなかった。

 過去にオオカワという前例があるし、トミタさんにいたっては「出戻って」さえいる。辞めるとか戻るとか、あまり頓着しない会社の体質なのかもしれない。

 まあ、中小企業ならではの良さだ。

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