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コール・マイ・ネーム  作者: 大原英一
第1章 現実と連日
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 アタシは課長職を降ろされた。まあ覚悟はしていたが。

 三ヶ月連続で一人のスタッフも派遣できなかったことに加え、アライ君をはじめチーム全体の売り上げも落ちていたことが原因だ。

 アタシとは対照的に、トミタさんの勢いは止まらなかった。七月にもまた一人、スタッフを増員した。オオカワのいる現場だ。これで三人目である。どうなってるの、まったく……。

 アタシに代わって新しく課長に任命されたのが、誰あろうトミタさんだった。そりゃないっしょ、でも、彼の実績からしたら妥当な人事と言える。

 それで、トミタさんは横浜支社から本社へ異動。代わりにアタシの部下だったアライ君が横浜へ異動となった。ごめん、アライ君。

 ようするに、いままでアタシがいたポジションにトミタさんが入り、アライ君がいたポジションにアタシが(以下、略)。


 アタシの腹はすでに決まっていた。辞表を出そう、と。

 トミタさんと顔を合わせるのが辛かったわけではない。彼の下で営業として、いま以上にいい働きができる気がしなかったのだ。それならば……

 つぎのプランをアタシは考えていた。それをトミタさんに伝えるべく、アタシは彼をひそかに喫茶店へ呼び出した。イタリアン・ポマトとかいう例のヘンな名前の喫茶店だ。

「マジっすか」

 トミタさんは口を開けたまま固まってしまった。

「マジです」

 アタシは毅然とした態度で言った。すると彼は顔を掻きながら、

「いや、でも、もったいないですよ。せっかく今まで、営業をやってきたのに……」

 しばらく間をおいてアタシは言った。

「オオカワさんも、きっとこんな気持ちだったと思います。いまの環境を変えたいっていうか」

「なにかアテでも、あるんです?」


「アタシ、オペレータやります」

「はっ?」

 トミタさんは二の句を継げずにいた。

「オペレータになって、オオカワさんたちのいる現場に入りたい。営業担当はもちろんあなたです、トミタさん」

 アタシは言った。本心だった。

「マ、マジっすか……でも、どうして」

「だって楽しそうじゃないですか。変わり者のオオカワさんに、お調子者のタキオカさん。最近入ったシンタニさんはまだよく知らないけど、あなたが選んだスタッフなら間違いないはず」

 トミタさんは唸ってしまった。

「正直、ボクとしては痛いですね。剛流さんが今まで纏められていた営業チームをボクが預かるわけだから、貴女のサポートを期待しているんですが」

「……ごめんなさい」

 少しの沈黙のあと、トミタさんが口を開いた。

「でも品川の現場だって、これ以上増員がかかるか、わからないですし」

「あくまでアタシの希望です。でも、まだ増えそうじゃないですか、あすこ」

 これは営業としての、アタシの最期の勘だった。

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