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白銀の狼は血に濡れている。  作者: 真田遼一朗
白銀の狼は気高く吠える。
4/5

喫茶店のナポリタンは美味しそう

「……戻った」


 俺は約十分振りの人間の体をしみじみと確かめた。


 やっぱり使い慣れた二足歩行がしっくりくる。


「無事に戻って良かったよ。ちなみに心象力はまだ残ってる?」


「あ、はい。結構残ってる感じです」


 自分の心象力を明確に感じ取れるようになった俺は心の中の心象力の正確な量をも測れるようになっていた。


「心象力が無くなれば能力は使えなくなる。能力を使う際、考えて使う事を心がけた方が良いよ」


「分かりました」


「じゃあ、座って仕事の話をしようか」


「はい」


 能力の問題は解決した。


 俺と血ノ森さんは当初の目的である仕事の話に移るのだった。


「もう気付いていると思うけど仕事は能力者に関係している事だよ」


「やっぱりそうですよね」


 まあ能力者を探していたって時点で察しはついていた。


「おまけに命の危険も伴う仕事だ。無理に誘う事は出来ない。しかし、それ相応の報酬は払うつもりだよ。ちなみに月収はこのくらい——」


 提示された契約書と一緒に記してあった金額はえげつないものだった。


 一年働けば向こう二十年は贅沢に暮らせそうだ。


 やっぱり仕事の内容は一つしかない。


「仕事ってもしかして……」


「そう、対能力者の戦闘が君の主な仕事になる。命懸けの仕事だよ」


 能力者との戦闘。あんな事を仕事として出来るのだろうか。


「この仕事こそがさっき言っていた理由なんだ」


「と、言うと?」


「君はさっきの戦いを本当は勝利できたんだ。なぜだか分かるかい?」


 俺は首を横に振る。


「君が戦闘向きの能力だからさ!!!」


「勿体振った割には普通の事ですね」


 俺は冷静に忌憚のない意見ってやつを言った。


「でも俺にとっては大事な事なんだ。戦いに向いている能力者って存在は」


「そうですか……でも俺、全然戦えなかったし、これからも戦っていける自信は全くと言って良いほどありませんよ」


 能力があったって一度経験したあの感じ、痛みや苦しみを引っ括めた命を懸けた戦いの感覚は慣れる気はしない。


 だから俺は……。


「大丈夫だ。誰も強い俺がいる。それに上司として出来ない仕事はさせないし、何かトラブルがあって死にそうなら助けに行くよ」


 血ノ森さんは真っ直ぐその血のように赤い目で俺を見てそう言った。


「だから、俺を信じて俺の部下になってくれ」


 血ノ森さんを信じていないわけじゃない。


 能力者についての情報も教えてくれたし、ちゃんとした雇用である事も十分に分かった。


 俺は未だ見えてこない自分の心を確かめる。


 心象能力が発現したということは明確な自分がここには在るということ。


 なら戦っていけばいずれは能力を通して知りたかった自分を見つけることが出来るはず。


 俺はそう結論を付け、血ノ森さんに返事を返した。


「分かりました。その誘いに乗ります。これからよろしくお願いします」


「よろしく、士狼」


「え、何で俺の名前知ってるんですか」


「もちろん調べたからだよ。俺に知らない事はなにもないのさ。あと、これからは俺の事はボスって呼んでね」


「はあ……」


 どうやら俺は中々に変なボスの下に就職してしまったようだ。


「じゃあ、次はより明確な仕事の内容とその目的について教えていくよ」


「はい、ボス」


「うんうん、いいね」


 俺がボスと呼ぶと血ノ森さんはすごく嬉しそうだ。


 一応血ノ森財閥のトップのはずなのにな。


「士狼には俺直属の対能力者部隊ブラドの戦闘部門として活動してもらうよ」


「何ですかそれ。ひょっとして血ノ森だからブラドなんですか?」


「そうだよ。今考えたんだ〜。ちなみに他には裏方部門と諜報部門があるよ。どちらも能力者はいないけどね」


 そう聞くとちゃんとした組織に属している実感が湧いてきた。


「まあ覚えなくて良いよ。俺が管理しやすくする為の名称ってとこだから」


「分かりました。それでは、次にボスの目的を教えて下さい。何の為に俺は能力者と戦うんですか?」


「それは、能力者の社会的地位向上の為だ」


 確かに能力者は主に能力犯罪者としての事件が世間には周知されている。


 何も知らない人に実は能力者なんです、なんて言ったら叫びながら逃げ出すかもしれないな。


 それだけ能力にまつわる話題に良いものが無い印象って事だ。


「今、能力者は能力を悪用する能力犯罪者のせいで悪いイメージが付きつつある」


 ボスも俺と同じような考えから行動を起こしたようだ。


 さらにボスは先に焦点を合わせた話を続けた。


「しかし、能力者の原理から推測できる通りいずれ全ての人間が能力者になる。俺は次々と現れるだろう能力者に向けられる偏見を出来るだけ無くし、能力者の存在を世界に順応させていきたいと考えているんだ」


「なるほど、そのために俺は能力犯罪者を倒して、少しずつ能力者の悪評を無くしていけば良いって事ですね」


「理解が早くて助かるよ。そう、俺が流した情報で世界中の能力犯罪者はこの京都にやってくる」


「その能力犯罪者を返り討ちにし、無力化するのが俺の仕事——」


「ああ、そうだ」


 段々と仕事の全容が見えてきた。


 やることがシンプルなのは色々と考えなくて良かった。


 しかし、世界中から能力犯罪者がわざわざ来るような情報ってなるとやっぱり能力絡みなのだろうか。


 俺はおおよそを気付きながらも情報について聞いてみた。


「情報というのはやはり……」


「心象能力の事さ。しかも、能力の先に行く為の重要な秘密だ。誰であろうと喉から手が出る程の情報だよ」


「じゃあ俺が戦う能力者たちは一筋縄じゃいかなそうですね」


「まあ、俺が戦い方教えるよ。なんなら今日このあと仕事の前までみっちり教えようと思ってるし」


「えっ、もう仕事あるんですか?!」


 ボスがさらっと言った言葉に俺は驚いた。


 もう仕事、つまりは能力犯罪者との戦いだ。


 さっき出会ったばかりだと言うのにもう新しい能力犯罪者が現れたのか。


「そもそも、奴らは最近二人組でここに現れている。今までは統率もクソもなかった能力犯罪者共はここ半年で裏にいる何者かに雇われているような素振りを見せている。だから頻度も高いのさ」


 何だか急に決まった初仕事に緊張してきてしまった。


 そんな俺にボスはにこやかに仕事の概要と流れを教えた。


「仕事は深夜、場所は分かり次第すぐに携帯に送ってこられるよ。それまで俺が色々と教えてあげるから覚悟しておいてね」


「了解です。頑張ります」


 仕事の話はこれで一旦終わり。


 話が終わったボスはふと時計を見て昼食の提案をしてきた。


「じゃあ良い時間だし、昼ごはんにこの喫茶店の看板メニューのナポリタン、一緒に食べようか」


「はい、いただきます」


 その後、めちゃくちゃ美味しそうなナポリタンをボスと二人で食べたのだった。

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