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第68話 「収束」

 世界は、静かに変わっていた。


 もはや、目に見える大きな衝突はない。


 だが。


 その内側では――


 確実に、何かが進んでいる。



 森の外縁。


 疑う者たちの拠点。



 火は整然と管理され。


 拠点は以前よりも広がり。


 構造物は、明らかに“計画的”に配置されていた。


「……変わりましたね」


 リリアが呟く。


 ただの集合ではない。


 そこには、秩序がある。


 エルミナが静かに言う。


「ええ」


「試行の積み重ねが、形になっています」


 セリスが低く続ける。


「……無駄が減っている」


 ノアが笑う。


「うん」


「やり方を覚えたね」


 アレンがその様子を見ながら言う。


「……まとめ始めたな」



 個体たちが、地面に線を引く。



 だが。


 以前とは違う。


 ただの記録ではない。


 繰り返し。


 整理され。


 並べられている。


「……あれ」


 リリアが目を細める。


「同じ形……?」


 エルミナが頷く。


「ええ」


「規則を抽出しています」


 セリスが言う。


「……共通点の整理」


 ノアが続ける。


「つまり」


「“法則の体系化”」


 アレンが小さく笑う。


「来たな」



 火はこうすれば強くなる。


 こうすれば消える。


 こうすれば維持できる。



 それらが。



 “知識”として残される。



「……すごいですね」


 リリアが呟く。


 エルミナが微笑む。


「ええ」


「これはもう、単なる経験ではありません」


 セリスが一言。


「……理論だ」


 ノアが言う。


「世界を説明できるようになってきてる」



 一方で。



 森の中央。


 信じる者たちの拠点。



 こちらもまた――


 静かに変わっていた。



 塔は完成に近づき。


 その周囲には、明確な配置が存在する。


 内側。


 外側。


 役割ごとの位置。


「……整ってますね」


 リリアが言う。


 エルミナが頷く。


「ええ」


「非常に安定しています」


 セリスが低く言う。


「……揺らぎが少ない」


 ノアが笑う。


「完成形に近いね」



 中央。


 リーダーが、静かに立つ。



 以前のような激しい動きはない。


 ただ。


 ゆっくりと。


 言葉を発する。


「……」


「……なんか違う」


 リリアが呟く。


 エルミナが言う。


「ええ」


「命令ではありません」


 セリスが続ける。


「……説明だ」


 ノアが笑う。


「来たね」


 アレンが静かに頷く。


「……解釈してるな」



 信仰は。



 “ただ信じる”段階を越えた。



 何を意味するのか。


 なぜそうなのか。


 どう行動すべきか。



 それを。



 “言葉で説明し始めている”。



「……」


 リリアが小さく言う。


「なんか……似てきてません?」


 エルミナが静かに頷く。


「ええ」


 セリスが低く言う。


「……構造が近い」


 ノアがアレンを見る。


「ねぇ」


「何だ」


「これ」


「同じことしてない?」



 科学は。


 世界を説明する。



 信仰も。


 世界を説明する。



 方法は違う。


 だが――



 やっていることは、同じ。



「……」


 アレンが小さく笑う。


「そうだな」


「収束してる」



 その時。



 再び。



 境界へ。



 二つの集団が、近づく。



 だが。


 以前とは違う。


 緊張はある。


 だが。


 敵意は弱い。


「……」


 リリアが息を呑む。


 疑う側のリーダーが。


 前に出る。


 地面に、線を引く。


 形を示す。


 火を使う。


 変化を見せる。



 説明。



 信じる側のリーダーが。


 それを見る。


 そして。


 ゆっくりと頷く。


「……え?」


 リリアが驚く。


 エルミナが言う。


「……理解しています」


 セリスが低く言う。


「……否定していない」


 ノアが笑う。


「来たね」



 信じる側が。



 空を指す。



 だが。


 以前のような“否定”ではない。



 “補足”。



「……」


「……え?」


 リリアが混乱する。


 エルミナが静かに言う。


「……繋げています」


 セリスが低く言う。


「……現象と意味を」


 ノアが笑う。


「これだよ」


 アレンが小さく呟く。


「……いいね」



 火は。



 燃えるものがあるから燃える。



 だが。



 “なぜそれが存在するのか”。



 そこに。



 意味を見出す。



「……」


 リリアが小さく言う。


「……どっちも」


「間違ってない」


 エルミナが微笑む。


「ええ」


 セリスが一言。


「……統合可能」


 ノアが笑う。


「面白いでしょ」


 アレンが空を見る。


「……ここからだな」



 世界は。



 分かれていた。



 だが。



 今。



 再び――



 “近づいている”。



 それは。



 争いではない。



 理解。



 そして。



 その先にあるのは。



 “共存”か。


 それとも――


 “新たな衝突”か。



――第68話 完


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