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第34話 「境界突破」

 翌朝。


 王城は異様な緊張に包まれていた。


「……本気なのか」


 王が低く問う。


 玉座の間。


 アレンたちが立っている。


「本気だ」


 アレンは即答した。


「向こう側に行く」


 ざわめきが走る。


 重臣たちが顔を見合わせる。


「正気とは思えん」


「帰ってこれる保証はあるのか」


「未知すぎる……!」


 声が飛ぶ。


 だが。


 アレンは動じない。


「保証はない」


 正直に言う。


 その一言で空気が固まる。


 だが続ける。


「でも」


「放置したら確実に終わる」


 沈黙。


 王が目を閉じる。


 そして。


「……そうだな」


 静かに頷いた。


「ならば問う」


「方法はあるのか」


「ある」


 アレンは答える。


「昨日、見えた」


 視界の奥。


 あの“層”。


「接続は一方通行じゃない」


「干渉できる」


 エルミナが補足する。


「つまり」


「逆流も可能、ということです」


「成功確率は?」


「分からん」


 アレンは肩をすくめる。


「でもやる」


 リリアが笑う。


「いいですね」


「そういうの好きです」


 セリスも言う。


「私も同行する」


「当然です」


 エルミナも頷く。


 完全に意思は固まっている。


 王はそれを見て、深く息を吐いた。


「……止めても無駄か」


「無駄だな」


 アレンが即答する。


「……分かった」


 王は立ち上がった。


「ならば」


「全面支援する」



 遺跡深部。


 再びその場所に立つ。


「……ここからですね」


 エルミナが静かに言う。


「だな」


 アレンは一歩前に出る。


 空気が重い。


 だが。


 今はもう違う。


「見えてる」


 境界。


 薄い膜。


 世界と世界の間。


「……これが」


 リリアが手を伸ばす。


「触れるな」


 アレンが止める。


「不用意に触ると引きずられる」


「怖いですね」


 だが少し楽しそうだ。


「準備はいいか」


 三人を見る。


「はい」


「ええ」


「問題ない」


 完全一致。


 アレンは小さく笑った。


「……じゃあ行くか」


 手を上げる。


 集中。


 鑑定。


 そして――


 “干渉”。



【境界】

状態:干渉可能

条件:高負荷

結果:不明



「……開くぞ」


 ゆっくりと。


 空間に触れる。


 そして。


 押す。


 膜が歪む。


 軋む。


「っ……!」


 負荷がかかる。


 だが。


 止めない。


「開け……!」


 さらに力を込める。


 その瞬間。


 パリン、と音がした。



 境界が割れる。



 目の前に。


 “別の空間”が現れた。


 色が違う。


 空が違う。


 重力すら違うような感覚。


「……これが」


「向こう側……」


 エルミナが呟く。


 リリアが笑う。


「ワクワクしますね」


 セリスが低く言う。


「警戒を怠るな」


 アレンは一歩踏み出した。


「行くぞ」



 踏み込む。



 瞬間。


 全身に圧がかかる。


「っ……!」


 リリアが歯を食いしばる。


「これ……やばい……!」


 エルミナも耐える。


「存在そのものが……押されている……!」


 セリスが構える。


「……ここが戦場か」


 アレンは周囲を見る。


 そして。


 理解する。


「……なるほどな」


「ここ」


「“価値”がそのまま力になる場所だ」


「……」


 三人が息を呑む。


「じゃあ」


 リリアが笑う。


「アレン最強じゃないですか」


「まぁな」


 否定しない。


 その瞬間。


 空間が揺れた。


「……来る」


 アレンが言う。


 そして。


 目の前に。


 再び“それ”が現れる。


 昨日の上位観測存在。


 だが今度は――


 より明確な形を持っている。


「……侵入確認」


「異常個体および随伴個体」


「……歓迎する」


 空気が凍る。


 完全な敵地。


 だが。


 アレンは笑った。


「歓迎どうも」


「ぶっ壊しに来た」


 “それ”がわずかに揺らぐ。


「……理解不能」


「理解しなくていい」


 アレンは一歩前に出る。


「全部見抜いて」


「全部潰す」


 リリアが剣を構える。


「いいですね」


 エルミナが魔力を展開。


「行きましょう」


 セリスが前に出る。


「ここが最前線だ」


 そして。


 戦いは始まる。


 世界の外側で。


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