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第35話 「観測領域決戦」

 異界――観測領域。


 そこは、世界ではなかった。


 空はある。


 地面もある。


 だが。


 すべてが“意味”でできている。


「……気持ち悪いな」


 アレンが呟く。


「理解できます」


 エルミナも顔をしかめる。


「構造が曖昧すぎる……」


 リリアは逆に笑っていた。


「いいじゃないですか」


「壊し放題ですよ」


 セリスが低く言う。


「油断するな」


 その瞬間。


 “それ”が動いた。


「排除開始」


 一言。


 それだけで。


 空間が崩れた。


 圧。


 重力。


 概念。


 すべてが襲いかかる。


「っ……!」


 リリアが踏みとどまる。


「これ……!」


 エルミナが魔力を展開。


「物理じゃない……!」


 セリスが剣を振る。


 だが。


 刃が通らない。


「効かない……!」


 アレンは一歩前に出た。


「当然だ」


「ここは“価値”で殴る場所だ」


 視界が変わる。


 すべてが見える。


 重み。


 優先度。


 存在の“格”。



【上位観測存在】

価値:極高

構造:概念体

弱点:干渉可能(限定)



「……なるほどな」


 アレンは笑った。


「倒し方も分かる」


 “それ”が動く。


 一瞬で距離を詰める。


 攻撃。


 だが。


「遅い」


 空間がズレる。


 攻撃が外れる。


「……干渉?」


「支配だ」


 アレンは答えた。


 そして。


 手を上げる。


「下げる」


 その瞬間。


 “それ”の動きがわずかに鈍る。


「……?」


「価値をな」


 アレンは静かに言う。


 そして。


 振り返る。


「お前ら」


「今のままだときつい」


「……分かってます」


 エルミナが言う。


「ですが……」


「上げる」


「え?」


 アレンが一歩近づく。


「リリア」


「はい?」


「来い」


「え、ちょ――」


 引き寄せる。


 距離ゼロ。


 耳元で囁く。


「お前の価値」


「引き上げる」


 その瞬間。


 リリアの体が光る。


「っ……!」


「なにこれ……!」


「いいだろ」


「……最高です」


 即答だった。


 セリスが眉をひそめる。


「私もか?」


「当然」


 エルミナも少しだけ顔を赤くする。


「……必要、ですね」


「必要だ」


 アレンは二人にも触れる。


 同時に。



 価値が上がる。



「……これは」


 エルミナが息を呑む。


「力が……桁違いに……」


 セリスが剣を握る。


「……軽い」


「全部見える」


 リリアが笑う。


「行けますねこれ」


「行け」


 アレンが言う。


 三人が同時に動く。


 速度が違う。


 質が違う。


「はあっ!」


 リリアの一撃が通る。


「効いてる!」


 セリスが続く。


「斬れる!」


 エルミナが支援。


「拘束可能!」


 “それ”が初めて揺らぐ。


「……異常」


「補正不能」


「当然だ」


 アレンが言う。


「こっちのルールに引きずり込んだ」


 そして。


 踏み込む。


 距離ゼロ。


「終わりだ」


 手を伸ばす。


 “それ”に触れる。



 深く潜る。



 観測。


 構造。


 そして。


 その奥。


 さらに上位。


「……いるな」


 アレンが呟く。


 “本体”。


 観測の中心。


 世界の管理者。


 だが。


 今は――


「お前からだ」


 現実へ戻る。


 “それ”が崩れ始める。


「……排除……失敗……」


「当然だ」


 アレンは言う。


「見えてるからな」


 そして。


 最後に。


「切断」



 パリン。



 音が響く。


 概念が砕ける。


 “それ”が消える。


 完全消滅。



 静寂。



「……」


「……」


「……やった?」


 リリアが呟く。


「一体はな」


 アレンが答える。


 その瞬間。


 力が抜ける。


「っ……」


 倒れる。


 だが。


 今度は。


 三人同時。


「……!」


「アレン!」


 完全に抱き止められる。


 距離ゼロ。


 むしろ押しつぶされるレベル。


「……」


「……」


「……苦しい」


「我慢してください」


「無理です」


「でも離れません」


 完全一致。


 アレンは苦笑した。


「……まぁいいか」


 そのまま目を閉じる。


 少しだけ休む。


 その時。


 視界に表示が浮かぶ。



【観測中枢】

状態:認識完了

次段階:直接干渉可能



「……」


 アレンは目を開ける。


 そして。


 呟く。


「次は」


「本体だ」



 物語は。


 ついに。


 “最終局面”へ。


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