第28話 「接続切断」
空気が歪む。
観測者の端末が、静かに手を上げた。
「来い」
その一言で。
空間が裂ける。
影が溢れる。
だが今までと違う。
密度が違う。
“質”が違う。
「……厄介だな」
アレンは小さく呟いた。
「どうする?」
リリアが剣を構える。
その目は楽しそうだ。
「全部まとめていく」
「了解!」
即答。
セリスも前に出る。
「正面は任せろ」
エルミナが魔力を展開。
「後方支援に入ります」
アレンは一歩踏み出した。
視界が広がる。
戦場全体。
流れ。
そして――
“接続”。
⸻
【影群】
状態:観測者と接続
弱点:接続ライン
⸻
「……やっぱりな」
アレンは笑った。
「全部繋がってる」
「どういうことです?」
エルミナが聞く。
「こいつら個体じゃない」
「全部一つの“系”だ」
「なら」
セリスが言う。
「元を断てば終わるか」
「そういうこと」
アレンは観測者を見る。
「お前だ」
男がわずかに笑う。
「来れるなら来てみろ」
「やってやるよ」
⸻
戦闘開始。
影が一斉に襲いかかる。
「左五!」
「任せろ!」
セリスが斬る。
正確。
無駄がない。
「上!」
リリアが跳ぶ。
一撃。
二体同時撃破。
「拘束!」
エルミナが止める。
完全に流れができている。
だが。
「数が多い!」
リリアが叫ぶ。
「無限かこれ!」
「違う」
アレンが言う。
「供給されてる」
「なら!」
セリスが踏み込む。
「本体を叩く!」
だが。
距離が遠い。
影が壁になる。
「通さない、か」
「当然だ」
観測者が言う。
「我々は“観る者”」
「簡単には届かん」
「なら」
アレンは笑った。
「道作るだけだ」
視界を深くする。
影ではなく。
“線”を見る。
接続ライン。
無数。
絡み合っている。
「……見えた」
「全部」
アレンが手を上げる。
「リリア」
「右突破」
「了解!」
「セリス」
「正面抑え」
「任せろ」
「エルミナ」
「魔力集中、俺に」
「はい!」
三人が動く。
完璧に。
ズレがない。
アレンの意識が集中する。
接続ライン。
一つ。
二つ。
切る。
影が消える。
「っ!?」
観測者がわずかに反応する。
「やはりそこか」
「気付いたか」
アレンは笑う。
「遅い」
さらに切る。
供給が止まる。
影の動きが鈍る。
「今だ!」
リリアが突破。
セリスが押し込む。
エルミナが支援。
一直線。
観測者へ。
「……来たか」
男が手を上げる。
空間が歪む。
直接干渉。
圧が来る。
「っ……!」
セリスが止める。
リリアが押し込む。
だが。
まだ届かない。
「……なら」
アレンは一歩踏み出した。
「直接やる」
「アレン!」
「任せろ」
男の前に出る。
距離ゼロ。
「……触る気か」
「そうだ」
手を伸ばす。
触れる。
⸻
瞬間。
意識が引き込まれる。
⸻
見える。
接続の奥。
異界。
巨大な構造。
無数の観測者。
そして。
さらに奥。
“本体”。
「……」
理解する。
こいつら。
観ているだけじゃない。
選別している。
「……なるほどな」
アレンは呟いた。
「選んでるのか」
「この世界」
⸻
現実に戻る。
男がわずかに揺らぐ。
「……何を見た」
「色々だよ」
アレンは笑った。
「でも一つ分かった」
「お前ら」
「完璧じゃない」
「……」
男の沈黙。
その一瞬。
隙。
「今だ!」
三人が同時に動く。
リリアの斬撃。
セリスの一閃。
エルミナの拘束。
そして。
アレンの手が。
接続の核心に触れる。
「切断」
⸻
パリン。
⸻
音が響いた。
接続が切れる。
男の体が崩れる。
「……見事だ」
最後にそう言って。
消えた。
⸻
静寂。
影もすべて消える。
「……終わった」
リリアが息を吐く。
セリスも剣を下ろす。
「完全に断ったな」
エルミナがアレンを見る。
「大丈夫ですか?」
その瞬間。
力が抜ける。
「っ……」
倒れる。
だが。
また。
左右から。
「……」
「……」
「……お前らな」
「仕様です」
「仕様ですね」
完全一致。
アレンは苦笑した。
だが。
そのまま目を閉じる。
「……ちょっと休む」
「無理しすぎです」
「同意です」
だが。
その声は優しい。
⸻
そして。
戦いは終わった。
だが。
アレンは知っている。
あの奥にあったもの。
あの“本体”。
そして。
この世界の“選別”。
「……面白くなってきたな」
小さく呟く。
物語はさらに深く。
“真価”の核心へ。




