第27話 「第三の影」
王都外周。
旧遺跡群。
かつて栄えた文明の名残が、崩れたまま残る場所。
「……雰囲気悪いな」
アレンは周囲を見渡した。
石柱。
崩れた建造物。
そして――
妙に静かだ。
「魔物の気配がない」
セリスが言う。
「普通の遺跡ならあり得ない」
リリアが肩をすくめる。
「それだけでヤバさが分かりますね」
エルミナも頷く。
「ええ、明らかに異常です」
その時。
ぐいっ。
腕が引かれる。
「……」
「……」
「リリア」
「何です?」
「歩きづらい」
「慣れてください」
即答だった。
そして。
反対側からも、そっと触れる感触。
「……」
「……」
「エルミナもか」
「……安全のためです」
「絶対違う」
だが。
もうツッコむ気も薄れていた。
⸻
遺跡の奥へ進む。
空気が変わる。
冷たい。
そして。
重い。
「……来たな」
アレンが呟く。
鑑定。
⸻
【遺跡深部】
状態:侵食進行
反応:複数
性質:異界+人為
⸻
「……人為?」
エルミナが反応する。
「どういうことです?」
「誰かいる」
「ここに」
セリスが即座に構える。
「敵か」
「分からん」
「でも」
アレンは目を細めた。
「“向こう側”と繋がってる奴らだな」
その瞬間。
気配。
前方。
「止まれ」
全員が止まる。
静寂。
そして――
「……やはり来たか」
声。
人の声。
だが。
普通ではない。
空間の奥から、一人の男が現れた。
黒いローブ。
顔は見えない。
だがその周囲。
歪んでいる。
「……」
アレンの視界が反応する。
⸻
【不明存在(人型)】
状態:異界接続済
危険度:高
⸻
「人間……か?」
リリアが低く言う。
「いや」
アレンは首を振った。
「半分違う」
男が笑った。
「さすがだ」
「見えているか」
「全部じゃないけどな」
「十分だ」
男はゆっくり歩く。
近づく。
そして。
立ち止まる。
「私は“観測者”の一端」
「お前たちの言う“向こう側”に属する者だ」
「……」
空気が凍る。
エルミナが一歩前に出る。
「人間を侵食しているのですか?」
「侵食ではない」
「進化だ」
即答だった。
「この世界は不完全だ」
「だから我々が“補正”する」
「ふざけるな」
リリアが剣を構える。
「勝手にいじるな」
「理解できないか」
男は淡々と言う。
「ならば」
「排除するだけだ」
その瞬間。
空間が歪む。
影が現れる。
複数。
「来るぞ!」
アレンが叫ぶ。
⸻
戦闘開始。
影が一斉に襲いかかる。
「右三!」
「了解!」
リリアが斬る。
「後ろ!」
セリスが防ぐ。
「拘束!」
エルミナが止める。
完璧な連携。
だが。
「……強いな」
アレンが呟く。
影の質が違う。
今までより明らかに“濃い”。
「こいつら……進化してる」
「当然だ」
男が言う。
「こちらも学習している」
「厄介だな」
アレンは笑った。
そして。
鑑定を深める。
影ではなく。
男を見る。
⸻
【観測者端末】
本体:異界
接続:安定
役割:侵食管理
⸻
「……なるほど」
「本体じゃないな」
「端末か」
男がわずかに反応した。
「よく見抜いた」
「ならばどうする?」
「簡単だ」
アレンは一歩前に出た。
「切る」
「接続を」
「……」
男が初めて沈黙する。
そして。
わずかに笑った。
「面白い」
「やってみろ」
空気が変わる。
戦いが、次の段階へ。
リリアが笑う。
「いいですね」
エルミナも頷く。
「やりましょう」
セリスが剣を構える。
「指示を」
アレンは目を細めた。
見える。
接続。
構造。
流れ。
「……いける」
そして。
戦いはさらに深く。
“世界の真価”へと進む。




