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第22話 「戦場支配」

 異変は、唐突に始まった。


 ドクン――


 王都全体が震えた。


「……っ!?」


 リリアが顔を上げる。


 空気が歪む。


 次の瞬間。


 街のあちこちで、黒い裂け目が開いた。


「なっ……!?」


「同時発生!?」


 エルミナが息を呑む。


 城の外から悲鳴が聞こえる。


「魔物じゃない……!」


「またあの影か!」


 レイヴンが叫ぶ。


「全騎士、展開しろ!」


 だが。


 数が違う。


 一つや二つではない。


 王都全域。


 無数の異界裂け目。


 そこから現れる影。


「……完全に戦争だな」


 アレンは静かに言った。


「アレン!」


 リリアが振り向く。


「どうする!?」


 エルミナも視線を向ける。


「この数……普通じゃ対処できません!」


 セリスも剣を構えたまま言う。


「一箇所ずつでは間に合わん」


 沈黙。


 だが。


 アレンは笑った。


「誰が一箇所ずつやるって言った?」


「え?」


 次の瞬間。


 神器が光る。


 視界が広がる。


 王都全体が見える。


 上空から俯瞰するように。


 すべての裂け目。


 すべての敵。


 すべての流れ。


「……見える」


「全部」


 アレンは一歩前に出た。


「指示出す」


「全員動け」


 空気が変わる。


「まず東区」


「三体同時に出る」


「セリス、任せた」


「了解」


 即答。


 迷いなし。


「リリア」


「西区」


「高速型が二体」


「任せて!」


「エルミナ」


「中央支援」


「全体に魔力補助」


「了解です!」


 指示が飛ぶ。


 一切の迷いなし。


 そして。


 全員が動く。



 東区。


 セリスが突っ込む。


 指示通りの位置。


 影が現れる。


 だが。


「遅い」


 一閃。


 二体同時に切断。


 三体目。


 背後。


 だが。


「来るのは分かっている」


 振り向きざまに斬る。


 撃破。



 西区。


 リリアが跳ぶ。


「はあっ!」


 高速の影。


 だが。


 完全に軌道が読めている。


「そこ!」


 一撃。


 回避される。


 だが。


「次こっちでしょ!」


 追撃。


 完全に先読み。


 二体同時撃破。


「楽しい!」


 笑っている。



 中央。


 エルミナが魔法陣を展開する。


「――広域補助」


 光が広がる。


 騎士たちの動きが変わる。


「動きやすい……!」


「力が上がってる!」


 全体が強化される。



 そして。


 すべてを見ているのは――


 アレン。


「……完璧だな」


 すべてが見えている。


 動き。


 流れ。


 結果。


 戦場全体が、手の中にあるような感覚。


「これが……」


「戦場支配」


 その時。


 新たな裂け目。


 今までより大きい。


「……来たな」


 アレンが呟く。


 中心。


 王城前。


 空間が裂ける。


 現れたのは――


 巨大な存在。


 今までの影とは別格。


「……ボスか」


 セリスが戻ってくる。


 リリアも。


 エルミナも。


「これ……」


「今までと違う」


 アレンが鑑定する。



【異界上位体】

ランク:A+以上

特性:高耐久・高再生

核:多重構造



「……めんどくさい」


「どうする?」


 リリアが聞く。


 アレンは笑った。


「簡単」


「分解する」


「は?」


「構造全部見えてる」


「順番に壊す」


 その瞬間。


 四人の距離が近づく。


 自然に。


 完全に一つの陣形。


「いくぞ」


 アレンが言う。


 リリアが笑う。


「了解」


 エルミナが頷く。


「任せてください」


 セリスが剣を構える。


「指示を」


 アレンの視界がさらに深くなる。


 核の位置。


 層構造。


 再生の流れ。


 すべて見える。


「第一核、右肩内部」


「セリス」


「了解」


 一瞬で距離を詰める。


 斬る。


 破壊。


「次、左脚」


「リリア」


「任せて!」


 跳躍。


 破壊。


「再生止まるタイミング今!」


「エルミナ!」


「――拘束!」


 光の鎖。


 完全停止。


「最後、中心!」


「全員で行くぞ!」


 四人同時。


 一撃。


 完全破壊。



 静寂。



 巨大な存在が崩れた。


 そして。


 裂け目が閉じる。


 周囲の影も消えていく。


 王都が、静けさを取り戻す。


「……終わった」


 リリアが息を吐く。


 エルミナも静かに言う。


「完全に制圧しました」


 セリスがアレンを見る。


「……異常だ」


「何が」


「お前だ」


 短く言う。


「一人で戦場を制御していた」


 リリアがニヤッとする。


「当然です」


 エルミナも微笑む。


「ええ」


 そして。


 二人同時にアレンに寄る。


 自然に。


 左右から。


「……」


「……」


「またか」


「癖です」


「違う」


 だが。


 その距離は心地いい。


 アレンは空を見た。


 そして。


 呟く。


「……まだ来るな」


 視界に浮かぶ。



【異界接続】

状態:拡大

次段階:上位存在接近



「次はもっとでかい」


 リリアが笑う。


「いいですね」


 エルミナも頷く。


「受けて立ちます」


 セリスが剣を握る。


「ならば迎え撃つ」


 アレンは笑った。


「全部見抜いてやる」


 そして。


 戦いは次の段階へ。

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