第21話 「観測者」
空気が裂けた。
異界使者が動いた瞬間――
視界が歪む。
「……速い!」
リリアが即座に反応する。
だが。
消えた。
「上だ!」
アレンが叫ぶ。
次の瞬間。
天井から叩きつけるような一撃。
ドォン!!
床が砕ける。
セリスが前に出た。
「下がれ」
短い一言。
そして。
踏み込む。
速い。
リリアとは違う、洗練された動き。
無駄がない。
「はあっ!」
斬撃。
だが。
すり抜ける。
「実体が薄いか」
セリスが即座に判断する。
その瞬間。
異界使者の腕が伸びる。
形が変わる。
刃のように。
「っ!」
セリスが弾く。
火花。
だが押される。
「硬い……!」
エルミナが魔力を展開する。
「――光盾!」
防御展開。
直後。
衝撃。
ガンッ!!
「くっ……!」
だが耐える。
アレンは見ていた。
深く。
表面ではなく。
さらに奥。
鑑定。
全力。
⸻
【異界使者】
構造:不定形存在
核:存在
位置:変動
接続:外部(異界)
⸻
「……面倒だな」
「弱点固定じゃない」
「どういうことです?」
エルミナが聞く。
「コアが動いてる」
「だから当たらない」
「じゃあどうする!」
リリアが叫ぶ。
アレンは笑った。
「動き読めばいい」
「は?」
「見えてる」
その瞬間。
世界が変わった。
動きが遅くなる。
線が見える。
流れが見える。
未来が見える。
「……なるほど」
アレンは一歩踏み出した。
「次、右」
「任せろ!」
リリアが動く。
ピタリと合わせる。
的確。
セリスが一瞬だけ目を見開く。
「……読んでいるのか」
「全部じゃないけどな!」
次。
「左下」
エルミナが魔法を撃つ。
完璧な位置。
異界使者の動きが一瞬止まる。
「今だ!」
セリスが踏み込む。
一閃。
確かな手応え。
だが。
まだ足りない。
「核の位置!」
アレンが叫ぶ。
「胸――いや違う、今は背中!」
「変わるのか!」
「そういう敵!」
リリアが回り込む。
だが。
追いつかない。
その瞬間。
「踏み台にしろ!」
アレンがしゃがむ。
「は!?」
「いいから来い!」
リリアが躊躇なく乗る。
重心が乗る。
だが。
軽い。
「いける!」
跳躍。
加速。
空中で回転。
「はあああ!!」
一撃。
だが。
ズレる。
「足りない!」
その瞬間。
エルミナが魔力を流す。
「増幅!」
光が重なる。
軌道修正。
そして。
セリスが横から斬る。
同時攻撃。
「――今だ!」
アレンが叫ぶ。
核が見える。
一瞬だけ固定。
その一点。
三方向からの攻撃。
直撃。
⸻
パリン。
⸻
空間が静止した。
異界使者の動きが止まる。
そして。
崩れた。
黒が消える。
歪みが消える。
静寂。
⸻
「……終わったか」
セリスが剣を下ろす。
リリアが息を吐く。
「強かった……!」
エルミナも肩で息をする。
「今までで一番です」
アレンは軽く伸びをした。
「まぁな」
その瞬間。
ぐらっ。
体が揺れる。
「おい」
セリスが支える。
だが。
その前に。
左右から。
「大丈夫ですか!?」
「無理しすぎです!」
リリアとエルミナ。
完全に挟まれる形。
柔らかい感触。
距離ゼロ。
「……」
「……」
「……近い」
「仕方ないです」
「仕方ないですね」
同時に言う。
息ぴったり。
アレンは苦笑した。
セリスがそれを見て、少しだけ目を細めた。
「……なるほどな」
「何が?」
「お前」
アレンを見る。
「ただの鑑定士じゃない」
「知ってた」
「戦闘を“支配”している」
静かな評価。
だが重い。
「指示がすべて正確だった」
「見えてるからな」
「異常だ」
「よく言われる」
セリスは剣を納めた。
そして。
「認める」
「え?」
「お前は必要だ」
短い言葉。
だが。
それは完全な評価だった。
リリアがニヤッとする。
「当然ですね」
エルミナも微笑む。
「ええ」
アレンはため息をついた。
「なんか大事になってきたな」
その時。
視界に新しい情報が浮かぶ。
⸻
【異界接続】
状態:拡大傾向
次段階:大規模発生予測
⸻
「……」
アレンは空を見た。
そして。
小さく笑った。
「まだ来るな」
「え?」
「終わってない」
リリアが楽しそうに笑う。
「いいですね」
「盛り上がってきました」
エルミナも頷く。
「ここからが本番です」
セリスが言った。
「ならば」
「次は私が前に出る」
アレンは頷いた。
「頼む」
そして。
四人は並ぶ。
新しいチーム。
新しい戦い。
そして。
さらに大きな“異常”へ。




