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第23話 「余波」

 王都は、静けさを取り戻していた。


 だがそれは――


 嵐の後の静寂だった。


「被害は軽微……とは言えませんね」


 エルミナが街を見渡す。


 石畳の一部が砕けている。


 建物も損傷している箇所がある。


 だが。


 壊滅ではない。


「この規模でこれなら上出来だ」


 セリスが言う。


「通常なら半壊はしていた」


 リリアが肩を回す。


「全部アレンのおかげですね」


「いや全員の連携だろ」


「違います」


「あなたがいなければ成立してません」


 即答だった。


 エルミナも頷く。


「事実です」


 セリスも静かに言う。


「否定できんな」


 アレンはため息をついた。


「持ち上げすぎだ」


 その時。


「おおー!」


 声が上がった。


 振り向くと、騎士たちが集まってくる。


「助かりました!」


「まさかあの数を……!」


「指示が完璧でした!」


 次々と声が飛ぶ。


 アレンは少し困った顔をした。


「……慣れないなこれ」


「慣れてください」


 リリアが笑う。


 そして。


 自然に腕を絡めてくる。


「……」


「……」


「またか」


「当然です」


 完全に定着している。


 一方で。


 エルミナも少しだけ距離を詰める。


 控えめだが確実に近い。


「……」


「……」


「増えるな」


「自然な流れです」


「違う」


 だが。


 嫌ではない。


 むしろ。


 この距離が“普通”になりつつあった。



 王城。


 再び玉座の間。


 今度は空気が違う。


 ざわめき。


 期待。


 そして――


 評価。


「面を上げよ」


 王の声。


 アレンは顔を上げる。


「報告はすべて受けた」


「王都全域の侵食を制圧」


「見事である」


 その一言で。


 空気が変わる。


 今度は完全な肯定。


「よって」


 王が言う。


「アレンを正式に王都特別顧問とする」


 ざわっ。


 騎士たちがざわめく。


「正式に……!」


「国家直属か!」


 アレンは頭を掻いた。


「……なんかすごいことになってきたな」


「なってます」


 リリアが即答する。


 エルミナも微笑む。


「当然の結果です」


 王が続ける。


「だが」


「問題は終わっていない」


 空気が引き締まる。


「今回の異常」


「原因は未だ不明」


「そして」


 一拍。


「さらなる上位存在の接近が確認されている」


 沈黙。


 アレンは目を細めた。


「やっぱり来るか」


「知っていたのか?」


「なんとなく」


 軽く答える。


 だがその目は真剣だった。


 王が頷く。


「ならば話は早い」


「次の任務を与える」


「……だろうな」


「王都外周」


「異界反応が急増している」


「原因を特定し、排除せよ」


 シンプル。


 だが重い。


 アレンは少しだけ笑った。


「了解」


「やるよ」


 リリアが横で笑う。


「決まりですね」


 エルミナも頷く。


「同行します」


 セリスが言った。


「当然、私も行く」


 完全にチームが出来上がっていた。



 王城を出る。


 廊下。


 人目が少なくなる。


 その瞬間。


 リリアがぐいっと引いた。


「ちょっと」


「何」


「褒められすぎです」


「知らん」


「調子乗ってません?」


「乗ってない」


 エルミナが少しだけ笑う。


「少しだけ、嬉しそうでしたよ?」


「バレたか」


「バレてます」


 その時。


 リリアが少しだけ顔を近づけた。


「でも」


「何」


「私の方が先に評価してましたけどね」


「張り合うな」


「張り合ってません」


 完全に張り合っている。


 エルミナも一歩近づく。


「では私は」


「これから評価していきます」


「何それ」


 距離が近い。


 また挟まれる。


「……」


「……」


「やめろって」


「無理です」


「無理ですね」


 息ぴったり。


 アレンは苦笑した。


 だが。


 悪くない。


 この関係。


 この空気。


 そして。


 この戦い。



 その時。


 視界が歪んだ。


 アレンの鑑定が勝手に反応する。



【異界上位存在】

距離:接近中

到達予測:近い



「……」


「どうしました?」


 エルミナが気付く。


 アレンは静かに言った。


「来るぞ」


「え?」


「次」


「今までのとはレベルが違う」


 リリアがニヤッと笑う。


「いいですね」


「最高に面白くなってきました」


 セリスも言う。


「ならば」


「全力で迎え撃つ」


 アレンは空を見た。


 そして。


 静かに笑った。


「全部見抜く」


 その先にあるのは――


 さらに上の“敵”。


 そして。


 この世界の“真実”。


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