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第19話 「接続」

 黒い核が脈打っていた。


 ドクン。


 ドクン。


 心臓のように。


 だがそれは“生”ではない。


 異質な何か。


「……触るぞ」


 アレンが言った。


「やっぱりそれなんですね」


 リリアが呆れたように言う。


「他に方法あるか?」


「ないですね」


「じゃあ行く」


 エルミナが静かに言った。


「私たちも支えます」


「頼む」


 アレンは一歩前に出た。


 神器が淡く光る。


 そして。


 手を伸ばす。


 触れる。



 瞬間。


 世界が裏返った。



「――――」


 音が消える。


 光が消える。


 色が消える。


 残るのは――


 情報。


 膨大な情報。


 構造。


 流れ。


 繋がり。


 そして。


 “向こう側”。


「……これか」


 アレンは呟いた。


 見えている。


 核の本体。


 この世界ではない場所。


 歪んだ空間。


 そして。


 何かがいる。


 形を持たない。


 だが確実に“意思”がある。


「……」


 視線が合った。


 その瞬間。


 ぞわりとした感覚。


 理解される。


 見られている。


「……」


 アレンは笑った。


「面白いな」



 現実に戻る。


 だが。


 核が暴れている。


「アレン!」


 リリアの声。


 体が傾く。


 崩れそうになる。


 だが。


 支えられた。


 左右から。


「しっかりしてください!」


「まだ終わってませんよ!」


 エルミナとリリア。


 完全に密着。


 体温が伝わる。


 呼吸が近い。


「……助かる」


「当たり前です」


 リリアが言う。


「パートナーですから」


 エルミナも静かに頷く。


「一人ではありません」


 その言葉で。


 意識が戻る。


「……いける」


 アレンは再び核を見る。


 今度は違う。


 表面ではない。


 構造。


 その接続点。



【接続ライン】

位置:核中心

機能:異界リンク

状態:不安定



「これだ」


「何が?」


「繋がってる部分」


「ここ制御すれば止まる」


「壊すんじゃないんですか?」


「壊したら逆流する」


「もっとやばい」


「……なるほど」


 エルミナが理解する。


「調整するんですね」


「そう」


「やれるか?」


 リリアが聞く。


 アレンは笑った。


「やるしかない」



 手を核に押し当てる。


 深く潜る。


 接続を見る。


 絡み合うライン。


 異界とのリンク。


「……多いな」


「でも」


「全部見えてる」


 一本ずつ。


 流れを変える。


 魔力を流す。


 干渉。


 書き換え。


「っ……!」


 負荷がかかる。


 頭が割れそうだ。


「アレン!」


 リリアが支える。


 さらに密着。


 背中に柔らかさ。


「倒れるな」


「分かってる」


 エルミナも手を重ねる。


「魔力、流します」


「助かる」


 三人の魔力が重なる。


 共鳴。


 流れが安定する。


「……いける」


 一本。


 切断。


 ドクン。


 核が震える。


 二本。


 三本。


 徐々に弱まる。


 そして。


 最後の一本。


「これで……終わりだ」


 切断。



 静寂。



 核の動きが止まった。


 黒が薄れる。


 空間の歪みが消えていく。


「……」


「……」


「……止まった?」


 リリアが呟く。


 アレンはゆっくり手を離した。


「止めた」


 その瞬間。


 力が抜けた。


「っ……」


 倒れる。


 だが。


 受け止められた。


 柔らかい感触。


「アレン!」


「大丈夫ですか!?」


 リリアとエルミナ。


 完全に抱き支えられる形。


 距離ゼロ。


 体温が近い。


「……ちょっと無理した」


「ちょっとじゃないです」


 リリアが怒る。


「倒れたらどうするんですか」


「ごめん」


「謝ってもダメです」


 だが。


 その声は少し震えていた。


 エルミナも静かに言う。


「……無事でよかった」


 その言葉は、本心だった。


 アレンは苦笑する。


「大丈夫だって」


「ほら」


 軽く動いてみせる。


「……」


 二人が同時にため息をついた。


「無茶しすぎです」


「同感です」


 息ぴったり。


 アレンは笑った。


「いいコンビだな」


「誰のせいだと思ってるんですか」


「俺か」


「あなたです」



 周囲を見る。


 空間は正常に戻っていた。


 歪みは消えている。


「……一応解決か」


「一応、ですね」


 リリアが言う。


「完全じゃないです」


 エルミナも頷く。


「根本は残っています」


 アレンは空を見上げた。


 さっき見た“向こう側”。


 あれは消えていない。


「……ああ」


「これ」


「まだ続く」


 その時。


 視界に新しい情報が浮かんだ。



【異界接続】

状態:残存

次段階:発生予測あり



「……次来るな」


「え?」


「終わってない」


 リリアがニヤッと笑う。


「いいですね」


「完全に事件です」


 エルミナも静かに言う。


「……逃げられませんね」


 アレンは苦笑した。


「逃げる気ないけどな」


 そして。


 三人は並ぶ。


 距離は近いまま。


 だが。


 もう違う。


 ただの偶然の密着じゃない。


 信頼。


 連携。


 そして――


 少しだけ特別な関係。


「行くか」


 アレンが言う。


 二人が頷く。


 物語はさらに深く。


 そして大きく。


 動き出す。



――第19話 完


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