表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/117

第16話 「王都への道」

 出発は、翌朝だった。


 街の門の前。


 王都行きの馬車が停まっている。


 装飾は簡素だが、作りは明らかに上質だ。


「準備はよろしいですか」


 レイヴンが確認する。


「まぁなんとか」


 アレンは軽く肩を回した。


 その瞬間。


 ぐいっ。


 腕が引かれる。


「……」


「……」


 リリアだった。


「いつものですね」


「いつものって何」


「定位置です」


 完全に定着している。


 しかも今日は密着度が高い。


「近いって」


「長旅なので」


「理由になってない」


 一方で。


「では、私はこちらで」


 エルミナが反対側に回る。


 そして自然に距離を詰めてくる。


「……」


「……」


「やめろ挟むな」


「安心感があります」


「ない」


「あります」


 結果。


 出発前から両側固定。


 逃げ場なし。


 レイヴンが無言で見ていた。


「……仲が良いのですね」


「誤解です」


「違います」


「違います」


 なぜか二人同時に否定。


 だが離れない。



 馬車に乗り込む。


 中は思ったより広い。


 だが。


「……」


「……」


「……」


 なぜかアレンの両隣に二人が座る。


「他にも席あるよな?」


「ここがいいです」


「同じくです」


 逃げ道なし。


 馬車が動き出す。


 揺れる。


 そして。


 自然と距離がさらに近くなる。


 肩が触れる。


 腕が当たる。


 柔らかい感触。


「……」


 アレンは天井を見た。


(これは修行だな)


 そう結論づけた。



 しばらくして。


 街を離れ、森を抜ける。


 静かな道。


 だが。


「……」


 アレンの視界が反応した。



【周辺】

状態:異常魔力反応

危険度:中

位置:前方



「止めて」


 アレンが言った。


 馬車が止まる。


「どうしました」


 レイヴンがすぐに反応。


「前に何かいる」


「敵ですか?」


「まだ分からない」


 だが。


 嫌な感じがする。


 アレンは馬車を降りた。


 二人も続く。


 そして。


 数歩進んだ先。


 空気が歪んだ。


「……何これ」


 リリアが眉をひそめる。


「結界……?」


 エルミナが呟く。


 だが。


 普通じゃない。


 アレンは鑑定を発動する。



【歪曲領域】

性質:不明

発生源:外部干渉

影響:認識阻害・空間歪曲



「……また新しいの来たな」


「何ですかそれ」


「普通じゃないやつ」


 その瞬間。


 空間が裂けた。


 黒い影が現れる。


 人型。


 だが形が安定していない。


「……魔物じゃない」


 リリアが剣を構える。


「でも敵ですね」


 影が動いた。


 速い。


「来る!」


 アレンが叫ぶ。


 だが。


 動きが読める。


 いや。


 見えている。


「右から来る!」


 リリアが回避。


 反撃。


 だが。


 すり抜ける。


「効かない!?」


「実体薄い!」


 エルミナが詠唱。


「――光」


 光が影を照らす。


 その瞬間。


 形が固定された。


「今!」


 リリアが斬る。


 確かな手応え。


 影が揺らぐ。


 だがまだ消えない。


「弱点どこだ……」


 アレンの視界が深く潜る。


 表面ではなく。


 本質を見る。


 そして。


 見つけた。



【核:胸部中心】

状態:不安定



「そこ!」


「胸!」


「了解!」


 リリアが踏み込む。


 全力の一撃。


 エルミナが同時に魔力を重ねる。


 増幅。


 そして。


 パリン!!


 影が崩れた。


 消滅。


 静寂。



「……何だったんだ今の」


 リリアが呟く。


「分からない」


 アレンは正直に言った。


「でも」


 空間を見る。


 まだ歪んでいる。


「これ、増えるぞ」


「え……」


 エルミナの表情が変わる。


「つまり」


「王都で起きてる異常って」


「これ系かもな」


 レイヴンが静かに言った。


「……報告通りか」


「やっぱ知ってたのか」


「断片的には」


 だが。


 完全ではない。


 だから呼ばれた。


「なるほどな」


 アレンは笑った。


「面白くなってきた」


 リリアがニヤッとする。


「完全に事件ですね」


 エルミナも頷く。


「ええ」


 その時。


 リリアが自然に腕を絡めてきた。


「ちょっと」


「安心感です」


「さっきも聞いた」


 そして。


 エルミナも少し迷ってから。


 そっと反対側に触れる。


「……こちらも」


「なんで増える」


 だが。


 嫌ではない。


 むしろ。


 妙に落ち着く。


 アレンは空を見た。


 そして。


 静かに呟いた。


「王都か」


 その先にあるのは――


 未知の異常。


 そして。


 さらに大きな“価値”。



――第16話 完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ