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オートセーブは深夜0時に+  作者: 夕凪の鐘
Episode124 無関係な未来
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634話 逆転までの道

『二人とも! 一位とは四点差だ!』

『四点差!?』


 佐倉(さくら)(ミチル)から通信で知った現状。圧倒的人数から首位独走と予想された二千代との点差は、僅か四点。


『そういえばあと二人だったはず』

『こっちは三人残ってる……』


 一人脱落すれば残る選手全員に生存点を一点加算される。だから他校生が五人脱落すれば逆転できる。脱落させることを自分たちで達成すれば撃破点二点がその人に入るから、逆転までの道が短縮される。


『一旦合流する! さっきの竜巻の所で』

『そこにいるわ! 二人とも』


 ミチルは他校生と牽制し合っていたが、今が逆転のチャンスと判断すると味方との合流を優先した。居場所は聞かないと分からない。じっくり話す余裕はないから目印を伝えそこを目指すよう決めると、到着していると返事があって好都合だった。


『よし、俺も向かう』


 ミチルは通信を切った。竜巻が誰の“ノーツ”によるものかは知らないが、収まった今なら大丈夫だと判断し、迷わず走る。



「二人と合流するみたいね」

「一位狙いに来たな」


 ミチルを追う東戸(ひがしと)寿々絵(スズエ)はミチルの行く先に彼のチームメイトがいるのを察知し小村井(こむらい)珠陽(スバル)に伝えた。スバルは点差と残り人数を踏まえて、ミチルたちの狙いを見抜いた。


 対策を立てる前に、スズエは一度振り向いて銃を撃つ。狙いは追ってくる美南(みなみ)哀月(アイリ)の足。アイリは踏み込んだ足からクモの巣を広げて身動きを封じてくる。彼女が止まった瞬間にスズエはその足を狙ってボールを飛ばす。


 当てれば脱落、避けられたら足がズレてクモの巣は広がらない。


 対策されてもなおアイリは追ってきているが、スバルたちとしては好都合。このまま引っ張って、ミチル撃破に利用する。


 ココアたちの場には、四人の相手がいる。ミチルとその追っ手三人を交えた、五校十人の乱戦が始まった。



 市川(いちかわ)一夏(イチカ)はミチルを狙う。ボールを撃ち出す銃の銃口に、夏の風物詩を創造する“ノーツ”でスイカを差し込み、引き金を引くとボールの代わりにスイカの種が撃ち出された。


 ミチルは盾を構えるも、拡散されて放たれる種を防ぐには面積が足りず痛い。足が止まった隙にスバルたちが背後に迫ると、ヒビキは過去と未来の自分の分身を出して彼を庇った。


 しかし正面からイチカも迫る。スイカを引き抜き、銃を構える。すると武蔵浦(むさしうら)春桜(サクラ)が割り込んで、ミチルの身代わりになり脱落した。


 スバルは盾と銃身で分身の銃撃を凌ぎつつ、スズエに通り道を作った。そして彼女はイチカより早くミチルにボールを当てた。一気に二人が脱落。ココアたちの作戦は、味方一人の脱落で予定を崩された。



 イチカはスズエをターゲットにするも、浜金谷(はまかなや)飛影(ヒエイ)にボールを当てられ脱落した。ヒエイは味方のサクラの敵討ちを成し遂げ、次の狙いを千葉(ちば)春菜(ハルナ)に定めた。


「五点差。でももっと取ろう」


 スバルは周りにも聞こえる声量でスズエに伝えた。点数計算している余裕がなかったココアたちは、その会話を聞いて、さっきより差が広がったことに焦った。


 追い抜くには、早く相手を一人減らさなくてはならない。スバルとスズエ、どちらをここで撃破する。


 そんな思考に至ることは二人も読んでいる。だから今はアイリにやられないように、足に触れたクモの巣に、屈んで盾を当てて巣を消滅させた。足が貼りついて動けなくなっても腕や膝は動かせるから、対策には困らないのだ。


 そしてスズエはヒビキを、スバルはココアをマークした。アイリ、ハルナ、ヒエイの三人は離れて様子を窺う。


「じゃあ一週間から」


 スズエはそう言ってヒビキを見据えた。今の一言が自分を指していると捉えた彼女は、その意図が気になる。


 ボールが迫り、盾で防ぐも頭の中は一週間の意味を考えてしまう。スズエの顔を見て、彼女の“ノーツ”が人の頭の上にその人の失恋までの日数が見えるものだということを思い出した。


 するとヒビキは気づいた。その日数で相手を区別しているのだと。と同時に、そんなはずはないと内心拒絶する。


 だからヒビキは一週間後の未来の自分を出し、真相を確かめようとした。


「私フラれたの!?」

「何のこと?」


 未来の自分に聞いても心当たりがないと言う。嘘だと受け止め安堵したのも束の間。競技と無関係な話をしている隙に、スズエにボールを当てられた。


「悪く思わないで」


 これがスズエにとって、自分の“ノーツ”を活かした戦い方。未来を突きつけたり嘘をついて混乱させたり、卑怯な手口になりがちだ。


 なお肝心のヒビキには、脱落して退場門へ転送されたせいで聞こえていない。


「……そんな」


 ヒビキの脱落にココアはショックを受ける。一位が遠ざかったこと以上に、彼女との連携が碌に成果を上げられなかったことが悔しかった。


 失敗の原因は連携ミスではない。斬っても血が出ない物体を相手にしたときに無力という欠点に気づいていなかったことだ。だからハルナとイチカを相手に機能しなかった。


 そのせいで、ここから一人で粘らなくてはならない。生き延びたところで、一位のチームには生存点だけで点差を広げられてしまう。


「ヒビキさん脱落……菜の花原はあと一人ですね」

「十二点差……残り八人だし、届きそう」


 追っていた相手を見失った汐留(しおどめ)零華(レイカ)月島(つきしま)希望(ノゾミ)と合流していた。その相手は別の相手に倒されており、周りに相手がいないのでじっとして次の作戦を考えていた。

 周りに相手がいない理由は、残り全員が集まって勝負しているからだ。


 貸与された端末で脱落状況を確認すると、二位になるのは夢ではないと捉えた。


「でしたら攻めにいきましょう。生存点は最大十二点ですから」

「そうだね。行こうっ」


 とはいえ達成するには撃破点が必要。隠れているだけでは、きっと逃げ切りを許してしまう。


 一度竜巻が見えて以降は静かになったステージだが、その場所には他の選手がいると直感で判断し、二人は乱入すべく行動を開始した。



 アイリが踏み込んでクモの巣を広げる。輪になって攻防戦をしている今なら距離が特段離れている相手がいない分、命中しやすい。


 しかしスズエにタイミングを読まれ、屈んで地面につけた盾でクモの巣を消された。


 盾という競技のルールで配布されたアイテムのせいで何度も撃破のチャンスを潰されて、アイリは機嫌を損ねる。素の実力ならとっくに勝てているのにと内心で愚痴を溢す。


 そのときアイリは閃いた。そして盾を投げ捨てた。


「何を……」

「盾ナシで勝負しようって言いたいんだろ」


 スバルはアイリの意図にいち早く気づいた。盾は全員に配られているから使っている。一人が手離せば、その時点でフェアでなくなる。


 対等な条件で勝負するには、自分たちも盾を手離さざるを得ない。そう誘導させる狙いだと見抜いたのだ。


「分かったわよ」


 自分たちだけ有利な道具を持って勝っても印象が悪い。だからスズエは盾を外し、スバルも続いた。


 ハルナは真似しない。だがフェアに挑むため、盾を捨てた人を狙わないよう決めた。ターゲットはヒエイとココアに限定した。


 ハルナはココアに接近し、花粉を撒く。くしゃみを誘発させ、守りが手薄になった隙に引き金を引く。だが避けられた。


 目を開けられないココアは適当な方向へ跳び、偶然避けられた。ハルナは追い討ちをかけに詰め寄るが、ココアが指を噛もうとしている動きが見えて足を止めた。それは出血させて血の刀を作る合図。


 ココアは指を噛んだ。狙いは皮膚を破くことだったが、花粉で目を開けず感覚が掴めないので指全体を噛んだ。そのせいで血が出ず不発に終わる。


「痛っ!」


 想定外の痛みにココアは叫ぶ。そして焦る。今自分がボールを食らえばチームの得点が止まってしまうから。

 だからせめてやれることをやろうと、銃を乱射した。無差別にボールを放ち、ハルナとヒエイの追撃を止める。



 その頃、アイリは二千代の二人とノーガードの勝負をしていた。クモの巣が届く前にスバルは縁石に飛び乗り、石を伝ってアイリに迫る。反対側からスズエも動いていた。


 挟み撃ちになると、アイリは二人が同時に視界に入る方向へ移動する。同時に撃たれるボールは、防げる物が銃身しかないから、どちらも避けるように跳んだ。


 スバルは縁石から飛び降りてクモの巣に着地する。足が貼りつき“ノーツ”も使えなくなるのに何をする気かとアイリは戸惑う。すると彼はヒエイに向けてボールを飛ばす。するとヒエイは気づき、彼の方へ迫った。


 ヒエイがクモの巣を踏むも、彼の足は止まらない。“ノーツ”を無効化する“ノーツ”を持っているからだ。


 迫るヒエイを、スバルはジッと待つ。ヒエイが銃を手に取り、構えた瞬間、身を捻る。ボールを避けつつ倒れ、ヒエイの足を掴みにいく。しかし空振り、彼の体が消滅する。見えていたのは幻影だったと気づいたが、すでに彼に背後を取られている。


「不覚だな……」


 ヒエイに撃たれ、スバルは脱落。スズエの“ノーツ”も効かないから正確な位置を掴めなかった。けれども次は負けない。彼の幻影によるズレは把握した。次回の勝負までにアップデートさせ、今度は負けないと誓った。


 撃破点がヒエイに入ると、ハルナも負けじと取りにいく。狙いはココア。彼女が最も狙い目だ。だが構えた銃が狙撃され、手元が狂いボールが逸れる。


 振り返るとレイカが立っていた。



「月島!? 待って奴ら脱落ゼロ!?」


 レイカの隣に立つ、急遽参戦したノゾミの存在を、ヒエイはすっかり忘れていた。隣にはレイカがいることから、東核備田は二人残っている。元々二人チームということを鑑みると、終盤に至るまで一人も撃破されていないということだ。


 それが意味することは、レイカたちのチームに点数が負けているということ。すなわちヒエイが三人以内に入るには、彼女たちを追い抜かないといけない。人数が減って増やせる点が限られているなかで突きつけられた現実に、彼は唖然とする。

 ハルナと争っている場合ではなかったのだ。そして彼女も同じことを思っていた。


「秘策、見られなくて残念です」


 レイカはココアに言い放った。彼女を仕留めるチャンスがあったが、見逃してほしいと頼まれて見送った。そうしてほしい理由はヒビキとの連携を考えてきたからだと言っていたが、彼女はもう脱落している。


「けどまだ一位、狙えますよね」


 レイカがハルナの妨害をしてココアを救った。それは彼女のチームが二千代を追い抜ける可能性が残っているからであり、それを成し遂げてほしいと願っている。


 二十二人中十五人が脱落した。高校ごとの順位、暫定トップ3は以下の通りだ。

 一位 二千代51点

 二位 菜の花原43点

 三位 東核備田32点

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