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オートセーブは深夜0時に+  作者: 夕凪の鐘
Episode124 無関係な未来
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633話 音がうるさくて

『またアツカ!?』

『さすがに放っておけないな』


 Aランク対抗戦。七人という他校を圧倒する人数を擁する二千代高校は、早くも残り二人に追い詰められた。撃破された五人のうち二人は、福俵(ふくたわら)天使(アツカ)にやられた。


 一人脱落する度にチームの生存者全員に一点入る。アツカのチームは彼女一人なので、上位争いに食い込むことはない。だから優先して倒す相手とは見做していなかったが、そのせいで彼女に味方を二人も倒された。


 残されたメンバー、東戸(ひがしと)寿々絵(スズエ)小村井(こむらい)珠陽(スバル)は、そろそろ狩ることにした。


『さてどうしよう』


 今は離れていて通信でやりとりをしている。アツカ含め相手の居場所はスズエの“ノーツ”で割れている。だからスバルは彼女に発案を投げる。


『航漁が二人揃ってる。見つけたら環状交差点(ラウンドアバウト)に引っ張って』

『了解』


 スバルはステージの現在地を確認し、成東(なるとう)(マツリ)が飛ぶ姿を捉えた。近くを大森(おおもり)(イコイ)が走っていると読み、移動した。


「スバル発見」

「俺に任せろ」


 悪魔の翼で飛ぶマツリがスバルを見つけると、イコイが撃破に向かう。最小限の力を出すと全力を出せる“ノーツ”で、軽く地面を蹴るのを繰り返し急加速した。



 そして銃を構える。撃破するにはボールを撃ち出して当てなくてはならない。盾を持っているから、防がれないように。


「十七の二乗」


 スバルはイコイに聞こえる声量で掛け算を唱える。答えが間に合わない相手に雷撃を浴びせる“ノーツ”による妨害だが、それは競技で配布された盾で防げる。イコイは無視して盾を傘代わりに雷撃から身を守った。


 しかしスバルは振り向かずに走り続ける。防がれるのは想定内だから、イコイとマツリを誘導する。


 一方でスズエは佐倉(さくら)(ミチル)と鉢合わせるように移動していた。目論み通りミチルに見つかると、掴まらないよう走り出す。“ノーツ”の相性が悪いから、一対一の勝負はしない。予定通り、スバルとの合流を図った。



 賑やかな空気を嗅ぎつけたアツカが向かい、三方向から合流する六人。アツカはさっきスバルに攻撃を避けられたことを思い出し、リベンジを狙った。天使の羽ばたきを止めて急降下するアツカを、スバルは避けつつ計算式を呟く。


 無視して旋回するアツカの頭上に雷撃が迫る。ゴロゴロ音を聞いて見上げると、当たる前に天使の羽で身を包み、防いだ。


 逆に雷を浴びたのを好機と捉えたアツカは、羽をぶつけにスバルに迫る。すると彼は盾で羽を止めると、片翼が消滅した。


 羽が片方消えてバランスが崩れたアツカは地に落ちる。すかさずスバルがボールを撃ち出し、撃破した。


 ミチルも負けじと撃破点を取りにいく。狙いはスズエ。彼女が浮いた駒だ。だが彼女は盾で凌ぐ。野生化して動きが機敏で過激になった彼の動きに適応し、何度も弾く。


 その動きを崩すべくマツリがスズエに迫る。盾をミチルに向けている間に噛みつきにかかると、そちらに一切視線を向けることなく、盾を押して突き返したミチルをマツリにぶつけた。


 邪魔をされたマツリはミチルに噛みつき、彼を僕にした。


 イコイは銃のダイヤルで弾速を少しずつ落としながらスズエを狙う。そして最低速度になったとき、彼の“ノーツ”によって最高速度で放たれた。

 意表を突かれたスズエは回避ではなく盾を動かした。ギリギリ間に合ったが、マツリとミチルに挟み撃ちにされる。


 スズエはミチルに噛みつかれた。マツリに噛まれ悪魔にされた彼に噛まれることによって伝染し、スズエも彼女の僕にされる。

 好きに動かせるから仕留めるチャンスだが、マツリはこの機会を仲間割れに利用する。スズエを操り、スバルと対峙させた。


 スズエの“ノーツ”は人の頭上に失恋までの日数を見るもので、まったく攻撃的ではない。だから悪魔の力を授けられてパワーアップした彼女は、普段の何倍も強くなっている。

 いくら幼なじみでも対応できまい。そう狙ったマツリだったが、スバルは冷静に回避、防御を合わせる。


 彼にとってその強さは計算のうち。速度は見切り、力は盾のおかげで力まずに済む。


 ならば囲んで狙う。マツリは二人の僕と味方のイコイでスバルを包囲し、噛みつかせようとした。


「……見づらいなあ」


 だが却ってターゲットの姿が僕に隠され、操りにくくなる。マツリは俯瞰するべく羽ばたいて上昇すると、直後飛んできたボールが当たった。


「計算通り」


 姿を隠したのも、マツリが移動するのもスバルの読み通り。そして主が撃破されると、僕の二人は元に戻った。


 しかし元に戻ってもミチルは相手。意識が戻ったときに相手が目の前にいれば好機と踏んで狙い撃つ。だがボールはスズエの盾に弾かれた。



 ここには四人。味方を失ったイコイは撤退した。彼以外の三人は一位争いで潰し合う。そこには食い込めないなら、少しでも生存点を稼ぎ順位を上げる作戦にシフトした。


 そして三人は追ってこない。


 イコイが走った先に美南(みなみ)哀月(アイリ)がいた。


「向こうに二千代がいるぞ」


 イコイはアイリが元同級生の二千代高校の面々にライバル意識を向けていることを知っている。だからさっきの勝負の場へ彼女を誘導させようとした。


「手を貸してよ」

「俺は生き延びないと」


 しかし一人では難しいから、イコイも協力してほしいと頼む。だが彼は断った。巻き込まれて撃破されるリスクを嫌ったのだ。


「ちょっと待っててね」

「おいっ!?」


 アイリは“ノーツ”で足踏みし、足からクモの巣を広げる。逃げようとするイコイの身動きを封じるためだ。彼女は有無を言わせず参加させる気だ。


 だがイコイは間一髪、跳んで避ける。しかし時間稼ぎに過ぎない。着地先にはもうクモの巣が広がっていて、結局捕まってしまった。


 それでも手は動かせる。イコイは銃をアイリに向けて撃った。しかし盾で防がれてしまい、移動ができないから射撃位置を変えようがない。


「撃ったよね今」


 仮に相手を引っ張ってきてイコイと合流させたところで、彼は逃げを優先して自分を狙ってくる。そう解釈したアイリはここで仕留めた。


 撃破したせいで二千代に生存点が追加されたのは不都合だが仕方がない。アイリは一人で乗り込んだ。



 一方で汐留(しおどめ)零華(レイカ)に追われている本八幡(もとやわた)龍期(タツキ)は、茂みに身を隠してやり過ごした。


 しかし市川(いちかわ)一夏(イチカ)にはバレていた。追っかけの時点でその光景を見られていたのだ。


「羨ましいぜ。汐留に追っかけられてよぉ」

「ゲッ、イチカ……」


 レイカはイチカの一日遅れでAランクに昇格した。それは単なる偶然だが、イチカは彼女に特別な感情を抱いており、だからタツキを妬んだ。


「やられる前に教えてくれよ。どうすれば追っかけてもらえるんだ?」

「知らねえよそんなこと」


 タツキは望んで追われていたわけではない。たまたま出会したらそうなっただけだ。競技のルール上、他校生が出会えば勝負が始まるわけで、何も特別な話ではない。


「俺を追えば? 汐留に見えるように」

「……いいじゃん、それ」


 追われる方法を教えることはできないから、二人で追う立場になればイチカは満足するだろう。そう考えたタツキは、彼に自分を追わせることを提案する。彼は乗った。


 タツキは地中から数体の龍を出して、畝る背中を乗り継ぎ走る。イチカは波を生み出し、波に乗って追いかけた。



 タツキが操る龍に、鯉のぼりの群れが正面衝突する。衝撃で転落した彼に、千葉(ちば)春菜(ハルナ)がボールを当てた。


「何すんだ!」

「えっ、ごめん。横取りして……」


 とはいえチームに撃破点が入るのだからいいだろう、とハルナは思う。味方の誰が点を取ろうとチームの得点は変わらない。


 しかしイチカにとっては撃破することが目的ではなかったので、本来の目的が阻まれたことを恨んだ。


「コイツを餌に汐留を探す気だったのに」

「ほらイチカ、構えて!」


 悔しいと呟く彼にハルナは次の勝負に備えるよう呼びかける。西千葉(にしちば)心朱(ココア)津田山(つだやま)(ヒビキ)。二位に最も近いチームのうちの二人が寄ってきていた。



「何あの刀の量!?」


 ハルナはココアが浮遊させ引き連れている赤い刀の数に驚いた。ココアの“ノーツ”は血の一滴で刀を作るものだから、結構な量の血を使ったと想像がつく。


 しかしそれはココアの血ではない。同行しているヒビキは過去と未来の自分の分身を出せる。少し先の未来を見て危機回避し、役目を果たしたら刀で切って新たな刀の素材とする。


 その繰り返しで、自分たちは無傷のまま大量の武器を揃えられたのだ。


「ならこっちはコンビで勝負だ」


 ココアの大量の刀がヒビキとの連携によるものとは傍目では分からない。イチカは勘違いしたが、それは問題ではない。


 夏の風物詩を生み出す“ノーツ”で水がなくても波を起こし、ハルナの鯉のぼりを泳がせる。


 そして波を持ち上げ、放物線を描いて滝を作る。ハルナは鯉のぼりから降りて、その群れに滝登りをさせ龍に進化させた。


 龍の群れが、ココアとヒビキに迫る。



「何あのドラゴンの量!?」


 今度はココアが驚いた。津波が見えたと思ったら、次は龍が空に浮かんで大群で迫ってくる。


 躊躇いなく刀を撃ち出す。斬れば血が出てそれを武器の糧にできる、そんな強みがポリエステル相手では消されている。

 刀が次々と散っていき、龍は一向に減らないままココアとヒビキは包囲されてしまった。


 そしてハルナの操作で龍が立ち、二重丸を描くように並ぶ。内側の円がココアを、外側の円がヒビキを閉じ込めた。


 さらに一斉に回転する。龍の舞いで竜巻が起こり、隣り合う竜巻が重なる。円を作る点と点が繋がり、風の二重丸ができた。二人はリングの檻に閉じ込められた。


『大丈夫!?』


 姿が見えなくなったから通信で様子を聞くも、風の音がうるさくてお互いの声が届かない。


 脱出しないとヤバい予感がしたが、対処できる“ノーツ”は持ち合わせていない。立ち往生の二人に、風の檻が迫っていく。龍が徐々に中央に寄り、少しずつ押し潰してくる。



 刀は全部消えてしまった。ココアは新たに作ろうと指を噛むが、血を刀に変える前に風に飛ばされてしまう。

 ヒビキは過去と未来の自分の分身を出して檻に体当たりをさせるが、跳ね返されてしまった。


 次の瞬間、ヒビキを閉じ込めていた檻に穴が空いた。浜金谷(はまかなや)飛影(ヒエイ)が“ノーツ”を無効化する“ノーツ”で龍の動きを止めたのだ。


 ヒビキは移動して檻の陰に隠れる。するとヒエイは檻に手を触れ次々と消していく。内側にもあると分かるとココアの檻も抉じ開けた。


 大きな竜巻が見えたから誰が何を始めるのか気になって来たヒエイだが、中に人が閉じ込められているだけと分かり残念がった。するとハルナとイチカの存在に気づき、二人の仕業だと察した。


「よくも邪魔を……」

「知るか」


 ヒエイにボールが撃たれるが、盾と“ノーツ”による幻影で凌ぐ。


「あと助けにきたんじゃねえ」


 ヒエイの後ろから武蔵浦(むさしうら)春桜(サクラ)が合流した。二人は元々ココアとヒビキの撃破を目的に行動していた。状況を知らず結果的に二人を逃がしてしまったが、そこで見過ごす気はさらさらない。


 二対二対二の構図が出来上がる。


 二十二人中十人が脱落した。高校ごとの順位、暫定トップ3は以下の通りだ。

 一位 二千代38点

 二位 菜の花原34点

 三位 東核備田22点

 四位 季曲更22点

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