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オートセーブは深夜0時に+  作者: 夕凪の鐘
Episode123 勝ち負けを超えた思い出
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629話 三位に落ちないため

 水天宮(すいてんぐう)千城(チシロ)氷川(ひかわ)柩岐(ヒツギ)を追う。富浦(とみうら)久蘭(グラン)との交戦に時間を取られ逃げる時間を与えてしまったが、撃破して、見える距離まで縮まった。


 そして勝負の時間。チシロは味方の亀有(かめあり)阿等礼(アラレ)と通信して、ヒツギを挟み撃ちにする。


 作業を定時内に終わらせる“ノーツ”を持つアラレは、競技においては規程時間内に決着させる効果を持つ。この体育祭を円滑に進めるキーパーソンだ。

 逃げて時間稼ぎはできない。そう分かっているヒツギは、二人の脱落した味方、上福岡(かみふくおか)恋音(レオン)のゴーストを作って対抗する。


「味方を撃てないと思った?」


 ヒツギの狙いは味方を相手として立たせ精神的に揺さぶりをかけること。だが所詮はゴーストで、本人への影響はないことは分かっている。


 それにゴーストは声を出さない。容姿も本人を真っ黒に染めたようなもので、まるで別人。躊躇いなんて生まれない。


 チシロは銃を向ける。ヒツギがレオンのゴーストを盾にしていたが、気にせずボールを撃ち出した。


「痛い!」


 ボールを当てたとき崩れたゴーストから悲鳴が聞こえた。レオンの声だが、そんなはずはないとチシロは動揺する。



「チシロ後ろ!」


 アラレの視点からはからくりが分かった。他人の声に変換して蝶から出力できる“ノーツ”を持つ北参道(きたさんどう)天羽(アゲハ)の仕業だ。

 アゲハがゴーストの首元に蝶を忍ばせ、声を発していた。


 チシロとアラレは通信で、狙うべきはヒツギと判断した。競技の得点は彼のチームの方が多い。自分たちが順位を上げるために、先に倒すべきと考えた。


 ゴーストが起き上がる。また味方を偽って精神攻撃を仕掛けるつもりと予測したが、種が分かればもう通用しない。


「よくも撃ったわね!」

「うわ出た!?」


 ゴーストの中からレオンが出てきた。そして撃ったチシロにではなくアラレに詰め寄る。

 根に持つ相手が違うことも混乱に拍車をかけた。


「ボクだよ」


 レオンは小竹(こたけ)燈夜(トウヤ)が化けた姿だと自ら明かし、アラレにボールを撃つ。トウヤはゴーストが崩れたとき、狐の姿で潜り込んでいた。

 そしてこれで彼は四撃破。二位の大薔薇高校に追いついた。


「あんたたち敵同士でしょ! なんなのそのコンビネーション」


 ヒツギたち三人は高校が違う。ゆえに競う相手であり、通信もできない。けれども息の合った連携を披露することにチシロは嫉妬混じりの物言いをぶつける。


 だが聞いたチシロ本人も、その答えは察していた。


「“同期”だから」

「知ってたけども!」


 “ノーツ”が目覚めた時期が近い。それが三人の繋がり。けれどもチシロは予感した。きっと各々のチームのために、後々に潰し合うのだろうと。



『チシロがそっち向かってる。そのまま進んで』

『了解』


 松原(まつばら)遁美(トンビ)はヒツギから通信を受けた。チシロの逃げ道を塞ぐことが役目だと理解し、進路をとる。


田町(たまち)夢魔(ユウマ)は陰からトンビを狙い撃った。だが走る相手に狙いは定まらず、当たらなかった。


 ボールが素通りしたことに気づいたトンビは射出元を探りにいく。だがすでに全速力で逃げたユウマの姿はなかった。


「見られてないよな……」


 目が合った人に一日一回悲劇が起こる“ノーツ”を持つトンビは、見られる前に倒さなくてはならない。


 力業でマジックを為す“ノーツ”を使い、まるでテレポートしたかのようにダッシュで移動したが、反動で足が痛む。


 しかしまだ脱落するわけにいかないと、ユウマは足を解す。一校に複数人いるチームには生存点で差をつけられてしまうので得点で負けるのは仕方ないが、同じソロチームとして、アゲハより先に落ちたくない。


 するとユウマは渋谷(しぶや)祈里(イノリ)と鉢合わせた。イノリのチームメイトは皆、もう脱落しているので、一対一。そして彼女は勝負をする気だ。


「さっきはよくも」


 イノリは味方との合流をユウマに邪魔されたことを根に持っている。三位に落ちないために、自分が点を稼ぐのだと意気込んでいた。


 ユウマは身を削り瞬間移動をする。イノリのボールを避けながら懐に潜り、銃を奪って遠くに投げた。


 撃破手段がなくなったイノリは、“ノーツ”で全面にバリアを張って銃を取りに戻る。ユウマは追撃せず、トンビの元へ向かう。


 交通公園のマップと照らし合わせ、先回りした。



 ヒツギと合流を目指していたトンビは、その前にユウマと出会す。目が合うと悲劇が起こると知ってなぜ正面きって出てきたのかと困惑するも、彼の攻撃を盾で防ぐ。


 するとバキッと音がした。力んだユウマが引き金を壊した。さらに指を痛め動きが止まり、撃たれる隙を作ってしまった。


 トンビがユウマを撃破して、再び合流を目指した。



 SLに撥ねられてイノリの制御から解放された麻布(あざぶ)麻李杏(マリア)両国(りょうごく)命里(メイリ)が発見した。しかし経緯を知らないメイリは、単にマリアが倒れているものと認識した。


 触れれば自分の操り人形、つまり味方にできるが、そうせず倒して得点を稼ぐか。


 するとマリアがひとりでに動き出し、メイリに襲いかかった。同じくして離れた場所から彼女を発見した富士見(ふじみ)稲穂(イナホ)が、触れずに触れたように動かせる“ノーツ”で、直接触れずに操り人形に変えていた。


 メイリは警戒し、一から九の数字を足元に出現させる。自身の真下に五を、それを囲うように残りの数字を。作られた魔方陣は神秘の力で不幸から身を守る。


 イナホのサイコキネシスを弾き、見えざる手を無効化した。何かが触れようとしてきた感覚は、メイリにも伝わった。


 効かないと見たイナホは、メイリの対象は他人に任せてマリアを連れて離脱を決めた。すると銃を拾いにきたイノリと遭遇する。


「さっきはよくも」


 味方との合流はイナホとマリアにも邪魔され、しかもその結果味方は脱落した。その仕返しに迫る。


 背後から狙ったメイリに気づかず、イナホは撃たれた。ボールを当てられ脱落し、再びマリアは自由になる。


 掻っ攫ったメイリは今度は自分が狙われる予感がしたが、イノリはマリアしか見ていないことに気づき、こっそり離脱した。



 意思が戻ったマリアはイノリと対峙する。


「協力しましょう」


 状況を飲み込めていないから、まずは結託を提案した。しかしイノリは聞く耳を持たない。無言で銃を向ける。


「あんたの意思じゃないのは知ってる。でも倒したいのよ」

「……分かったわ」


 マリアはイノリが協定ではなく撃破を望んでいると理解し、勝負に乗る決意をした。


 ボールを撃ちながら距離を詰めるイノリに対し、盾で防ぎ反撃を窺うマリア。見切れない距離まで迫ったと見て引き金を引くも、それは盾ではなくイノリの“ノーツ”で作ったバリアに弾かれた。


 そして銃を持った手を振り、マリアの銃にぶつけ手離させる。反撃でマリアは盾を投げると、それはバリアを貫通にイノリの脛にヒットした。怯んだ隙に彼女の銃を奪い取る。


 発砲する。その直前に張られたバリアにボールが跳ね返され、マリアの懐にヒットした。自分で撃ったボールに当たったが、これはイノリの撃破点となった。


 脱落時の転送で銃は持っていかれたので、イノリはマリアが落とした銃を拾う。



 “同期”とともにチシロを追っていたヒツギと、トンビは合流した。これでチシロは四人に囲まれる。

 そしてトンビと目が合ったチシロは今日中に悲劇が起こることになり青ざめる。


「二人残ってるチーム狙うのが先でしょ!?」


 撃破点が少ないので目立っていなかったが、トンビがユウマを撃破したときチシロのチームを超えて四位になっていた。一人になった自分より、まだ二人残っているチームを撃破し得点を抑えた方が合理的だと提案する。


 そんなチシロの意見を聞くと、優先して狙う相手にはトウヤも該当する。


「でもボクたちは今さら一位に届かないし、三位との差も大きいし」


 トウヤは逃れようとした。放っておいても集中して狙っても他校の順位に影響は与えないと言って。


 それが事実か確かめたいが、この混戦で端末をチェックしようものなら撃たれておしまいだ。


「ならやっぱりチシロ倒そう」


 結局チシロ狙いのプランは変わらず、ヒツギの号令で動き出した。


 四人いる方よりは一人だけの側が狙い目。チシロはトンビを倒しにいく。


 一度目が合えば何度合おうと関係ない。チシロはしっかり見据えて銃を構える。そして背後からも来ると察し、屈んだ。


 目論み通り、ヒツギが撃ってきていた。頭上をボールが通過し、正面に居たトンビに当たる。急にボールが来て盾を構えたが、その盾をチシロに触られ鉄の盾に変えられた。


 重さに思わず腕が下がりバランスを崩す。その隙を逃さずチシロはトンビを撃破した。



「トウヤ、一位に届かないのは本当?」


 目的のチシロは取り逃してしまい、ヒツギと二人の“同期”は作戦会議をする。


「適当に言ったけど、多分ね」


 端末で高校ごとの点数を確認すると、一位とは十五点差。そこは一人、トウヤたちは二人残っているから、他校の選手が脱落すると生存点で一点ずつ差が縮まる。


「残り八人でしょ? ソゾロくんが残っているし、逃げ切られて終わりさ」


 残り人数的に、撃破点を取らないと追い抜けない。取ったうえで、八王子(はちおうじ)漫芦(ソゾロ)を早めに脱落させなくてはならないが、彼の“ノーツ”を鑑みると難しい話。


「ボクたちで追っても、きっと見つからない」


 ソゾロの“ノーツ”は虫を使役して、その虫の視界を得るもの。つまりステージの各地に散らばらせておけば選手の位置を把握できる。


 見つからないように移動するのは造作もないわけで、対策は雪を降らせて虫を埋めるか、真っ暗にするかなど。

 後者はトウヤのチームメイトが可能だが、彼女はもう脱落している。つまり打つ手がないのだ。


「分かったわ。この次ソゾロがやられない限り、逆転はないって」


 納得したアゲハは、トウヤの言う順位変動が起こらない予想を信用した。次の脱落者がソゾロでない限りは。



 当のソゾロは満身創痍だ。一ノ宮(いちのみや)耀(ヒカリ)に擦りつけられた電気のせいで痺れが取れない。

 普段なら積極的に荒らしにいけるが、時折動けなくなるこの状態ではコソコソ逃げ回ることしかできない。


 しかし休めない。ヒカリがずっと追ってきている。不規則に進路をとっても、的確に道を選んでくる。


 ヒカリは電気の気配を感じ取れていた。ソゾロに擦りつけた、自分が浴びた電気。自分の体に走ったものと同じ感覚だからこそ、ソゾロの動向を探れる。


 他に誰がいるかは分からないが、味方がもういないソゾロが、痺れが続く状態で人前に出るとは思えない。それにそれができる余力があるのなら自分の護衛をするはずだから、逆説的に彼は一人だと確信している。


 SLの前でソゾロは足を止めた。


「よくここが分かったな」

「カナタの雷が教えてくれた」


 追いついたヒカリは種を明かした。彼女に雷撃を落とした、ソゾロのチームメイトのおかげだと。


 ヒカリは銃を向けて走り、横から撃つ。ソゾロは盾で弾く。撃ち返そうとするが、体が痺れて動かない。

 ヒカリはまた走り、別の方向から撃つ。また彼は盾で防ごうとするが、体が痺れて動かない。咄嗟に地面を蹴って回避した。

 彼女はまた走り、撃つ。今度は盾も足も動かず、無防備な体にボールを受けた。


 三十人中二十三人が脱落した。高校ごとの順位、暫定トップ3は以下の通りだ。

 一位 花段井74点(確定)

 二位 菜の花原63点

 三位 大薔薇58点

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