表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オートセーブは深夜0時に+  作者: 夕凪の鐘
Episode123 勝ち負けを超えた思い出
117/256

628話 共通の相手

「仇をとるよ、アカネ」


 富士見(ふじみ)稲穂(イナホ)小竹(こたけ)燈夜(トウヤ)に味方を倒され、仕返しに彼のチームメイトの一ノ宮(いちのみや)耀(ヒカリ)を標的に据えた。脱落した味方との通信は途絶えるので、その呟きは届かない。


 撃破点を稼いだのはヒカリではなくトウヤだが、どちらを先に倒してもチームの点数は変わらない。だから狙いやすい方を選んだ。


 そしてイナホが操っている麻布(あざぶ)麻李杏(マリア)と、彼女に抱えさせている渋谷(しぶや)祈里(イノリ)も向かわせ、三人で囲い三方向からボールを撃つ作戦で行く。


 そんなイナホを待ち伏せていたのは八王子(はちおうじ)漫芦(ソゾロ)。今すぐにヒカリを倒せる距離に居ながら、彼女を庇うようにスタンバイしている。


「イノリ起きて」


 解放してもふらついて膝から崩れ落ちるイノリにイナホは呼びかける。だが彼女は味方を立て続けに失ったショックで放心状態だった。


 イナホは届かない位置からでも実際に触れたときと同じように扱える“ノーツ”、まさにサイコキネシスで、手を空振りしてイノリを間接的に抱え上げ起こす。



 ヒカリは直前に食らった雷で体が痺れている。撃破するには絶好のチャンスだが、そばにいるソゾロが邪魔だ。


 イナホはイノリの援護が見込めないと見限ると、マリアと二人で邪魔者を退かすことにした。


 ソゾロはマリアに銃を向けようとするも、イナホのサイコキネシスで押さえられ引き金を引けない。その隙にマリアに引き金を引かせボールを射出する。


 そのボールは、ヒカリが撃ったボールが空中でぶつかり軌道を逸らされた。直後、彼女はふらつく。

 ソゾロは咄嗟にヒカリを抱え走り去った。観客の前でやりたくないが、だからこそイナホから横槍を入れられずに済んだ。


 抱え上げられたヒカリは、肘をソゾロの背中に打ち込んだ。呻き声を上げる彼。痛みに加え帯電した彼女から電気を流され、足が止まる。

 解放された彼女は走り距離をとった。


 面白そうだから傍観していたイナホだったが見所はもうないと読み、マリアを向かわせようとする。だが手応えがない。目を向けると、イノリに触れられ主導権を奪われていた。


 マリアの“ノーツ”は触れた人の操り人形になること。そこでイナホは触れずに触れられる“ノーツ”を活かし再び主になろうとしたが、イノリによって周囲を赤いバリアで囲われ、力を遮断された。


 今度は自分が隔離される苦しみを味わうといい。内心そう吐き捨てたイノリは、マリアを連れて移動した。



 別の場所では、氷川(ひかわ)柩岐(ヒツギ)富浦(とみうら)久蘭(グラン)を狙っていた。

 脱落者のゴーストを生み出す“ノーツ”で、グランに撃破された味方を作り、彼女の力で作った幻想世界で勝負を挑む。


 そこに本物の家中(いえなか)初乃(ハツノ)が乱入した。グランはトウヤの変装かと疑い刀を構えたが、挙動で本人と確信し懐に仕舞った。


「一緒に倒そうよ」

「嫌よ。グランは私の仲間だもの」


 イマジナリーシスターと呼ばれるハツノの“ノーツ”は、現実と空想の混同。彼女の言葉を聞くと事実であっても嘘だと、逆に嘘を本当と考えるようになる。


 ヒツギは彼女と結託してグランを撃破するつもりだったが、彼と結託されてしまう。

 炎を放ち退路を塞ぎ、刀を振るうグラン。ヒツギは味方のゴーストを犠牲に防いだが、今度はハツノが詰め寄る。


 対抗して大船(おおふな)切裏(コトリ)のゴーストを出す。彼女は倒されたハツノの味方。たとえゴーストでも攻撃に躊躇いが出る。


 その隙を逃さず、ヒツギはハツノにボールを撃ち、撃破した。すぐさま狙いをグランに切り替えた。


 グランが斬撃で飛ばした氷の塊を、ヒツギは盾であっさり受け止める。“ノーツ”を防ぐ盾のおかげで力まず止められたが、当たらない攻撃は防げない。氷が広がり視界を塞がれる。


 氷の上に乗ったグランは滑りながらヒツギの上を取りに向かう。だがすでに彼の姿はなかった。


 グランが着地する位置を狙って水天宮(すいてんぐう)千城(チシロ)がボールを撃つ。だが咄嗟に刀を振って放った炎で身を包み、ボールをブロックする。


 チシロはすかさず全身を鉄化させ、炎の渦に体当たりする。熱に耐えて重い一撃を浴びせた。


 吹き飛ばされたが上体を起こし銃を向けようとするも、想像以上の重さに腕が上がらない。見ると腕が鉄になっている。


 気づいたときには手遅れ。チシロにボールを当てられてグランが脱落した。



 イノリはマリアとともに大崎(おおさき)千迅(チハヤ)を標的に選んだ。残りの選手から選んだのではなく、たまたま向かった先にいたから。


 風を読めるチハヤは自在に変化球を撃つも、イノリが不規則にマリアを動かすので当たらない。しかしチハヤも守りも堅い。相手のボールの動きを読んで、危なげなく躱していく。


 そこへヒカリが割り込んだ。ソゾロを見失った彼女は、手当たり次第走っていたら三人の勝負を見かけ乱入した。


 そしてヒカリも狙いはチハヤ。今の状況なら一番倒しやすい相手だからだ。だがイノリはターゲットをヒカリに変えて、一対一対二の構図が出来上がる。


 イノリはマリアを動かして挟み撃ちできる隙を窺う。だがヒカリは盾を駆使して凌ぐ。雷撃を受けても、動きは俊敏だ。


 ならばとイノリは作戦を変え、マリアにヒカリを羽交い締めにさせた。身動きを封じ、自分できる仕留める。だが撃ち出されたボールは、プラズマに弾かれた。


「来ると思った」


 同じ手口でブロックされたので、チハヤは何が起こったかをすぐに理解した。九重(ここのえ)晋世(シヨン)に、またしてもヒカリを庇われたのだ。


 チハヤの呟きを聞いたシヨンは、何か対策を立ててあるのかと警戒する。そこで彼は序盤の交戦には居なかったマリアを要注意した。



 チハヤは再びヒカリを狙う。風に揺られるほど弾速を落とし、当たらないと見せかけて当てる作戦で。

 だが今度は二方向から狙う。一発目が宙を漂う間に移動して、弾速を最大に上げて同時に二発当てにいく。


 ヒョロヒョロ弾を目で追うヒカリは、別方向から迫るボールに気づかない。だがそのボールはシヨンが電光石火で飛び込み弾く。


 ヒカリは浮いたボールを撃ち落とすと、盾を投げた。盾はプラズマ状の体になったシヨンに当たり、元の体に戻って吹き飛ばされた。


 ヒカリは銃を向けボールを放つ。シヨンは脱落を覚悟したが、イノリが“ノーツ”で作った赤いバリアに弾かれた。


 救われたシヨンだが、芸術点の高い敗北を邪魔され機嫌を損ねた。仕方なくまだ戦うと決意し、イノリが撃ったボールは避けた。


 一方でヒカリはイノリにムカついた。初撃破を防がれたことではなく、敵なのにイケメンに媚びを売る彼女にイラッとした。


 その結果、空気がヒリついた。



 マリアがヒカリを確保する。だが彼女は帯電しており、マリアは人形なので痛みはないが静電気で髪が逆立つ。


 押さえた隙に撃つ気でいたイノリは髪の逆立ちにビビり、反応が遅れた。その間にヒカリはホールドから脱出し、チハヤに迫る。


 今度はヒカリが遅いボールを空に向かって撃つ。動きだけチハヤの真似をしただけでまったく計算していないので当たるはずがない。


 だがチハヤは警戒し、急いで風を読みどうすれば当たらないか考えた。その計算を邪魔するように、シヨンがプラズマになって空を飛び回り風を乱す。


 戸惑うチハヤをイノリが撃ち脱落させた。ヒカリかシヨン、どちらかに点を取られることになるのなら自分が取ってしまおうと考え、勝負に出た。


 結果、イノリは二人の共通の相手と認識される。



 この場には四人。イノリ、マリア、ヒカリ、シヨン。イノリにとって、マリアは自分の操り人形なので味方だから二対二の構図。しかしマリアの主導権を奪われたら一対三になって不利。


 だから一対一の構図を作る。マリアを使ってシヨンを捕まえ、ヒカリと一騎討ちにした。


 イノリはバリアを張りながらヒカリに駆け寄る。ヒカリはボールを撃つも、バリアに弾かれ倒せない。盾はさっき投げてしまったので、撃たれたらおしまいだ。


 イノリはバリアに銃口が入る小さな穴を開ける。自分の身を守りつつ、ヒカリに撃つ準備だ。


 そこでヒカリはバリアを蹴る。ヒビは入らないが押すことはでき、穴が深く銃にメリ込んだ。


 引っ張っても抜けない。一度バリアを解除すれば解決だが、ヒカリが手のひらでバンバンと叩いてくるので解除できる状況ではない。


 バリアが破られることはないので守っていれば負けないが、大きな音を立てられると他の相手が寄ってきてしまうと考えた。

 そこでイノリはバリアを張りながら下がりヒカリから離れた。


 イノリの意識がヒカリに向けられている間に、シヨンはマリアを倒しにかかる。今は自我がない。操作されなければ棒立ちの人形だ。


「マリアちゃんが危ない!」


 だがヒカリはシヨンの動向に気づき、バリア越しにイノリに叫んだ。そしてマリアを操り、シヨンのボールを回避した。


「どういうつもり?」


 今のヒカリの警告には正直ありがたかった。だがなぜ敵なのに言ってきたのか、イノリは彼女の真意を探りにいく。


「私の得点よ」


 ヒカリの答えは、自分が撃破点を稼ぐために餌が減っては困るというもの。序盤もシヨンから聞こえたその貪欲なスタイルに、イノリは対抗心を燃やす。絶対に点にはならないと。

 そして点を渡さないと。



 イノリはバリアを解除した。そして自分とマリアでシヨン一人を狙い撃ちにいく。解除した理由は、守りを捨てたチャンスだとヒカリに錯覚させるため。


 読み通り、ヒカリはボールをイノリに撃つ。それらは避けたり盾で弾いたりして、少しずつシヨンに詰め寄る。


 疲れ知らずの人形でシヨンの逃げ道を塞ぎつつ体力を削る作戦だが、彼もプラズマになって高速移動できる。足が疲れて息が切れても、電気になって飛べる。


 だが彼は逃げない。自分が逃げればヒカリが狙われる。本音としては今のうちに彼女には逃げてほしかったが、一向にその気配はない。


 だからシヨンは反撃に出た。電光石火でマリアの背後を取りにいく。しかし彼女も人離れしいた速さで、尽く先回りされてしまう。


 すべてイノリのコントロールだ。光の速度など想像力で超えられる。イメージして動かされるマリアは、シヨンより速く飛び回る。


 ついに彼のプラズマの体を捉え、蹴りを浴びせた。さっきヒカリが盾をぶつけたのがヒントになり、目論み通りの結果だ。


 イノリはシヨンが元の体に戻った隙に銃を撃ち、撃破した。


 ヒカリの狙いは一つ阻止してやったと、イノリは得意気に視線を向ける。だが彼女は向こうへ走っていた。

 好戦的な言動はブラフで、逃げる隙を作るのが目的かとイノリは勘づく。すぐにマリアを使って追わせる。


 しかしヒカリは踏切を渡りきり、マリアはSLに撥ねられイノリの制御を失った。


 三十人中十七人が脱落した。高校ごとの順位、暫定トップ3は以下の通りだ。

 一位 花段井69点

 二位 大薔薇50点

 三位 菜の花原47点

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ