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エデン外伝  作者: ko-da
『戦いの後始末』

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11/12

おうを探して

エデンは煙の中を駆け抜け、リミットフォースを込めた拳をエイリエアへ叩き込んだ。

「はあっ!」

拳がエイリエアの胴体に直撃する。衝撃でその長い身体が大きく揺れ、地面を踏みしめていた足が後退した。

しかし、エイリエアは倒れなかった。無数の腕を地面につき、崩れかけた身体を支えている。全身を震わせながらも、まだ戦う意思を失ってはいないようだった。

「くそ……火力が足りない」

エデンは拳を握り直した。リミットフォースによって強化されているとはいえ、今の一撃だけでは決定打にならない。

エイリエアが再びこちらを向こうとしている。目を覆う手が剥がされれば、また身動きが取れなくなる。

そのとき、背後からドロイの声が響いた。

「なら火力をあげましょう……エデンさん……手を貸してください」


「えっ?」

エデンが振り返るよりも早く、ドロイは鉄鋼製作(スチールメイキング)を発動した。生み出された鉄が形を変え、エデンの右手を覆う。手首から拳までを包み込む、重厚な鉄のガントレットだった。指を動かすと、金属が擦れる音とともに拳が固く握り込まれる。

さらにドロイは、エデンの身体を覆い隠せるほど巨大な鉄の盾を生成した。盾を構え、エイリエアとの間に割って入る。

「これで、あなたの拳を補強します。あとは、思い切り殴ってください」

ドロイは盾の向こうから、静かに告げた。

一方、亜爆と亜炭はエイリエアの注意を引きつけていた。

亜爆の投げた爆弾が爆発し、亜炭の操る炎が視界を覆う。爆煙と炎が入り乱れ、エイリエアの目を塞ぎ続けていた。

「ありがとうございます、ドロイさん!」

エデンは右手のガントレットを見つめ、力強く頷いた。

これなら、届くかもしれない。

エデンはリミットストリングを発動した。伸びたエネルギーの糸が、エイリエアの腕に引っ掛かる。

そのまま糸を縮ませ、一気に距離を詰めていく。

エイリエアの身体が近づく。

あと少し。

エデンは接近する勢いを利用し、リミットストリングを解除した。間髪入れずにリミットフォースへ切り替え、右拳に力を集中させる。

だが、エイリエアがこちらの気配を察したのか、身体をひねり、振り向こうとしていた。

目を覆う手が、こちらを捉える。

このままでは、また動きを止められる。

「エデンさん!」

亜爆の声が響いた。

エデンの視界に飛び込んできたのは、こちらへ向かって飛んでくる爆弾だった。

爆弾はまだ爆発していない。

エデンは一瞬で意図を理解した。

飛んでくる爆弾に向かって足を伸ばし、その表面を踏み台にする。身体が宙へと跳ね上がった。

エイリエアの頭上を越え、背後へ。

そして、エイリエアが振り向いた、その瞬間。背後で爆弾が炸裂した。

轟音と爆風が森を揺らし、エイリエアの視界を再び塞ぐ。

その一瞬を逃さず、エデンは空中で身体をひねった。右手のガントレットが鈍い光を反射する。

リミットフォースの力を、全て拳へ。

「はあっ!」

全力の一撃が、エイリエアの腹部に叩き込まれた。

鉄の拳が深くめり込み、凄まじい衝撃がその身体を貫く。

次の瞬間、エイリエアの腹部に大きな穴が空いた。

「――――ッ!!」

エイリエアの身体が大きくのけぞる。

エデンは着地し、拳を構えたまま相手の様子を窺った。

腹部に大きな穴を空けられたエイリエアは、その場でふらついた。

無数に生えていた腕が地面に垂れ下がり、長い胴体がゆっくりと傾いていく。やがて、その身体の輪郭が崩れ始めた。エイリエアを構成していた肉体が光の粒子となり、少しずつ空気の中へ溶けていく。

消滅が始まっていた。

エデンは右手のガントレットを下ろし、静かにその姿を見つめた。

「……終わったのか?」

亜爆が爆弾を構えたまま、慎重に問いかける。ドロイも鉄の盾を構えたまま、エイリエアの様子を窺っていた。亜炭は指先に灯していた炎を消し、周囲への警戒を続けている。

しかし、エイリエアは最後まで何かを探すように、かすかに腕を動かしていた。

「どこ……どこ……」

消えかけた口から、か細い声が漏れる。

それは、戦いの最中にも何度となく繰り返していた言葉だった。

どこにいるのか。

何を探しているのか。

エデンはその問いに、答えを見つけられないまま立ち尽くしていた。

そのとき、エイリエアの口から、もう一つの言葉がこぼれた。

「おう……」


「……おう?」

エデンは思わず聞き返した。

王。その言葉が頭の中で繰り返される。

「王って、まさか……」

エイリ星人の王。

エデンの脳裏に、かつて戦ったエイリワスの姿が浮かんだ。

エイリワスは、エイリ星人の中でも特別な存在だった。人間にとって脅威であるだけでなく、数々の事件の中心にいた存在。そのエイリワスが倒された今、エイリエアは何を求めて彷徨っていたのか。

あの執拗な捜索。

「どこ」という言葉。

そして、最期にこぼれた「おう」という声。

それらが一つにつながった気がした。

「……エイリワスを探してたのか……」

エデンの呟きが、静まり返った森に落ちた。

エイリエアは、ただ何かを探していたのではない。

王を探していたのだ。

エイリワスを。

そのことに気づいた瞬間、エデンの胸に複雑な感情が広がった。

知能が一定の基準から上がらず、能力の制御もできない失敗作。そう記された個体が、消えゆく最期まで、ただ王の居場所を探し続けていた。

「……」

エデンは、光の粒子となって消えていくエイリエアを見つめ続けた。

やがて最後の光が消え、森には静寂が戻った。

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