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エデン外伝  作者: ko-da
『戦いの後始末』

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10/12

視界を遮る

エイリエアは、顔を覆っていた手を再び引き剥がした。

「グアアアアアアアッ!!」

耳をつんざくような叫び声が森に響き渡る。

露出した目が、周囲を捉えた。

次の瞬間、エイリエアは無数の腕を振り回しながら暴れ始めた。腕が木の幹を叩き、地面をえぐり、近くにあった岩を弾き飛ばす。周囲の木々が大きく揺れ、枝葉が音を立てて散らばっていった。

エデンは鉄の板の陰から、その様子をうかがっていた。

エイリエアは、こちらを正確に狙って攻撃しているわけではなかった。目の前にあるものを、片っ端から破壊しているのだ。視界に入った木へ腕を振り下ろし、鉄の板を見つければ、それを壊そうと何本もの腕を叩きつける。エデンたちが隠れている場所を把握しているというより、目に映る障害物をすべて取り除こうとしているようだった。

「敵……どこ……!」

エイリエアは叫びながら、さらに腕を振り回す。

鉄の板が激しく揺れた。

「うわっ……!」

エデンはとっさに身を引いた。板に亀裂こそ入らなかったものの、衝撃が地面を通して伝わってくる。何度も攻撃を受ければ、いつまで持ちこたえられるか分からない。

ドロイも鉄の板の陰から様子をうかがっていた。

エイリエアは、目の前にあるものを壊すことに夢中になっている。視界に入った対象を見分け、狙いを定めているようには見えなかった。

そのとき、亜炭が動いた。

彼女は隠れていた木の陰から静かに飛び出すと、エイリエアの背後へと回り込んだ。

エイリエアは目の前の木を破壊することに集中しており、背後の亜炭には気づいていない。

亜炭は足を止め、銃を構えた。

狙いは、エイリエアの長い胴体。

「烈火擦操(フレイムアーツ)」

亜炭が指を鳴らす。

その音と同時に炎が生まれ、エイリエアの背後から襲いかかった。炎が身体を捉えた直後、亜炭は間を置かずに銃の引き金を引いた。

銃声が森に響く。銃弾がエイリエアへと飛び、炎とともに攻撃が叩き込まれた。

「グアアアアアッ!!」

エイリエアが激しく身をよじった。

突然の攻撃に、長い胴体が大きく傾く。何本もの腕が背後へ振り向こうと動き出したが、目の前の木々や地面を破壊していたときのように、すぐには攻撃の方向を定められない。

亜炭はすぐにその場から離れ、木の陰へと移動した。

エイリエアは叫びながら、再び無数の腕を振り回す。

「敵……! 敵……!」

その姿を見て、エデンは鉄の板の陰で考えを巡らせた。

目を露出させると、相手の動きを封じる。

しかし、その能力があるからといって、こちらの居場所を正確に把握できるわけではないらしい。障害物に隠れていれば、少なくとも今のような無差別な攻撃を直接受けずに済む。

そして、背後から攻撃した亜炭は、動きを封じられることなく攻撃を成功させた。

エデンは、亜炭が隠れた木へ視線を向けた。

「視界に入らなければいい」

自分の考えを確かめるように、エデンは呟いた。

正面から目を合わせる必要はない。

相手の視界を遮り、死角から攻撃する。

簡単なことではないが、突破口は見えてきた。

エデンは鉄の板を握りしめ、再びエイリエアの動きをうかがった。

今度は、こちらから仕掛ける番だった。

エイリエアは、亜炭から受けた攻撃に苦しみながら、森の中で暴れ続けていた。

「敵……敵……どこ……!」

無数の腕が木々をなぎ払い、地面を叩きつける。目の前にあるものを次々と破壊しているが、その動きに正確さはなかった。エデンたちの居場所を把握しているわけではなく、視界に入ったものを片っ端から壊しているようだった。

エデンは鉄の板の陰から、慎重にその様子をうかがっていた。

(今なら……いけるか?)

亜炭の攻撃によって、エイリエアの注意は背後にも向けられている。無数の腕がばらばらに動き、周囲を探るように振り回されていた。

その動きの中に、一瞬の隙が生まれる。

エデンは鉄の板から手を離し、静かに身を乗り出した。

エイリエアの目を直接見ないように注意しながら、身体を低くして距離を詰めていく。地面を踏む音を抑え、木々の間を抜ける。相手の視界に入らない位置を保ちながら、攻撃できる距離まで近づこうとしていた。

あと少し。

エデンは拳を握りしめた。

「リミットフォース……!」

身体の内側から力が湧き上がる。

これなら、強烈な一撃を叩き込める。

エデンは地面を蹴り、エイリエアへと踏み込んだ。

しかし、その瞬間だった。

「……敵!」

エイリエアが叫び、勢いよく振り向いた。

目を覆っていた手は、すでに引き剥がされている。

露出した目が、真正面からエデンを捉えた。

「――っ!」

エデンの身体が硬直する。

(くそ……動けな……!)

拳を振り抜く寸前だった。あと一歩踏み込めば攻撃が届く。だが、身体はまったく動かなくなり、足を前に出すことすらできない。

エイリエアの腕が持ち上がる。

そのまま攻撃を受ければ、リミットフォースを発動した状態でも無事では済まないだろう。

(間に合わない……!)

エデンがそう思った、そのときだった。

「爆撃手(ボンバー)!」

亜爆の声が森に響く。

エイリエアの顔に向かって、爆弾が飛んできた。

エイリエアが反応するよりも早く、爆弾はその顔面に直撃した。

爆発が起き、炎と煙が一気に広がる。

爆風が周囲の木々を揺らし、枯れ葉や小枝を巻き上げた。エイリエアの顔は煙に覆われ、露出していた目も見えなくなる。

その瞬間、エデンの身体に自由が戻った。

「動ける……!」

エデンはすぐさま拳を握り直した。

目が煙に隠れている今なら、能力の影響を受けずに動ける。

しかし、エデンはすぐに攻撃へ移ることなく、爆発が起きた方向へ視線を向けた。

そこには、爆弾を投げ終えた亜爆が立っていた。

亜爆はエイリエアから目を離さず、落ち着いた声で告げる。

「爆風でも、視界は塞げます」

その言葉に、エデンはハッとした。

確かに、鉄の板や木々だけが視線を遮る手段ではない。煙や爆風によって相手の目が見えなくなれば、能力を防ぐことができる。

亜爆は、それを利用してエデンを助けたのだ。

「亜爆さん……!」


「エデンさん! 今のうちです!」

亜爆の声で、エデンは我に返った。

煙の向こうから、エイリエアの苦しげな叫び声が響いている。爆発によって目の前が塞がれ、周囲の状況も把握できていないのだろう。

エデンは再びエイリエアへ向き直った。

リミットフォースの力は、まだ残っている。

「……今度こそ!」

エデンは地面を蹴った。

煙が晴れる前に、決着をつけるために。

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