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エデン外伝  作者: ko-da
『戦いの後始末』

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12/12

生きていると信じて

「終わりましたね」

亜爆は、消滅したエイリエアがいた場所を見つめながら、静かにそう言った。

戦闘が終わり、森には再び穏やかな空気が戻っていた。先ほどまで響いていた爆発音も、木々を揺らす衝撃も、もうない。

ドロイが構えていた巨大な鉄の盾が、音を立てて崩れ始めた。盾だけではない。エデンの右手を覆っていたガントレットも、形を失い、細かな鉄の破片となって地面に落ちていく。

鉄鋼製作によって生み出された武器が、役目を終えて消えていった。

「亜爆さん、エデンさん、協力してくれてありがとうございました」

ドロイは二人に向き直り、丁寧に頭を下げた。

「いえ、こちらこそ助かりました」

エデンがそう返すと、亜爆も軽く手を振った。

「ええ、あんな危険なエイリ星人を野放しには出来ませんから」


「このことはアモリス支部にも伝えておきます」

亜炭が静かに口を開いた。

「私達は資料の回収をいたしますので、今日の所は私達に任せてください」


「分かりました。お願いします」

エデンが答えると、亜炭は小さく頷いた。

こうして、エデンたちはドロイたちと別れた。

エイリワスが残した研究施設。そこで発見された失敗作、エイリエア。今回の一件は、これでひとまず幕を下ろした。

けれど、エデンの心には、最後に聞いた言葉が残っていた。

『どこ……どこ……』

そして、『おう』。

王を探し続けたエイリエア。

自分は、あれと何が違うのだろうか。

そんな考えが、頭から離れなかった。

帰路についたエデンは、亜爆と並んで歩いていた。木々の間から差し込む光が、二人の足元を照らしている。

しばらくの間、二人の間に会話はなかった。

やがて、エデンが口を開いた。

「亜爆さん……」


「なんですか?」

亜爆は歩みを止めず、隣のエデンに視線を向けた。

エデンは少し迷った後、尋ねた。

「俺も……あんな風に見えてましたか?」


「……あんな風に?」


「ジエルを探し続ける俺と、エイリワスを探してるエイリエア」

言葉にすると、余計に似ている気がした。

エイリエアは、王を探していた。どこにいるのかも分からず、それでも探すことをやめられなかった。

自分も同じだった。

ジエルが海に落ちてから、ずっと探し続けてきた。手掛かりが見つからなくても、何日経っても、何度調査を繰り返しても、諦められなかった。

その姿は、傍から見ればどう映っていたのだろう。

亜爆はすぐには答えなかった。

少し考えるように視線を前へ戻し、それから静かに口を開いた。

「そうですね。確かに……ここ最近のエデンさんは、少し見ているのが辛かったです」

エデンは俯いた。

やはり、そうだったのか。

自分では必死に前を向いているつもりだった。ジエルを見つけるためにできることを探し、少しでも可能性があるなら足を運んできた。けれど、その姿は周りに心配をかけていたのかもしれない。

「でも、ジエルさんが生きていて欲しいっていう願いは否定しません」

亜爆の声は、穏やかだった。

「私としても大切な仲間です。生きていてほしいと思うのは、当然のことです。私もジエルさんが戻ってきてくれたら嬉しいですよ」


「……亜爆さん」


「ただ、エデンさん。あなた自身が壊れてしまったら、ジエルさんが戻ってきたとき、何て言うんでしょうね」

その言葉に、エデンは顔を上げた。

もし、ジエルが帰ってきたら。自分は、どんな顔で迎えるのだろう。ずっと探していたと、胸を張って言えるだろうか。

それとも、ただ疲れ果てた姿を見せることになるのだろうか。エデンは考えた。

今まで、ジエルが生きていると心の中で言い聞かせてきた。そう信じなければ、立っていられなかったから。けれど、本当は違った。心のどこかでは、ジエルがもう生きていないのかもしれないと思い始めていた。その可能性を認めたくなくて、探し続けていたのかもしれない。探していれば、まだ希望がある。探し続けている限り、ジエルの死を受け入れずに済む。だから、止まれなかった。

「俺……今まで……ジエルが生きてるって、心の中で言い聞かせてた」

エデンはゆっくりと言葉を紡いだ。

「でも内心……生きてないのかもって思い始めてて……だから、ずっと探してた」

口に出した途端、胸の奥にしまい込んでいたものが、少しだけ形になった気がした。

「探していれば、いつか見つかるかもしれないって……そう思いたかったんだと思います」

亜爆は何も言わず、エデンの話を聞いていた。

エデンは一度、深く息を吸った。

そして、前を向いた。

「でも俺、決めました」

その声には、先ほどまでの迷いとは違うものが宿っていた。

「ジエルが生きてるって信じて待ちます」

探すことを完全にやめるわけではない。

ジエルを忘れるわけでもない。

ただ、見つからないことに追い詰められ、可能性を失うことばかり恐れて、自分を見失うのはもうやめようと思った。

ジエルが生きていると信じる。

そして、いつか帰ってくるその日まで、自分にできることを続ける。

それが、今の自分にできることだった。

「こんな姿を、ジエルには見せられない」

エデンは、少しだけ照れくさそうに笑った。

その表情を見て、亜爆も笑みを浮かべた。

「それがいいです」

短い言葉だった。

けれど、そこにはエデンの決意を受け止める優しさがあった。

二人は再び歩き出した。

森の出口は、もうすぐそこだった。

ジエルが生きているという確証はない。

いつ戻ってくるのかも分からない。

それでも、エデンは信じることにした。

いつか再会したとき、胸を張って「おかえり」と言えるように。

その日まで、自分は前へ進み続ける。


『戦いの後始末』おしまい

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