表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンの声を聴いた者たち 〜王立操者養成学園の記録〜  作者: 灯吉郎
第一部:ドラゴンは還る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/32

第15話 はじめての空

─翌朝。


霊峰の空は、いつも通りに見えた。


だが──昨日の“ずれ”を、誰も忘れてはいない。


訓練場となっている霊峰の麓には、すでに生徒たちが集まっていた。


「……もう安全だとは思うけどさ…」


カイルが、上空を見上げて目を細める。


「昨日、あの辺に“裂け目”あったんだよな…」


「……うん」


クラリスも、空を見上げて頷いた。


「……なんか、まだあの辺…変な感じするよな...」


エリオットが、逆立つ肌を押さえながら見上げた。



『……完全には、戻っていない』


「...六花...」



「──いい観察眼だ」


始業の鐘と共に、セドリックが立っていた。


「だが、怯えていても何も変わらん。

昨日見たものは、“特別な出来事”ではない」


生徒たちを見渡して、セドリックはあえて厳しい言葉を紡いだ。


「問題は──お前たちが、何も出来なかったことだ。昨日のような連携を成立させるには、前提がある。


──空を制することだ」


生徒たちの表情を見ながら、最後にこう告げる。



「本日より──飛行訓練を開始する」



「いよいよか…!」

「がお!」


不安を吹き飛ばすようにエリオットが拳を握り、ヴォルカンも応える。


「いや、俺…まだ飛べる気しねぇんだけど...」


……ズリ、ズリ。



「…頑張ろうね、六花」



「……空を制すぞ、ルクシオン」



─それぞれの決意を乗せて、風が吹き抜けた。



「…まずは単体飛行だ。

無理に乗るな。落ちれば双方に損害が出る」


それぞれ距離を取る生徒たちを見ながら、セドリックが続ける。


「見るのは三つ。高度、姿勢、持続。

…これらが安定していれば、合格だ。

─さぁ、やってみろ」


セドリックが言葉を結ぶと、さっそくエリオットがヴォルカンに伝える。


「ボル──飛べ!」

「がおがお!」


さらに大きくなったヴォルカンが、畳んでいた翼を、バサリと広げる。

空気を掴んで叩きつけるような、力強い離陸だった。


──ボッ!ボ、ボッ!!


「ボルーー!めっちゃ不安定だって!!」


エリオットが叫ぶ。


上昇と下降が激しい。

あれでは、乗れば確実に酔う。


「……及第点だ」


セドリックのひと言に、エリオットは項垂れた。


「出力は十分だ。だが──制御が甘い。…次、カイル」


「…うっす!」


……ズリ、ズリ。


「──飛び上がれ、テラ!」


カイルが命じると、それに応えるようにテラが動く。

ヴォルカンよりも低いが、体長が一番あるのがテラだ。


テラの翼が低い位置で、重く打たれる。


バサ、と鈍い音が響く。


──わずかに、浮いた。


「ナイス!テラーー!」


カイルが拍手する。


「……悪くない。安定している。…次、サラ」


「ゼフィラ」


風が、ふわりと持ち上げる。


無駄のない上昇だった。


「……良い。…次、セリア」


「……ルミナ」


静かに浮かび、揺れない。


まるで最初からそこにあったかのように。


「……良い。…次、──」


セドリックが口を開いた、そのときだった。


「……あ」


クラリスが、小さく声を漏らす。



──六花は、すでに浮いていた。



音もなく、空中に在る。


揺れも、無駄な動きもない。


『……待機している』


「あ、えっと……うん、ありがとう…?」


クラリスは戸惑い、セドリックの方を向く。


「……合理的だ。──だが、合図を待て」


セドリックの言葉が落ちた、次の瞬間。


─ギュンッ!



 空気が裂ける。


ルクシオンが、一気に高度を奪った。

直線的で、迷いのない上昇だった。


「……速い…!」


思わず、誰かが呟く。


だが─


そのまま、行き過ぎた。


「おい……『止まれ』」


 セリウスが短く命じるが、減速が遅れる。


─高度が過剰に乗り、姿勢がわずかに崩れた。


「……過剰だ」


セドリックが、静かに言い切る。


「出力は十分。だが──制御が粗い」


「……問題ないだろう」


セリウスは言い返すが、


「……問題があるから言っている」


セドリックに、即座に切り捨てられる。


「先回りも、過剰も──いずれも連携を崩す。

基準は一つだ。“合図に対して、必要なだけ動け”」


セドリックに再度目標を告げられると、セリウスは悔しげに頷いた。


「……次は、合わせる」


「クラリス。──もう一度やってみろ」


「…はい」


セドリックに促されて、もう一度前に出る。


「……いこう、六花」

『……応』



─静かに、浮かんだ。



揺れない。


迷いもない。


まるで、最初からそうすることが決まっていたかのように。



「……良い」


セドリックは一度だけ頷き、全員を見渡した。


「本日はここまでだ。

各自、“合図に対して動く”ことを意識しろ」


ひと呼吸置いて、続けた。


「それが出来なければ、空では生き残れん」



その言葉を残し、訓練は解散となった。


続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ