愛おしい記憶 -04
「きみ、この辺りで見たことない!家はこの辺り?僕たちのたまり場においでよ!」
「あぁ…。」
グイグイと引っ張るオットーに気圧されつつも、その柔らかい手の感触にそっと手を返す。
オットーよりも少し年上だろうか、仕方がないといった表情のルートと呼ばれた少年も道を案内するように先導する。
「来いよ。」
「…ありがとう。」
今度の言葉はすぐに出てきた。首を竦めたルートは、そのまま前を歩いていく。
横に並んだバレッタは、ちいさな声で言う。
「あなたそんな服じゃすぐに目立つわよ。場所にあった格好ってものがあるの。」
少女はそのまま、したり顔で下町での振る舞いの極意を語り始めた。思わずぽかんと間抜けな表情でバレッタを見つめてしまった。
「ちょっと聞いてる?」
「あぁ、ごめん。…うん、聞いてるよ。」
気が付けば笑みを浮かべていた。
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数日後、再び町を訪れたラウドは、教えてもらったたまり場へと向かう。
バレッタがたまり場と呼んだその場所は室内ではなく、周囲を煉瓦で囲まれ、空が切り取られたようなこじんまりとした中庭だった。
以前よりさらに彩度の低い色合いの服は、バレッタからのアドバイスだった。
自分でもわかるほどにワクワクとした気持ちを抱えたままたまり場まで駆けていく。
ラウドは「ラス」と名乗った。
本名を明かすわけにはいかなかったし、何よりこの場所くらいは自分だけの場所にしておきたかった。




