分岐した道の先で -06
ラウドはあやすようにバレッタの背をぽんぽんと叩く。
「あぁ…言葉にならないな。…こんなに嬉しいことはないよ。」
そういって、バレッタの瞼にそっと小さなキスを落とした。
泣いているのに、不思議と笑みがこぼれていく。
バレッタは甘えるように、そっとラウドの手のひらに頬を摺り寄せた。
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「なんで…!どうしてここが…!!」
空気を切り裂くように一人の叫び声が少し離れた場所から聞こえた。
騎士に取り押さえられたマルクだ。
取り押さえられた身体を逃そうと髪を振り乱す。
「トラッド家との取引のある者たちの名簿を辿っていくうちに、没落した貴族の人間たちが不自然に姿を消しているのが見つかった。」
「…っ、」
「…コミノ家の子息だったんだな。」
マルクは一瞬呆けた表情を浮かべたがたちまち、歯を食いしばりながらぎらりと瞳を光らせてラウドを睨みつける。
「…さすがですねラウド様。」
「…マルク。」
「正義を振りかざして、満足ですか。あなたは!私の!全てを奪ったのに!!」
ラウドは何も言わなかった。ただ静かにマルクを見つめる。
「──あれ、僕の出番は必要なかったみたいだね。…それにしても、また派手に壊してくれちゃって。」
広間の入口から軽い足音が響き、涼しい顔で歩み入ってきたのは王太子だった。
場違いなほど穏やかな声で、広間の惨状をさらりと見渡す。




