分岐した道の先で -05
ラウドは何も言わなかった。
何かを嚙み締めるような表情を浮かべ、ただ強くバレッタを抱きしめる。
周囲に騒がしい声が響き渡っても、ラウドはしばらくそのままでいてくれた。
騒がしかった周囲も徐々に遠くなっていく。ラウドの心臓の音だけが静かに聞こえていた。
先に沈黙を破ったのはラウドだった。
バレッタの肩をそっとつかみ、わずかに身を離すと、片手をバレッタの頬にやる。
「バレッタ。好きだ。」
「…ぇ…」
「伝えるのがこんなにも遅くなってしまった。」
懇願するような表情のラウドから目が離せなかった。
──まるでスローモーションのように、自分の回りだけ時間がゆっくりと進んでいるような気がした。
正面から見たその顔には、まるで、何かとても愛おしいものを見るかのような、表情が浮かんでいた。
ラウドは続ける。
「記憶がなくてもずっと思っていた。」
「……。」
──ずっと見ていたいはずなのに、顔が無意識に下がっていく。そのままでいるときっと泣いてしまう気がして。
「もう一度、やり直させてくれないか。君に愛していると、もう一度言う資格が欲しい。」
「ふ…っ…」
「バレッタ…?」
伝えられないまま終わってしまうと思っていた。
伝えても、一方通行で諦めなければ行けないと、もう終わってしまうのだと思っていた。
それなのに。
ラウドが言葉を重ねるたびに視界はどんどんと涙で滲んでいく。
次から次へとあふれる涙を、ラウドは困ったような表情でただ静かにぬぐってくれる。
「…ゎ…も。」
「ん」
「私も、お慕いしておりました。ずっと…!」
勢いのままに思わずその胸に飛び込むと、ラウドは難なくバレッタの身体を受け止める。
そしてさきほどよりもずっと強い力でバレッタを抱きしめた。
その胸に飛び込むと、知らぬ間に子供のような泣き声が口から漏れ出る。




