分岐した道の先で -04
──扉が吹き飛んだのは、まさにその瞬間だった。
「バレッタ!!!」
その声が、自身の名前を呼ぶのを聞いた瞬間、先ほどとは違う意味で全身から力が抜ける。
扉を蹴破って入ってきたその姿は、いつもの柔らかな物腰とはまるで別人のようだった。
剣を手にしたまま広間を見渡す瞳は、バレッタがこれまで一度も見たことのない色を宿している。
広間にいた男たちが次々と制圧されていく。マルクが叫び、控えていた人々が動くよりも先に騎士たちが突入する。それらが全て遠い場所の出来事のように、バレッタにはぼんやりと見えていた。
ラウドは他の者には目もくれず、まっすぐにバレッタだけを見つめてこちらに歩いてきた。
「…ラ、…さ、ま。」
「無理に声を出さなくていい、もう大丈夫だ。」
声が掠れた。自分でも驚くほど何度発音しようとしてもうまくいかない。
後ろ手で嵌められていた拘束具を外す音がした。
重心が変わったことでぐらりと傾いだ身体をラウドがそっと受け止める。
そのまま自身が来ていた上掛けでバレッタを包み、じっとバレッタを見つめる。
「怪我は。」
声の代わりに何度もこくこくと頷く。
ラウドはしばらく黙ってただ、バレッタの全身をくまなく見分していたが、そのうちにいくつかの噛み後と、頬の赤身に気が付いたようだった。
大きくその瞳が揺れる。常であればあまり大きく崩れることのない表情がくしゃりと歪む。
──バレッタの気のせいでなければ、ひどく心配してくれていたことが分かるほどに。
ラウドはそのままバレッタの頭を自身の胸元に寄せる。バレッタも抗うことなく身体をその身に預けた。
「遅くなった。すまない。」
低い声が耳のすぐそばで聞こえる。ラウドの胸に触れた部分が温かかった。
(生きている。…また会えた。)
当たり前のことなのにそれがひどく嬉しかった。
同時に今更身体が気が付いたようにぶるぶると震えが大きくなる。
「ずっと…呼んで、で、いた…んです。心の…なか、で。」
「っ…‼」
ぶつ切れになりながらも必死になって思いを伝える。
今伝えなければ、もうこんな機会は二度と訪れないのではないかと思った。
ただ伝えたくて、不格好でもいいからと必死に言葉を紡ぐ。




