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分岐した道の先で -01


目を覚ますと何かが違っていた。その変化にすぐに気がつく、いつもと違い手首が軽いのだ。


(拘束が外されてる。)


ゆっくりと身体を起こすと、最近ではおなじみとなっていた気だるさが少しだけマシになっているのがわかった。


──それに、扉が開いている。


慌ててベッドから抜け出し、扉の方へと向かう。しかし一松の希望を抱いたその思いは、向かいからやってきた男の姿にすぐに打ちひしがれる。


その男は血を抜きに来る男たちの中で唯一必ず立ち会っていた人物だ。他の者ものたちよりも歳を重ねているであろうことは角張った手からわかっている。


「ようやく準備が整いました。」


低くしわがれた声で、男が初めて口を開く。扉を塞ぐように立ちはだかるその僅かな隙間から抜け出そうと隙を見て動くが、部屋に監禁されていた期間で落ちた体力では敵うことなく、易々と男に取り押さえられる。


意外にも力のある男は、そのままバレッタを俵のように担ぎあげると、ヒヤリとした空気が流れる石造りの通路を歩き出す。


しばらく歩くと男は立ち止まった。どうやら何か部屋の前に着いたようだ。重厚な質感の扉が開く音をたてながら男が扉を押し開ける気配がした。


中に入ると男はバレッタを地面におろし、再びその腕を後ろ手で拘束する。


部屋は、息をのむほどの広さだった。


広間のようなその部屋は、全体が白く覆われ天井は見上げるほどに高い。


まるで教会のような雰囲気を醸し出す空間の前面には、祭壇のようなものが設けられており、同じく白い台の上には等間隔に器が並べられている。


床には見知らぬ紋様が描かれていた。祭壇を囲むように幾人もの人間が、同じような装束と顔を覆う布を口元に掛ける姿にぞっとする。


その先を視線で辿り、奥に立っている人物を見てバレッタは目を細めた。


「マルク…。」


「お久しぶりです、バレッタ様。」


マルクはかつてと同じ、丁寧な物腰で言った。歳の割に幼く見える顔に柔らかい笑みを浮かべている。


ゆっくりとした足取りでこちらに向かってくるその姿はいつも身につけていた執事服ではなく、まるで貴族の子息が着るような派手な作りの衣服だった。


目の前まで来ると、しゃがみ込んだバレッタと視線を合わせるようにマルクも腰を落とす。


そして、バレッタの髪をひと房取ると、くるくると弄びながら問う。


「ちょっ…。」


「どうしてと思ってるでしょう?私にも情がありますから最期に教えて差し上げましょう。」


そう言ってマルクは語り出す。


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