正しい答え -08
「直接話す時間が無い分、私から手紙を渡していただろう?バレッタは読んでいなかったのか?」
「…手紙?なんの手紙でしょう?」
「まさか…受け取っていなかったのか?」
思わず近くに控えるイリスに目をやると、イリスも驚いたような顔をする。
「手紙類は最近はマルクに全てを任せておりました。ようやくひとりで色々と回せるようになった…と思っておりましたので。」
「それは…マルクが隠していたと?」
「……しばらく体調を崩したと休んでおりますが、可能性はあります。」
バラバラになっていたパーツが一つ一つ繋がるうちに真実が明らかになっていく。
さらにラウラがおずおずと続ける。
「私が受け取ったのは、ラウド様がバレッタ様にパーティーに出席するようにとのお手紙だけです。」
「…何?」
「それに、ご友人とのお手紙だって!バレッタ様が街の友人たちとの文通を楽しみにされていたのはラウド様もご存知だったはずです!!」
「……ちょっと待て。なんのことを言っているんだ。」
手を額に当てて深く息を吐く。
ラウラから出てくる言葉の数々はラウドが知らない事ばかりだった。それどころか一度も指示したことのないようなことが次々に出てくる。
「俺は…、パーティーに出席するように手紙も書いてないし、友人たちとの文通も禁じてない。」
彼女を守るためにと社交界に出さなくていいように色々と手を打ってはいたが、家の中のことまでは何も口を出していない。
むしろ忙しくなり時間が合わない分の言付けや手紙、ちょっとした贈り物などを届けるように、もっぱらマルクに頼むことが多かった。
「ラウド様、間違いなくマルクでしょう。…私の不手際で申し訳ない…。」
イリスが声を震わせながら深々と頭を下げる。ラウドは手を大きく顔の前で振って否定する。
「いや、何もかも違和感に気が付かなかった俺の責任だ。まさかこんな近くに潜んでるとは思わなかった。」
「早急にマルクに連絡いたします。と言っても体調不良もこの様子だと嘘かと思いますが。」
「それにしても上手く欺いたな。経歴もか?」
「おそらく。そちらも調べます。」
イリスは強い後悔を浮かべた表情でその場を立ち去る。ラウドはラウラにも下がっていい旨を伝えて1人部屋に残る。
強い後悔が心の内で渦巻いていた。
「バレッタ…。」
今すぐにでも駆けつけて、抱きしめてやりたかった。
ラウドの伝えたかった思いもマルクに防止され何一つ届いていなかったなかで、気のおける友人達と連絡さえ取ることを禁じられた彼女の孤独はいかほどだっただろう。
思うだけで胸が息ができないほどに苦しくなる。
彼女を思う気持ちが、こんな形で仇になるとは夢にも思わなかった。
(絶対に、無事でいてくれバレッタ。)
心の中で強く祈りながら、今の自分ができることはバレッタの消息を追い市中をくまなく探すことだけだ。
大きく深呼吸をして、気持ちを切り替える。
「頼む、今すぐ力を貸してくれ。」
電話を持つ手が震えていたのは怒りからか悲しみからか。
この国で1番の権力を持ち、誰よりも頼りになる友人に繋ぎ、詳細を伝える。
手元の机にバレッタがラウドに書いた手紙と共に置いていた、枯れても捨てきれず、ドライフラワーとして小さな瓶に飾っていた花がぽとりと落ちた。




