嵐の前触れ -08
別邸に移ってから数日間は何事もなくただ静かに時間だけが過ぎていった。
その間、バレッタは来客も訪れることのない家で一人過ごしていた。ラウドからは一度だけわかったと言う旨と、こちらを気遣う旨の返事が送られてきていたが、その中途半端な優しさが逆に辛かった。
「バレッタ様、お手紙が届いております!」
ぼうっとテラスにおいてある椅子に腰かけ、手元にある本を読むともなしに眺めていると、共についてきた侍女のライラが嬉しそうにばたばたと足音を立てて掛けてくる。
「お部屋は走っちゃだめよラウラ。」
「あ…!申し訳ありません!」
自身も人のことは言えないなと苦笑しながらもとりあえず指摘する。
高等学園を卒業してすぐにこの家で働き始めたラウラは、時折こうして他の侍女たちから窘められている。今も後ろに控える侍女が何か言いたそうにこちらを見ているのだ。
バレッタとしてはかわいらしいなと思う反面、お客様が来たときに困るのはラウラだと思い気が付いた時にはやんわりと伝えるようにしていた。
「それでお手紙って?」
「ラウド様からです!」
ずいっとバレッタの手元に渡されたのは、公印の押された正式なパーティーへの招待状だった。封を開けると、近々開かれるイムディーナ侯爵家のパーティーに出席してほしい。終わり次第、話がしたいといった内容が簡潔に書かれていた。
(話がしたい…か。)
どんな話をされるのかは、なんとなく想像がついた。
それでも最後くらいはちゃんと顔を合わせて話したかった。
「…出席するわ。」
「急ぎドレスの準備をいたしますね!」
バレッタの顔色をうかがうラウラにニコリと微笑む。そんなバレッタに対しラウラは嬉しそうにぱあっと表情を明るくさせて、早速準備に取り掛かるために部屋を出ていった。




