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嵐の前触れ -06


バレッタがその異変に気がついたのは、行商人が家を訪れてから10日ほど経ってからだった。


「旦那様は本日もお仕事が立て込んでおりまして、お食事は別でお取りになるとのことです。」


イリスが静かな表情でラウドが夕食を共にしないことを伝える。


ラウドが治める領地は広大で、時には王宮での仕事も任せられていることから帰宅が遅くなることは珍しくない。しかし、ここ最近の様子は明らかにこれまでと違っていた。


行商人のことを知らせなければと思いながら、伝えるタイミングをことごとく逃していた。朝食の時間でさえ、バレッタが起きたときにはすでに家を空けている始末なのだ。


バレッタはラウドの執務室に向かった。時間が合わないのであればこちらから訪問すればいい。しかし扉の前でマルクが申し訳なさそうに言う。


「旦那様は今、大切なお話し中でして…。」


「待ちます。」


「…わかりました。終わり次第、こちらからご連絡いたしますので。」


結局、その日ラウドから呼び出されることはなかった。それからというもの、ラウドとバレッタの間にはいつもイリスかマルクが挟まるようになった。


伝言も確認事項も、屋敷の中にいるはずなのに、ずっと遠くの場所から文通をしているようだった。


(…どうして。)


さらにバレッタの心を抉ったのは、友人とのやり取りを禁止されたことだった。手紙を書いて侍女のラウラに出すように手渡すとラウラが困り顔で言う。


「あの…バレッタ様。しばらく外部への文のやり取りはお控えいただくようにとのことで…。」


「…どうして?」


「私は詳しくは存じ上げなくて。」


泣きそうなラウラをバレッタはしばらく黙って、封を閉じたばかりの手紙を見つめた。


「…旦那様は、何か私に怒ってらっしゃるのかしら。」


「いえ、そんなことは…。でも…いえ、なんでもありません。」


ラウラは慌てて、口にしかけた言葉を飲み込んだ。


「ラウラ、教えてちょうだい。」


思わず縋るように言うと、ラウラは視線をあたふたと中に彷徨わせたあと、小さな声でぽつりと言う。



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