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ステルラ  作者: 智織
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第9話 <イヌヒト族の里1>

イヌヒト族の里でのお話です。

キツネヒト族の営む花街の廓で厚いおもてなしを受けて懐が寒くなり暗い顔をしながらガンナー達と合流するルーカス達。


「おはよう御座います。なんだかお疲れのご様子でいらっしゃいますが大丈夫ですか?」

L「いや、世間の厳しさを学んだだけだ。出発してくれ」

短いやり取りをしてトラ車に乗り込み走り出す。

(聞かない方が無難だな。おおかたキツネヒト族に化かされたんだろう。)

ガンナーは心でそう思いながらも無言を貫く事にした。


ルーカス達の心を移すかのような曇天の中、トラ車は次の目的地のイヌヒト族の里へと進む。

昼頃に領地境でランチを取り夕方にはイヌヒト族の里の中心地にあるトラ車ギルドに着いた。

ギルドでトラ車代とガイド代の残りの支払いを済ませて、


L「ここまで世話になった」

「こちらこそご利用、ありがとうございました。」

と挨拶をして、ガンナー達と別れギルドを後にする。


*○*○*


Sy(着いてくるのじゃ)

シルビアに促され、通りを進み右へ左へ。やがて獣人国内でも最大級と思われる大きさで木材を踏んだんに使って建てられた一軒の立派な屋敷に着き、シルビアが屋敷の門番に


Sy「戻ったぞ。部屋を準備するのじゃ」


イヌヒト族が慌しく動く中、屋敷の入り口を奥に進むシルビアを追う一行。


玄関前に到着すると、執事と従者、メイド一同が深くお辞儀をして出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、姫さま。」


「「お帰りなさいませ」」


筆頭執事らしき老紳士なイヌヒト族の声のあと一斉に挨拶を受けたシルビア。


Sy「うむ、ただいま戻った。じぃ、今すぐ第一会議室を使う故、片手間に詰まめる軽食をそこへ。

此奴らの部屋の準備も頼む。準備 出来 次第 人払いをせい。」


屋敷内に踏み入り第一会議室が有るだろう場所へとどんどん足を進めながらシルビアが筆頭執事に指示を出す。


「畏まりました。姫さま」

と返事して周りにいるイヌヒト族に目配せをする筆頭執事。


シルビアの声を聞いていた従者やメイドが忙しなく動き出して、ルーカス達もシルビアに着いていく。

第一会議室と書いてある部屋のドアを開けて部屋の中へと促す筆頭執事に黙礼して入室する。


幾つかの机が密集して並べてあり周りに椅子が十数脚ある。入口一番奥の椅子に、

腰まである艶々の黒髪をハーフアップにし赤いリボンで纏め、漆黒の瞳をして黒い肌に黒のシルクのワンピースと黒のカーディガン、ゴールドのチェーンに付いた大粒の光輝くルビーを身に着けた人の姿をした女性が座って、

「適当に座るが良い。」

と声を掛けられる。


一同は内心 驚きながらも声でシルビアと分かり其々 席に着く。


涼しい顔をした筆頭執事が飲み物を準備して濡れタオルと一緒に一人一人の机の上に置いていく。

ノック音がしてシルビアが(入れ)と返事をすると数人の従者とメイドがワゴンと一緒に入ってくる。


数々の蒸籠(せいろ)と沢山の皿、茶器などが乗っている。

Sy「妾たちで取り分けて食べるから下がって良い」

一礼して屋敷の者たちが退室して、

Sy「先ずは腹拵えといくか」

ということで食事を取ることに。

蒸籠をテーブルに置いて蓋を開けて沢山ある点心を見て、何を食べようかと迷うほどの何とも食欲をそそる湯気が立ち込める。


・蒸點(むしてん):蒸し物


鮮蝦餃(シンハーガウ):海老入り蒸し餃子

焼売(シュウマイ)

叉焼包(チャーシウバウ):チャーシュー饅

小籠包(ショウロンポウ)

糯米鶏(ノーマイガァイ):鶏ちまきの蓮の葉巻き

糯米包 (ローマイバウ):餅米 ナッツ 肉などの皮包み


・煎/炸點(せん/さくてん):焼き.揚げ物


春巻(チョングン):はるまき

鹹水角(ハムソイゴッ):ほんのり甘いモチモチした皮に海老 豚肉 野菜の餡包み

金銭蟹盒(ガムチンハイハップ):カニ肉やクワイを硬貨の形にした揚げ物


・蒸飯(しんはん):ご飯物.その他


鳳爪排骨飯(ホンジャオパイグォッファン):鶏の足とスペアリブの丼もの

豬腳薑醋(チュウグォックォン):豚足の甘辛煮


・甜品(てんぴん):デザート


豆腐花(トーファ):豆腐の砂糖 生姜シロップ掛け

芒果凍布甸(モングォドンボーディン):マンゴープリン


あとは、青茶(烏龍茶) 黒茶(プーアール茶) 特別加工茶(ジャスミン茶)


美味しい点心でお腹を満たした後、ワゴンに皿などを戻してスティールの話を聞く。


*○*○*


<昨夜の廓でのシルビアと国王リカルドの念話>


Sy(リカルド、確認したいことがある故 時間を作れ。)

シルビアからの念話に反応したリカルドは執務の手を止めて人払いをし監視 盗聴防止に結界を張ってから


R「よし、何だ?」

シルビアも同じように結界を張ってから

Sy「今、キツネヒト族の里にいる。妖狐からの情報じゃ。アリーヤの住む州の北で海側にある二つの州に彼奴(あやつ)が数年前から通い詰めているのは知っているか。」


R「アリーヤ姉上の住む州の北の海側、ズァンプーとイータンか。確かトリスタンの同級生と後輩が知事をしてる州だな。(友と会う)と言っては出掛けてるのは知ってるが、それがどうした。」

と言うリカルド


Sy「妖狐が言うには数週間前から、その二つの州から帝国に支援と称して武器と物資を運び帝国難民を受け入れ何やら訓練させてると言うぞ。少し離れた場所に船を停泊させ宵闇に紛れさせて小船で少しずつ移動させてるらしいのじゃ。」


R「何だと!其れは誠の話か!?」

Sy「真相は分からぬ。ただ妖狐が掴んだ情報によると、ルーカスが城を旅立って二月(ふたつき)も経てば妾たちが海を渡り直ぐには駆け付けられない場所にいると踏まえて、機を見て包囲網を敷きお主の座を取ると抜かしとるらしいのじゃ。」


リカルドは机に両肘を乗せ手を絡め深く皺を寄せた額を乗せ奥歯を噛み締めた。

数十秒間の沈黙が流れ軈(やが)て気持ちを整理したリカルドは


R「あい 分かった。直ちにズァンプーとイータンに陰を送り裏取りし対策を図る。お主達は引続き旅を続けよ。」

Sy「一時、帰城せんくて良いのか。下手をすると時間差もしくは同時に帝国がしゃしゃり出て来るぞ。」


R「大丈夫だ。トリスタンは我の弟。少々 派手には成るだろうが我とトリスタンの兄弟喧嘩に次代を巻き込みたくは無いからな。


王都民には申し訳ない事をするやも知れぬが。

幼いアンディとクラリスはレティーツィアと一緒に魔法陣を使用して王都を離れててもらう。それと帝国移民に関してはこちらで対処する」


Sy「ふん、己の矮小さと兄の偉大さを彼奴と帝国の愚民共に存分に教えてやるが良い」


*○*○*


Sy「というわけじゃ」


話を聞き終え気持ちが昂ぶり、熱くなったルーカスは、

ばん!!と机を叩き、


L「何が(旅を続けよ)だ!何が起ころうとしてんのか本当に分かってんのかあのクソ親父!」

と激昂する。


Sy「落ち着けルーカス、熱くなるで無いわ!難民を集めて訓練した所で所詮は烏合の衆。そんな奴等に御主の父や王国軍は太刀打ち出来ぬと思うておるのか。」


威厳のある声と、漆黒の瞳に見据えられ幾分か冷静を取り戻したルーカスは

L「悪りー。」


Sy「王宮に戻った所で御主らにやれる事は限られる。其れに、帝国の目を欺いて共に行動している仲間を危険に晒したくは無いであろう。」

シルビアに諭され(はぁー)と一つ息を吐き出して、セレーナ、イヴァン、ナディアの三人を見て、


L「分かった、旅を続ける。」

と結論を出したルーカス。


解散し、其々にあてがわれた部屋に移動して夜は更けていった。



お読みいただきありがとうございます。

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