第6話 <トリヒト族の里>
トリヒト族の里でのお話です。
ウサギヒト族の里で過ごし、商品が出来上がるまでの工程を見学は出来なかったが、ここでしか買えない物の購入や素材を生かした飲食などそれなりに堪能したメンバーは次のトリヒト族の里に向けて虎車で移動していた。
道中 何事も無く順調に進んで夕方にはトリヒト族の里の中心地に着いた。
「お疲れ様でございます。夕食になされるならご案内しますが如何なさいますか?」
T「どんな店なんだ?」
「魚やきのこ、木の実を使った料理になります。」
L「せっかくだから案内してもらうか」
トラヒト族お薦めの店に入ってメニューに使われている食材を確認してから注文し出てきたのは、
鮭を串に刺して焼いた物、きのこのバター焼き、たっぷり木の実が入ったパンと数種類のジャムだった。
トラヒト族は大きな魚を丸焼きにした物や食材は知らない方がいいだろう物の素揚げを食べている。
味付けは素材を活かしシンプルな感じだったがどれも美味しかった。
支払いは先日の昼食のお礼と言うことでトラヒト族がしてくれた。
食後、今日は解散ということでトラヒト族と一旦別れて街を探索することにした。
先程まではトラヒト族が対応してくれたから視線を浴びたくらいだが、今は外を出歩いていると注目されるのはもちろん遠巻きに噂をされている感じがする。
居心地の悪い視線を感じながら進むと
「やめて!いや、離して!」
「野蛮な人族!手を離せ!」
「いいじゃねぇか、そんな嫌がんなくても。俺達と楽しくお話しよーぜい!」
「野朗に用はねぇよ!すっこんでろ!ギャハハ!」
ドン!ガタン!
「ネコヒト族も可愛い姉ちゃんいたが俺はやっぱこのくらいの豊満なクッションに顔埋めてぇなぁ」
「俺はウサギヒト族の小っこくてビクビクした感じのが可愛がりあると思う」
「やぁー!離してー!」
嫌がるトリヒト族の女性の声と、助けるため声を上げたが突き飛ばされたトリヒト族男性。
テーブルには食い散らかした食べ物と何本もある酒瓶。
でかい声でガヤガヤいう人族。
遠巻きに見てるトリヒト族。
居心地悪く感じた原因がわかりルーカス達は
L「助けるぞ!」
と言って騒動の中へ向かう
T「おい!女性の手を離せ!」
F「お兄さん達、ちょっと飲み過ぎなんじゃないのー?」
「何だー、てめーら!ッテテテ!」
「俺達はちゃんと金払って飲んでんだ!」
「関係ねー奴ぁ、引っ込んれろぉ!ッヒック」
L「呂律 回ってねー奴いるじゃん」
「文句あんのか!この野朗ー!」
「俺たちゃ、Cランクの冒険者様だぞ!」
L「お前ら、何処の人間だ?国境の検問でちゃんと手続きしてから来たんだろうな?」
「うっせー!お前らに関係ねーだろ!」
T「おい、俺達が優しく聞いてるうちに出身地を言え」
F「まぁまぁ、一回 落ち着こうよ。」
仲裁に入って男に掴まれていた女性の腕を離させるトレバーに、やんわり苦言をするフェルナンド。文句を言ってくる男に対し呆れながらも諭すルーカス。
態度を改めずに大きな声でルーカスに迫る男に対して前に出て言い聞かせるトレバー。フェルナンドも前に出てルーカスを守るように手で制す。
L「ハァー、もう一回聞くな。何処の人間だ?」
先ほどより声を低めて聞くルーカスに少し恐れたのか急に態度がしおらしくなり、
「ズァンプー州から来た」
「検問は普通に通ったぜ」
「ヒック、通っらぜ。」
L「トレバー」
T「直ちに報告しよう。検問が通れたって事は今とは違う人柄、つまり酒の飲み過ぎで気が大きくなっているのだろう。でなければミリーネポール州の行う検問が通る訳がない。」
F「はーい、ちょっとごめんねー。拘束させてもらうねー。時期にお迎えくるからよろしくー」
トレバー フェルナンド イヴァンが酔っ払いを外へ連れ出して行く。彼らは酔いと眠気が襲っていたらしく大人しくなったところで、男3人を拘束している間にフェルナンドがトラ車ギルドへ行ってガンナーに頼み警ら隊を呼んでもらって引き渡す。
トリヒト族の警ら隊が軽い事情聴取を取る間にトレバーは何やら紙に書いてルーカスに見せる。
ルーカスは確認してサインし、トレバーは紙を封筒に入れて開かないように封をし裏に自分のサインを書いて警ら隊に渡す。
T「この男達とこちらを検問所の人間に渡してほしい。手間をかけるが頼む。」
トリヒト族の警ら隊は訝しむが
「この方達は信用していい。俺が保証する」
「ガンナーさん、分かりました。人族、手紙を預かる」
と他種族に排他的なトリヒト族だが、何やらガンナーには信頼を置いているらしい。
酔っ払いを引き渡し騒ぎが収まりつつあるところで先程 腕を掴まれていた女性と突き飛ばされた男性にルーカスは
L「俺達と同じ人族が、あなた方トリヒト族に迷惑かけたことを詫びる。」
と声をかけていた。
一緒に行動しているメンバーはとても驚いていたが、トリヒト族からの返事は無くただ見つめられる。
一連の騒動から離れた場所にきて家を出して入り、就寝の準備も終え一息 着いた。
気を取り直し今日もセニート語講座を開こうとしリビングに集まったときナディアがルーカスに近づき
N「あの…、今日は布地に関して熱くなって言い過ぎちゃってごめんなさい!
トリヒト族の人達を助けてくれてありがとう。その…一連の対応の仕方に上に立つ人のオーラのようなものが感じられてその…
カッコよかったわ」
大きめな声で始まり途中からもじもししだし最後の方は顔を赤くしながら小さな声で言うナディアに、
L「あ、いや。俺も世間知らずなとこあるし、人、じゃなくて困ってる者を助けるのは当たり前だし。」
F「ねー、終わったー?待ってるんだけどー」
L「悪りー、始めるか」
こうして今日も一日 更けていくのだった。
〜☀︎☆☀︎☆☀︎〜
朝、準備を終え、トラ車ギルドへ。
挨拶を交わし早速トラ車に乗り込む。
昨日と同じようにトリヒト族の視線は感じられるが、込められている気持ちや意味が違う感じがしながらもキツネヒト族の里へ向けて出発。
トリヒト族達は黙って見送るのだった。
ルーカス達は知らない。
トリヒト族の視線の意味を。
トラ車ギルドのガンナーは実は獣人族の間では有名人である。
獣人国内を客や荷物を運びながら転々とし各里で休憩の度に世間話をしているので自然と知り合いが増えたのだ。
それはトリヒト族の間でも同じ。
昨日あれからガンナーはここまでの日程でのルーカス達とのやり取り、例えば、ご馳走になった人族の食べ物の話、何故かここまで一度もモンスターに遭遇することなく来たことなどをギルドの職員やトリヒト族に話していた。
他、ルーカスも知らないトラヒト族の里以外でも名前が知れ渡るミリーネポール州知事婦人の武勇伝。
そんな婦人の甥だということまで。
つまり見送りをしたトリヒト族の視線の意味は、ある種、恐れ。またある種、憧れの意味を持つのだ。
その中にはもちろん昨日 腕を掴まれた女性と突き飛ばされた男性もいるのであった。
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