幕間2-1 <ある大人達の世間話1>
第二章 水柱編 完了し、幕間話で3話分有ります。
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<said:インダレーナ州知事、州知事婦人>
セニート王国南部にあるインダレーナ州
1日の仕事を終え、今日もお気に入りのアムリット(ウィスキー)を片手にたまにパコラ(野菜天ぷら)をつまむのはこの州の知事。そこへ妻がパティムガム(植物の蘇芳の枝を煮出して作る鮮やかなピンク色した健康効果のある水)を持って部屋に入ってきた。
インダレーナ州知事夫婦は、1日の終わりにこうして何かを口にしながら2人の時間を過ごすのが日課だ。普段は互いの仕事の都合や翌日の予定などで出来ない日もあるが、出来るときは楽しみ大切にしている。
「子供達がようやく寝てくれたわぁ。」
「お疲れさん」
クレアはインダレーナ州知事の座る2人掛けソファの空いているスペースに座る。
この2人の間の子供は3人。ルーカスの弟アンドリューと同じ8歳の女の子とルーカスの妹クラリッサと同じ6歳の男の子、3歳の男の子。
ルーカス達が泊まった翌日の夜である今日は、久しぶりに会った従兄のお兄さんであるルーカスや彼の友達に遊んでもらって、もっと一緒に過ごしたかった、もっと遊びたかったと思い出話に花を咲かせて興奮してなかなか寝付けないでいた。
子供達にとってルーカス達は、物知りで頼りになる年上の大人。同じ歳の弟妹がいるルーカスも一行も子供は嫌いじゃない。セレーナは、言葉の壁もあり子供達にどう接したら良いのか戸惑っている部分があったが、そこは他のメンバーがカバーしていた。
8歳の娘にとってルーカスは憧れのお兄さん。会話を続ける為にあれもこれも話しかけて、此処ぞとばかりにスキンシップも測る。ルーカスも優しく対応するから、幼いレディはますます夢中になる。
6歳の息子は久しぶりに会った従兄のお兄ちゃんと男同士でゲームやおもちゃで遊びたかったようだが、自分の姉が従兄から離れないから少し不満気になりながらも、一緒にゲームなどで遊んでくれるフェルナンドお兄ちゃんや物知りなトレバーお兄さんに色々と教えてもらいそれなりに楽しい時間を過ごせたようだ。
3歳のチビちゃん(息子)は自分よりずっと背の高いイヴァンお兄さんに肩車してもらったりナディアお姉さんに絵本を読んでもらったり、おもちゃを使いおままごとをして楽しんだもよう。
クレアが実家である王宮に帰るたびにシルビアとも会っているので、普段この自宅ではペット(シルビアはペットでは無いが)を飼っていないのでシルビアに会えたのも嬉しかったようだ。
シルビアは子供達の前ではイヌの振りをして接している。子供達が多少しつこい構い方や子供なりの乱暴な扱いをしてもおおらかに相手をして、子供達がやり過ぎるとたまにウー!とかワン!と一声で黙らせていた。懲りない子供達はそれでもシルビアを構い倒してたけど。
何にしても普段は会えない年上の人達と過ごせて良い時間を過ごせたようで、子供達の良い思い出が出来たようだ。
そんな感じでルーカスたちに遊んでもらった思い出を振り返りながら話す子供たちがなかなか寝付かずにいた事を知事に話すクレア。
*○*○*
話題を変えて、今朝のルーカス達の変装姿を思い出し中々いい仕事をしたんじゃないかと自画自賛するクレアに知事は、
「あとは彼らが変装時にどれだけその役に成り切れるかだな。うっかり本名や役職など言わなきゃいいが。」
「そうねー。」
「ルーカスが心配か?」
「うーん、シルビーが一緒だから大丈夫とは思うけど。トリス兄さんが色々と動いてる様だし、帝国から来た子達と行動しながらルーちゃんが彼らを何処まで守ってあげられるかよね。」
「だな。
俺たちにはトリスタン義兄さんが帝国の皇族に持ち込んだ話を3人で無法地帯を通って伝えに来たと言ってたけど、それだけじゃないだろうしな。」
「1人、気になる子がいるの。」
「誰?」
「セレーナちゃんって言ったかしら?黒髪の長い子。あの子、わたし達とは何も話さなかったじゃない?」
「セニート語が分からないだけじゃ無いのか?」
「わたし、幾つかあの子にアナスタシオ語で質問してみたの。王国に来てどう?ルーちゃん達は優しく接してくれてるかしら?帝国は今どんな感じ?あなたが王国への密告に選ばれたのはなぜ?ってね。」
「おいおい、最後は随分と突っ込んだ質問したな。」
「情報は盗むものでしょう?」
私の言いたいことが分かるわよね?の視線を知事に向けるクレアに知事は、
「で、返答はどうだったんだ?」
「もう1人の女の子がすごい剣幕で答えたわ。王国は豊かですね。王子様方にはとても良くして下さってます。帝国は疲弊していて大変です。彼女はとても優秀な魔法師なので選ばれました。ってね。」
「セレーナって子は母国語でも一言も話さなかったのか?」
「ええ、何も。変装の説明をナディアって子がアナスタシオ語でしていたし返答もしてたから母国語は理解出来るし喋ることも出来るはずだけどね。それに少し離れた場所からシルビーに睨まれちゃったわ。」
「シルビアが?どうして?」
「余計な詮索はするな。って言ってるみたいだったわ。」
「そうか。まぁ、どんな事情が隠されてたとしても俺たちが出来るのは彼らを見守る事。頼ってきた時に手助けしてやる事。なんじゃないか?」
「そうねー。ルーちゃん真面目で優しいから色々と背負わないといいけど。」
「ルーカスが旅に集中出来るように俺たちもやれる事をしよう。」
「そうね、トリス兄さんの動きの情報にもっとアンテナを伸ばしてリコ兄さんとの連携も必要になってくるかしら。」
「俺のことも頼ってくれるといいのだが?」
「あら、一番頼りにしてるわよ、もちろん。」
会話が途切れたところで、互いにグラスを置いて、夫婦の深い時間へと夜は更けてゆくのだった。
お読みいただきありがとうございます。
今回は、インダレーナ州知事とルーカスの叔母クレアのひと時のお話でした。
次回は、アン・グラール城塞に棲む方々のお話です。
よろしくお願いします。




