第10話 <ミリーネポール州 東町でのやり取り>
獣人国の住人に関してのお話です。
一部、暴力的な表現が含まれています。
ミリーネポール州の東町にある冒険者ギルドのギルドマスターの部屋で義伯父さんの手紙を渡す。
(獣人国での過ごし方や心得などを教えたってちょう、くれぐれも頼むわ。)と書いてあり手紙を読み終えたギルドマスターは顔を上げる。
その昔、州知事や知事夫人の護衛として付き従いトラヒト族との間にあった出来事を側で見ていた経験を持つギルドマスターは、認識阻害の魔法を解いたルーカスの顔を見て我が国の王子と分かり気を引き締め尚且つ手紙を読んであの夫人の字で(可愛い甥っ子の為に)と書かれていたので内心ビクビクしながら獣人国での注意事項や心得などを伝授していく。
「承知致しました。まず、ルーカス王子様は獣人国や獣人族のことをどのくらいご存知ですかな。」
L「王子はいらない。」
T「各種族の町があって、イヌヒト族の町に隣接している森の奥地に風柱様がいらっしゃる事、あとは各種族の軽い特長くらいです。」
「承知しました。ではまず獣人族は我々 人間と同じように二足歩行をし、見た目は魔力量により各 獣寄りと人間寄りに別れます。魔力量が少なければ獣の顔で毛深く魔力量が多いと人間寄りの顔付きで獣の特徴である耳や尻尾が生えている感じですな。
ご存知の通り、30年ほど前に前国王様の代で互いの鎖国状態を緩和し交流を持つようになりました。文明的には我々人間の中世と言われていた頃の暮らしをしています。
なので、興味本位で入国する者は違いのギャップに直ぐに帰国してきます。獣人国からミリーネポール州まで来た獣人達も同じです。
なので車での移動は出来ませんし、電子機器は電波も無いのであまり使い物にならないでしょう。
宿泊所に関してですが、宿泊施設は有りませんので
①各種族の里にある冒険者ギルドの簡易 休憩所を使う。それ程 広く無いスペースで寝台は無いので雑魚寝になります。
②各里の中心部から離れた山や森の中にあるエリアで休む形となります。ご体験 頂いてるかと思われますが、テントを張り寝袋で就寝となりますな。
移動の仕方に関してですが、道は街中以外は舗装されていません。車も鉄道も自転車さえも有りません。徒歩もしくは、トラヒト族が経営するトラ車と呼ばれるトラが率いる車をご利用されるのが便が良いでしょう。
ただしクマヒト族の里では使えません。そちらではクマヒト族が経営するクマ力車をご利用されると良いでしょう。
食事に関してですが、種族により異なります。ご体験されるのも宜しいですし、ここミリーネポール州 東町で滞在される日数分を購入されるか食材を購入されてエリアで自炊されるのも良いかと。
あと、通貨は獣人国内で各種族共通の通貨が有りますがセニート王国の通貨のフィラも使えます。それと、記録を残すのにカメラなどの機材を使われても構いませんが、獣人族にとっては未知の物ですし何をされているのか理解はしていないでしょうな。渡すと壊れて帰る事もあるやも知れません。お気を付けなさいませ。」
説明を受けながら各種族の里の街並みや主に食べられている食事、トラ車、クマ力車などの絵が描かれているスケッチブックを見せてもらう。
「先程も申しましたが、彼らの暮らしぶりは中世で止まっています。
色々とご不便に感じる事が有るかと思われますが、ギルドや食事処などで交流した場合、彼等なりに出来る精一杯のおもてなしです。ご不満に感じましてもお顔や態度に出さぬ様、また提供された物は極力 受け入れる様にお願いします。」
L「分かった、善処しよう。」
ルーカスの言葉に一同も頷き、ギルドマスターも頷く。続いてギルドマスターは、
「何かご質問などは有りますかな?」
と聞かれたので確認していく。
L「魔力量により見た目が獣寄りと人間寄りに別れるのは分かった。他に特徴はあるか?」
「そうですね、身長は種族にもよりますが、小さいとウサギヒト族の100センチ程から大きいとトラヒト族やクマヒト族の2メートル超えもいます。体格も種族により華奢な者から体格の良い者、稀に種族に似合わず華奢だったり体格よかったりもしますが。」
F「獣人族の寿命ってどのくらい?」
「こちらも種族によって異なりますがだいたい50年から80年ほどで寿命を迎えるようです。亜人族で有るトロール族なんかは200年前後、エルフ族は600年から800年ほど生きると聞いています。」
T「出現モンスターの扱う武器や使う魔法、他に特徴などは有りますか?あと、売物の武器などはどんな物を扱いますか?」
「出会すモンスターは山や森、平地でもよく見かける物が多く奥地に行かなければランキングも低い物が多いでしょうな。
商品で扱う武器や防具などに関してはそこそこ良い物も有ります。が、付与してあるものが弱かったり、ドワーフ族が作った物に比べますと丈夫さも欠けるでしょうな。
魔法に関してはトロール族以外の獣人族やトリヒト族やエルフ族はあまり得意ではない様で、使えても生活魔法の一部や各属性の初級程度ですな。但し、身体能力は我々人間よりずっと良く種族によっては力の差も大いに有りますな。
他に、質問は有りますかな?」
聞かれて直ぐには思いつかない一同を見てギルドマスターは、
「少し亜人族や獣人族とセニート王国の人々との歴史なんかを話させて頂いても宜しいですかな?」
頷くルーカス達を見て老齢に差し掛かったギルドマスターは話出す。
「中央大陸大戦以降、同じ大陸の中で今の人族、つまり我々 人間と獣人族、亜人族、巨人族とで住む地域が別れたのは学園やギルドなどで学ばれた歴史通りですな。それ以前は人間以外の種族は何処に住処を持っていたか分かりますかな?」
F「えっ、山とか森?あと人間が住んでいなかった地域の平地とか?」
「良くご存知ですな。」
F「えへへ」
「野生動物を狩猟しながら移動し暮らしていた人間が、変わらず狩猟を営み移動する者、稲作や畑を耕し家畜を飼う様になる者、長い年月を掛けて人間にとって住みやすくより便利にと考え住処を広げて行きました。
そうしているうちに別の種族に出逢ってしまったのです。初めは自分達 人間との見た目の違いから得体の知れない生き物は怖いと思い遠ざけ逃げていましたが、次第に彼等の住む地域で採れる植物や鉱物など欲しさに侵入する様になり、巨人族には身体の大きさや顔などの造形が醜いと感じたのでしょうな、虐殺する様に。
ドワーフ族には見た目の違いは人間とさほど変わらないですがご存知の通り手先の器用さから武器や防具などを作らせ奴隷の様に扱うように。
他の亜人族であるエルフ族、トリヒト族は見目の良さから愛玩具やアクセサリーの代わり、又は性奴隷の対象に。
他の獣人族も種族にもよりますが、労働力や性の対象など人間にとっての都合の良い奴隷にして虐げてきました。
同じ人間同士でも肌の色などいわゆる見目の違いで差別や奴隷の対象とし虐げ、時には虐殺もしてましたな。
他にも領地や食材、食料などの奪い合いなどでこの中央大陸はもちろん世界中で戦争を繰り返し味方以外は全て敵か虐げる者とし人間以外の種族や動物、植物の居場所を奪って生きてきました。
今でも地域ごとの境界線や海の領域、又は木や森を削っては建物や家具、土を掘り起こしては、火力や電力などの燃料に利用し他の動物などの生態系や自然の摂理などを考えもせず、自分達の豊かさや便利さの為に壊す。
直接は関わってはいなくても恩恵に預かっている者は世界中にいる。いやはや、人間とは本当に醜い生き物ですな。」
一息付き周りを見たギルドマスターはルーカス達が顔を下げてしまっていることに気付き、
「いやぁ、歳をとると説教くさくなっていけませんな。兎に角、そんな歴史をたどり長い間、鎖国状態だったのを先代様方が翻弄されて少しずつ交流を持つ様になり今に至りますな。
ですので獣人族など他の種族の歴史や暮らしぶりを体験し、ご自分達の恵まれた環境や課題となっている物を考え感じてほしいと思いますな。」
シワの刻まれた顔で少し苦笑いも含まれた微笑みを浮かべるギルドマスターに頷くルーカス達なのだった。
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次回は、帝国にいるイヴァンとナディアの父ニコライによる帝国の状況についてのお話になります。




