幕間1-2 <ドワーフ王と王妃の会話>
今回は、ドワーフ族王と王妃、ルーカスの祖父母であるアルバロとザフィーラの昔話です。
中央大陸大戦後から数百年、国交断絶 状態だったドワーフ族と人族。
だが、ここ数十年で少しずつ人族との交流を持ち出した。
セニート王国の前王妃ザフィーラは若かりし頃、このエルサーラ州内を自宅の庭の様に駆け巡っていた。
エルサーラ州知事令嬢で、陽気で肝の据わっているザフィーラは自然界のあらゆる動物達と友達になり共も付けずに遠出をしたり、モンスターをテイムしたりと中々なアレなお嬢様だった。
新しいもの、珍しいものも好きでよく環境保護地区内やドワーフ王国との国境にも足を運んでいた。
まだ国交断絶の最中な時代の人族とドワーフ族。
ある日、テイムしたモンスターに跨りこっそりドワーフ王国へ入国したザフィーラ。
ドワーフ族の暮らしを観察しつつテイムしたモンスターと戯れていると、近くにあるドワーフ族の別荘に来たドワーフ族王族の警護隊に見つかり言葉が通じ合わなく捕らわれてしまい別荘まで連れてこられたザフィーラ。
外が騒がしく何事かと思い別荘の館から出てきた身なりの良いドワーフ族の女性が警護隊に訪ねる。
「何事です?」
「はっ、お騒がせして申し訳有りません。近くの山を警備していた所、この人族がモンスターと共に山に侵入していまして言葉が通じず時間がかかると思い事情聴取の為に此方へ連れて参った次第。」
女性は、怯えた様子も不貞腐れた様子も見せない人族の娘とドワーフ族の今いる警備隊員の人数では捉えるのが困難だろうAランクのモンスターが大人しくしている様子見て、
「そう、話がしてみたいわ。その娘をテラス席まで連れてらっしゃい。」
物腰が柔らかな貴婦人の言葉のあと、テラスに案内されて席に座ったドワーフ族の女性とザフィーラ。
周りをぐるっとドワーフ族の警備隊に囲まれて少し離れた場所にテイムしたモンスターと警戒する警備隊、反対側の少し離れた場所に侍女らしきドワーフ族の女性がいる。
向かいの席に座る歳を重ねた貴婦人が
「物々しくてごめんなさいね、少しお話を聞かせて頂けるかしら?」
とセニート語で話掛けてきた。
ザフィーラが頷くと
「あなた、人族よね?なぜあの山にモンスターと一緒に居たのかしら?」
ザフィーラは、自分がドワーフ王国との国境を隔てたエルサーラ州に住む人族で森にいた理由と一緒に行動しているモンスターは自分がテイムしているから手荒に扱わないで欲しいことを説明した。
話終えた頃、テーブルに数羽の小鳥が降り立ち女性に向かって何かピチピチと話している。
頷いた貴婦人は
「そう。教えてくれてありがとう、小鳥達。」
と言ってから侍女に目配せをして侍女が小鳥に餌に当たるパン屑をテーブルに少し置いた。
小鳥が突くのを見ながら貴婦人は
「時折りあの山に足を運んでテイムしたモンスターや山のお友達とおしゃべりをしたり戯れているそうね。小鳥たちが教えてくれたわ。」
そこから話が進み、お互いに人族の話、ドワーフ族の話、地域の特性や暮らしぶりなどを話した。
日が傾きかけた頃、
「わたし、三月に一度、最初の土の日にこの別荘で過ごすの。旦那様が一緒の時もあるわ。人族のお嬢さん、あなたとのおしゃべり楽しかったわ。よかったらまたそちらのモンスターと一緒にここにいらっしゃいな。警備隊には話しておくわね。」
と言われて解放してもらった。
ザフィーラもドワーフ族の貴婦人との会話は楽しかったので、交流を持つ様になった。
数年が経ち、ザフィーラはアルバロと一緒に貴婦人の別荘へと足を運び、アルバロを紹介して婚約した旨を伝える。
その場には貴婦人の旦那様も一緒にいて、お互いの自己紹介を改めてして互いの立ち位置を初めて知ることになる。
如何にも好々爺なドワーフ王国の王と小鳥と会話が出来る貴婦人な王妃。
中央大陸の未来を担う若き王子と婚約者となったドワーフ王国のお隣エルサーラ州の州知事令嬢。
やがて国王と王妃になったアルバロとザフィーラは人族以外の種族とも国交を結ぶべきと奔走し実現させた。
生真面目で先を見据えた物の考え方をするアルバロと好奇心旺盛で肝が据わっているザフィーラ。
そんな前国王と前王妃の孫であるルーカスと先日顔を合わせたドワーフ王と王妃はルーカスに会った印象と昔話に花を咲かせる。
「あの可愛らしい顔立ちの次代の若者は、瞳はザフィーに似てるけど、顔立ちや性格はアルバロに近いわね。」
「短いやり取りやっちゃけど、言葉の使い方や対応力もアルバロ似ちゃね。」
「一緒にいた黒犬と白鳩はテイムした子達かしら」
「そうやったとしたらザフィーの側に寄り添ってたライオンのモンスターと同じで動物やモンスターとも心を通わせられる優しく頼もしい次代とね。」
(王さま達って眷属さま達に会ったこと無いのかしら)
(動物でもモンスターでも無い眷属さま特有のオーラが滲み出てたから私たちじゃとても近くには寄れない存在よね)
(しょうがないよ。見た目は動物だし。)
などと、少し離れた木陰では小鳥達がピチピチとおしゃべりをしている。
王さま達は外交官長から聞いた温室や加工工場見学での話や件のオーク族の話をしている。
三十年ほど前に外交をしだし少しずつお互いの国に行き来し出したドワーフ族と人族。
身長の差はあれど見た目が大きく変わらないので、ドワーフ族と人族の間での大きなトラブルは聞かない。
魔力量によっては見た目を人族に近付けられる魔法が使える巨人族もいるが、人族より身体が大きく普通は全く違う見た目をしていて場合によってはモンスターにも見間違い兼ねない巨人族。
いつも陽気で人懐っこいザフィーラだが、その昔 話ていたことがあった。
「人族ってね、見た目の違いや少し個性の強い性格の子と相手をすると自分とは合わないと決めて相手の存在を遠ざけたりするの。一緒に居てくれる人達ももちろんいるけど、意地悪をしたり酷いと存在否定する人もいるわ。そういった差別的なことが身近で起こると悲しくなるし人付き合いの難しさを感じるわ。」
「そうね、意地悪をしたり存在否定することはもちろんダメな事だけど、仲良くしたいって思う存在って自分に近い見た目だったり性格だったり趣味だったり、そういった自分との共通点を探してたりしないかしら?逆に相違点が目立ったりしたら相手を怖く感じるのかもしれないわね。」
「怖い?」
「見た目の違いも性格の違いも趣味の違いも自分には無い未知の存在だわ。それでも相手と仲良くしようと出来る子は相手との相違点をも尊重出来るいい子だと思うし、意地悪をしたり否定的な態度に出る子は相手を怖い存在と思い軽視的な考えの持ち主だと思うわ。
ザフィー、相手との立ち位置にもよるけれど言葉や態度って自分に跳ね返ってくるの。肯定的なことは肯定的に、否定的なことは否定的に。あなたはどちらが跳ね返ってきたら嬉しい?」
「肯定的」
「損をしてしまう場合も有るけれど、相手に優しく出来たら自分にも優しくなれるわ。それでも相手が意地悪な場合は、心の中で、[硬いところで脛でも打って悶絶してしまえ。]とでも思っていれば良いのよ。」
「ふふふっ、分かった。」
そんな会話のやり取りを思い返していた王妃は、オーク族の件に心を痛めていた。
同族同士の交流でも少しの違いで付き合いが難しいとザフィーは言っていた。種族が違えばもっと難しい部分があるのだろう。
それでも世界は広い。
巨人族領で生きづらさを感じたオーク族は人族の世界に飛び込んだ。排他的な人族もいただろうが交流を持つ人族もいただろう。
同じような境遇とはいえ一緒に過ごす仲間もいたのだし、また別の場所にでも行き別の相手に少しだけ勇気を出して他者との交流をもう一度 試してほしいと思うのは驕りだろうか。
と考え込む王妃に
「王妃よ、眉間にシワが寄っとうとね。」
と言いながら自分の眉間を指で押さえるドワーフ王。
「そうね。どんな種族でも立場でも、孤独を感じることはあってもそれに囚われてはほしく無いわね。」
「合わない相手との交流は疲れるだけっちゃけど、孤独は自分をも見失いかねんたいね。」
「たくさんじゃ無くていいのよ。ただ分かち合える相手は見つけた方が良いわ。立ち止まって待っているだけではダメよ。自分で探しに行かなきゃ。」
「さすが我ての王妃ちゃね。」
かつて深窓の令嬢だった王妃だが、女性が社会に出て働くことが珍しかった時代にいち早く手に職をつけて社会進出をした行動派でもあった。
当時は色々と言われた事もあり、萎縮してしまいノイローゼやうつ病になったり酷いと自殺を考えたりする事もあった王妃。
孤独に蝕まれたときに側に寄り添ってくれた存在を思い出すことができ、その際に少しの勇気を出してもう一度、頑張ろうと一歩踏み出すことが出来たので今がある。
そんな自分がしんどい時に寄り添ってくれた相手や自分が幸せに感じた出来事に感謝し、孤独から立ち上がる勇気が大切だと思う王妃だった。
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