俺とヤンデレと枢機卿11
ドゥーンとしての記憶をたどると、聖都に近い町だと思い出す。
「ジャスミン、遊ぶのは後だ。クレイエル教会に行くよ」
「わかってますよ! ドゥーンさま、こっちです」
はしゃぐ様子は年相応の女の子にも見える。
その手に、ナイフを隠したヌイグルミを持ってさえしなければ可愛く見えるかもしれない。見た目だけは。
先導するジャスミンの後に、俺、ラウラと続く。
慣れたエリカレスの町を歩くジャスミンは生き生きとしていた。
「正面に見えているのがクレイエル教会の大聖堂です。その裏に孤児院があって、私はそこで育ちました」
クレイエル教会の大聖堂は、学校の体育館くらいありそうな建物だった。
俺の町の教会よりもずっと大きい。
エリカレスの町自体も大きいが聖教会の信仰が、だ。
聖教会の神への信仰が大きいことが、町の様子を見ただけでわかる。
ドゥーンとしての記憶では、元々この世界は聖教会を含むキリスト教に似た宗教が主だったはずだ。
俺……ドゥーン・アントラットの生まれ育った町には小さな教会しかなかったし、それも聖教会の所属だったので他の信仰を知らない。
「着きましたよー!」
ジャスミンの明るい声が響く。
考え事をしているうちに、クレイエル教会まで来てしまったようだ。
「ジャスミン、あんたたちは礼拝堂の方へ行きな。間もなくロベルタ枢機卿が来られるはずだ」
ラウラが指示する。どうやら、アルメリアもクレイエル教会に向かっているらしい。
――当たり前か。アルメリアは聖教会の枢機卿なのだから。
それに俺たちに話があるといっていた。
列車の貴賓室で話した続き……嫌な予感しかしないが、逃げることも出来ない。
ジャスミンを見れば、待つように礼拝堂の前でたたずんでいる。
俺は腹をくくって礼拝堂のドアを開けた。
重たいドア。軋むような音が辺り響く。




