俺とヤンデレと枢機卿10
仕方なく、言われた通りにジャスミンの様子を見に行くことにする。
アルメリアから渡されたクマのヌイグルミを片手に部屋を出た。
「大丈夫か?」
貴賓室を出て医務室に戻る途中、ジャスミンとラウラの姿を見かけ、声をかける。
どうやら目が覚めて医務室から出てきたところらしい。
「ドゥーンさま、ご迷惑をおかけしました」
頭を下げるジャスミン。
キメラとの戦闘で汚れた服は着替えたようで、修道服から私服になっている。
前世でよく着ていたロリータ服を思わせるレースのブラウスにスカートだった。
「これ、アルメリアから」
押し付けられたクマのヌイグルミを、ジャスミンに手渡す。
ラウラはそれを微妙そうな顔で見ていた。
「アルメリアさまから?」
ヌイグルミを受け取ったジャスミンは、まじまじとクマの顔を覗き込む。
それから逆さまにしたり、下から覗き込んだりしていた。
――何がしたいんだ?
つっこみたいが、黙っている。
下手に刺激してしまったら後が怖い。
ラウラも何も言わず、見守っているので俺もそれに倣った。
しばらくヌイグルミを弄っていたジャスミンだが、何かを見つけたらしい。
「背中にファスナーが……」
首に巻かれたリボンで隠れていたファスナーをジャスミンがゆっくりと下ろす。
ヌイグルミの中から一本のナイフが出てきた。
「うわ……」
俺の口から思わず声が出た。
アルメリアがジャスミンにこのナイフを渡すため、わざわざヌイグルミに入れて俺に押し付けてきた可能性を考え、頭が痛くなる。
もしかして、アルメリアは俺たちと前世で関係があった人物なのかもしれない。
そうでもなければ、こんなに深く関わってこない気がする。
……気のせいかもしれないが。
「ほら、到着したよ」
ジャスミンの行動を無視してラウラが口を開く。
列車は町の中にある駅舎に入ったようだ。
町の中にある駅舎だけあり、先程の駅とは作りが全然違う。
この駅はちゃんとした駅のようだ。
「降りましょう、ドゥーンさま。ラウラとクレイエル教会までご案内します」
ジャスミンはいつの間にかにナイフをヌイグルミに戻し、俺の手を引いてくる。
振り払いたかったが、機嫌を損ねるのも怖い。
ラウラを見れば、小さくため息を吐いて首を振っていた。やれやれ、というように。
「このエリカレスの町は私が育った町なので案内しますよー」
クレイエル教会のある町はエリカレスと言うらしい。




