俺とヤンデレと枢機卿9
アルメリアの言いたいことはわかった。
納得できない部分も多いが、それでも転生先で何もせずに殺されるよりはマシだと思う。
茉莉花に目をつけられた時点で、きっと俺の運命は決まっていたのだ。
選択肢はない。だからこそ、あえて自分でこの道を進むことを選ぶように仕向けられた。
その事に気づいたのはアルメリアがコーヒーを淹れだした頃だ。
ゴリゴリと音がして、何事かと様子を見ると手製のミルで焙煎したコーヒーを挽いている。
「なんだ、お前も飲むか?」
アルメリアは慣れた手付きでミルからコーヒーの粉を取りだし、布製のフィルターを使いネルドリップでコーヒーを抽出していた。
どうやら、コーヒーの器具は全て彼女のお手製らしい。
「返事がないから淹れてやったぞ」
木製のカップに注がれたコーヒーから湯気が立ち上る。
ふわりと漂う薫りは、俺の知っているコーヒーとは違った。
「ミルクと砂糖が必要か? 悪いが砂糖は高級品だからないぞ。ミルクはヤギの乳があるが……」
そう言いながらアルメリアはブラックコーヒーに口をつける。
どうやら、コーヒーは彼女の好物らしい。
缶コーヒー位しか飲んだことのない俺は戸惑いつつも、ブラックコーヒーの入ったカップを傾ける。
暗褐色の液体を恐る恐る飲み込む。
口の中に苦味と酸味、そしてコーヒー特有の薫りが広がった。
「美味い……」
苦味は不快なほどでなく、スッキリとした酸味が口当たりをまろやかにしている。
アルメリアの拘りが窺えた。
彼女はコーヒーを飲みながら書類に目を通している。
恐らく、生前もそうやって仕事をしてきたんだろう。
「飲み終わったか? そろそろジャスミンも起きてくるだろう。戻ってやれ」
視線は書類に落としたままのアルメリアが声をかけてきた。
そういえば、列車に乗ってから結構時間がたっている。
「もう間もなくクレイエル教会のある町に着く。詳しい話はジャスミンも交えてクレイエル教会で話そう」
それだけ言うとアルメリアは書類に意識を集中させた。




