俺とヤンデレと枢機卿3
だが、ジャスミンは俺を飛び越え、その先にいた獣の群れへ突っ込んでいく。
「あれは、合成獣か?」
ライオンの頭と山羊の体、毒蛇の尻尾。ゲームに出てくるキメラにそっくりの魔獣だった。
咆哮――それは相手への威嚇。
しかし、ジャスミンのナイフに尾を切り落とされ、悲鳴のようにも聞こえる。
「ほう……流石は聖女だな」
キメラ達の間を縫う様に駆け巡り、その尾を悉く切断していくジャスミンを見て、アルメリアが呟く。
いやいやいや。全然、聖女っぽくないし。
むしろ、暗殺者だろ。あの戦い方は!
俺が心の中で突っ込みを入れている間に、ジャスミンはキメラ達の尾を切り終えたようだ。
その間、約30秒。俺の中の恐怖が別の恐怖で上書きされた瞬間だった。
「ナイフの切れ味が落ちてきてる……」
ぼそりと呟いたジャスミンの声が耳に入る。
どうやら、キメラの首を落とそうとしたようだが、上手く切断できなかったようだ。
切りつけられたキメラは首の辺りから血飛沫を吹き出している。
「マズイね、昨日の翼竜との戦いでナイフもかなり傷んでいたようだし、このまま武器が使えなくなったら流石のジャスミンでも……」
黙って様子を見ていたラウラが焦りを見せる。
ジャスミンはキメラ達の攻撃を避けながら、先程と反対側から首を切りつけ、力任せに切断した。
紫色の血が吹き出し、ジャスミンの修道服を汚す。
彼女は肩で息をしながら、ナイフについた血を振り払った。
息を切らしているジャスミン。
その様子を見て、傍観していたアルメリアが動いた。
「助太刀してやるか」
呟いたアルメリア。一歩、また一歩とジャスミンたちに近付いていく。
キメラ達の攻撃範囲にギリギリ入らない辺りで立ち止まり、胸の前で両手を組む。
祈るような動作だった。
「主よ、弱き者を救いたまえ」
祈りを唱えるアルメリアが光に包まれる。




