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第二章 王立魔導学園編 4

空気が凍った。


周囲の学生たちが息を呑む。

誰もが聞きたかったこと。

だが

誰も正面から口にできなかった言葉。

それをクロードは、躊躇なく言い切った。


レインは静かに彼を見る。

黒髪

鋭い眼光

隙のない立ち姿


  強い。


直感で分かる。

今まで会った学生とは格が違う。

リアが眉をひそめた。


「いきなり喧嘩売るのかよ」


クロードは視線を逸らさない。


「深淵門を閉じた?」


「本当なら英雄だ」


低い声。

だがそこに敬意はない。


「けどな」


クロードの瞳が細くなる。


「深淵に触れて、無事でいられる人間なんて存在しない」


その言葉に、周囲が静まり返る。

レイン自身も、反論できなかった。

事実だからだ。


身体は変わっている。

記憶も失った。

感情も薄れている。

人間じゃない。

そう言われても、否定する資格があるのか分からない。


その時。

セレナが前へ出た。


「レインは人間だよ!」


震える声。

でも。

必死だった。

クロードは彼女を見る。


「だった?」


セレナの表情が固まる。

クロードは静かに続ける。


「今も、か?」


その一言が、鋭く突き刺さった。

レインの胸が軋む。

自分でも分からない問い。


“今も人間なのか”


答えられない。

 

 ー沈黙ー


その時

クロードがゆっくり剣へ手をかけた。

周囲がざわつく。


「おい……」


「まさか」


ミシェルが目を細める。


「試す気か」


クロードは否定しない。


「深淵に侵された存在を、学園へ入れるわけにはいかない」


金色の瞳が鋭く光る。


「もし暴走したら、ここにいる全員が死ぬ」


正論だった。

だからこそ厄介だ。

リアが舌打ちする。


「融通効かねぇ野郎」


だが

レインは静かだった。

むしろ

クロードの言葉へ、妙に納得してしまっている。


その時

灰の竜が低く呟く。


『――否定しないのか。』


レインは心の中で返す。


  (……分からないからな)


『――……。』


竜は珍しく黙った。


その瞬間

クロードの魔力が膨れ上がる。

空気が震える。

周囲の学生たちが息を呑んだ。


「第三位階……!」


「学生の魔力じゃない……!」


レインの瞳が僅かに細まる。


  強い。

  本当に。


もし今戦えば、街が吹き飛ぶ。


その時。学園長が一歩前へ出た。

静かに。

本当に静かに。

だが。


その瞬間、クロードの魔力が止まった。

まるで見えない壁へぶつかったみたいに。

学園長は穏やかに言う。


「クロード」


それだけ。

なのに。

広場の温度が下がった気がした。

クロードは僅かに眉をひそめる。


「……学園長」


「剣を収めなさい」


「ですが」


「命令です」


静かな声。

逆らうことを許さない響き。


ー数秒の沈黙ー


やがて

クロードは舌打ちし、剣から手を離した。

周囲が安堵する。

だが

クロードの視線だけは、まだレインへ向けられていた。


「覚えておけ」


低い声。


「もしお前が暴走したら、俺が殺す」


  殺気

  本気だった。

  冗談じゃない。

  本当に。


必要なら殺すつもりだ。

だが

レインは不思議と怒りを感じなかった。

むしろ

その覚悟が少し羨ましかった。

自分にはもう、そこまで真っ直ぐな感情が薄れている。


クロードは踵を返す。

だが

去り際

小さく呟いた。


「……なんで生きてる」


その声だけは

怒りではなく。

どこか、怯えに近かった。

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