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第二章 王立魔導学園編 5

クロードが去ったあとも

広場には重い沈黙が残っていた。

学生たちは距離を取りながら、ひそひそと話している。


「怖……」


「でも深淵門を閉じたんだろ?」


「英雄なのか怪物なのか分かんない……」


その言葉が耳へ入る。

レインは無表情のまま立っていた。

傷ついているのかすら、自分で分からない。

セレナが悔しそうに俯く。


「……ごめん」


レインが視線を向ける。


「なんで謝る」


「だって……」


セレナは唇を噛む。


「私、何もできなかった」


その言葉に、レインの胸が僅かに痛んだ。

何か

大事な感覚が揺れる。

だが

うまく掴めない。

レインは少し迷ってから言った。


「……そんなことない」


セレナが顔を上げる。

レイン自身、なぜそんな言葉が出たのか分からない。

でも

彼女が泣いているのは嫌だった。

それだけは、まだちゃんと分かる。


その時

フィアナがぱっと顔を明るくした。


「そうですよ!」


彼女は勢いよくセレナへ近づく。


「さっきだって、あなたが叫んだから先輩戻ってきた感じでしたし!」


「……え?」


セレナが目を瞬かせる。

フィアナは真剣な顔で頷いた。


「私、見てましたけど、あの時の先輩めちゃくちゃ危なかったですよね?」


リアが腕を組みながら言う。


「まぁな」


ミシェルも静かに同意する。


「あれはほぼ暴走寸前だった」


セレナの顔色が変わる。


「……そんな」


レインは黙っていた。

正直

よく覚えていない。

戦っていた時の記憶が、ところどころ曖昧だ。

ただ

確かに


“声”が聞こえた気がする。

泣きそうな声。

帰ってきて、と言う声。


その瞬間

頭の奥で、何かが揺れた。


  焚き火。

  夜空。

  笑う少女。


  『ちゃんと帰ってきてね』


ー激痛ー


「っ……!」


レインが額を押さえる。

灰炎が僅かに漏れた。

周囲の空気が震える。

セレナが慌てて近づく。


「レイン!?」


レインは荒い息を吐く。


  記憶が

  戻りかけている。


でも

同時に、頭が壊れそうに痛い。


学園長が静かにレインの肩へ手を置いた。

銀色の魔力が流れ込む。

痛みが少し和らぐ。


「無理に思い出そうとしてはいけません」


レインは息を整えながら聞く。


「……戻るのか」


学園長は少しだけ黙った。

そして


「戻る可能性はあります」


歯切れが悪い。

レインはそれを察した。


  完全には戻らない。


たぶん。

そういうことだ。


その時。

学園長の後ろから、数人の教師が現れた。


黒ローブ姿の男。

筋骨隆々の大男。

眠そうな目の女性。

全員、ただ者じゃない。


その中の黒ローブの男が、レインを見るなり眉をひそめた。


「……本当に連れてきたのか」


学園長は淡々と答える。


「必要ですから」


男は険しい顔をする。


「危険すぎる」


「だからこそ、ここで管理します」


<管理>

その言葉に、レインの胸が僅かに冷えた。

まるで

人ではなく、危険物扱いだ。


だが

否定できない。

その時

眠そうな女性教師が、レインをじーっと見つめたあと。

ぽつりと言った。


「……かわいい」


場が止まった。

リアが吹き出す。


「おい」


黒ローブの男が頭を抱える。


「お前はまず緊張感を持て」


女性教師は真顔だった。


「でも弱ってる大型犬っぽい」


「例えが最悪だな!?」


フィアナが笑い出す。

セレナも、少しだけ笑ってしまった。

その笑顔を見て。


レインの胸が、また少しだけ痛んだ。

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