表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/33

第一章 灰の契約 18

『――……すまない。』


その言葉を最後に。

灰の竜の気配が遠のいた。

レインの意識は沈んでいく。


空。

星。

冷たい風。


全部がぼやけていた。

身体が重い。

何も考えられない。


ただ。

妙に静かだった。


その時。

誰かが自分の名前を呼んでいる気がした。


「レイン!!」


  ……誰だ?


必死な声。

泣いている。

胸が少し痛む。


  大切な人、だった気がする。


でも。


  思い出せない。


レインはぼんやり空を見上げる。

星が綺麗だった。


その瞬間。

地面へ激突する寸前だった身体が、ふわりと止まる。

銀色の光。

優しい魔力。

誰かが受け止めた。


「間に合いましたか」


女の声だった。

静かで、どこか悲しげな声。

レインは薄く目を開ける。


銀髪。

蒼い瞳。

白銀のローブ。

知らない女性。


  ……本当に?


胸の奥が、微かにざわつく。

女性はレインを抱えたまま、静かに彼を見つめていた。

その目は。

あまりにも苦しそうだった。


「また……」


彼女は小さく呟く。


「あなたは、そうやって……」


言葉が途切れる。

まるで、続きが言えないみたいに。

レインは掠れた声を出す。


「……だれ」


女性の瞳が揺れた。

ほんの一瞬。

泣きそうに。

だが彼女は微笑む。


「今は、学園長と呼んでください」


その時。

下からセレナが駆け寄ってきた。


「レイン!!」


彼女は泣きながら、レインへ抱きつこうとして。

止まった。

レインの右腕を見て。


灰色の鱗。

竜の爪。

人間ではない腕。


セレナの顔が強張る。

レインはその視線を見て、ゆっくり自分の腕を見下ろした。


  ……誰の腕だ。


一瞬。

そんな感覚が走る。

自分のものじゃないみたいだった。


その時。

頭の奥に、小さな違和感が広がる。


  何かが欠けている。

  大切な。


でも。


  何が欠けたのか、分からない。


セレナが震える声で言った。


「レイン……?」


レインは彼女を見る。

泣いている少女。


  大切な人。

  ……だった気がする。


でも。

胸の奥へ浮かんだのは、奇妙な“空白”だった。

レインは小さく眉をひそめる。


「……ごめん」


セレナの呼吸が止まる。

レインは困ったように続けた。


「どこかで会ったっけ」


世界が静止した。

リアの顔色が変わる。

ミシェルが目を見開く。

そして。

セレナだけが、完全に凍りついていた。


「……え」


小さな声。

信じられない、という顔。

レイン自身も混乱していた。


  どうして。

  この子がこんな顔をするんだ?


  胸が痛い。


でも。


  理由が分からない。


その時。

学園長が静かに目を閉じた。

まるで。

ずっと恐れていたことが、現実になったように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ