第六話 その9 身代わり
そんな考えが頭をよぎってきた。下らない正義感で厄災に突っ込んでしゃしゃり出てしまって、このザマ…
「みんなー!勇者様を!勇者様を助けてよ~!」
「誰かーーー!」
どこからともなく少年の必死な叫びが響いていた。これだけの人数が居ても、状況を理解し事態を打開しようと必死になっているのはあの少年だけか…その間にも振り回され、打ち付けられ、引きずられながら必死になって身の空間を確保するが、確実に限界は近付いてくる。付かず離れず生と死のほんのギリギリの空間を維持しなければ激突でやられるか、引きずり込まれて喰われるか?この状況で耐え凌ぐのはどだい無理な話なのだ。
(ここまでか…)
唯一の救いは少年によって、どうやらちゅん助の安全は確保されたであろう事だった。もし先に彼がやられるような事態になっていたら俺は死んでも死にきれない。ちゅん助なら体力さえ回復すれば、彼一人ならば誰の助けも借りずこの事態を上手くやり過ごす事が出来るはずだ。それだけは、そう思える事だけは死にゆく者として救いであるかの様に感じられた。
(ダメだ!腕が!体が痺れる!引き寄せられる!)
いよいよ腕の感覚が無くなりこれまでか、と思ったその時だった。
「勇者様ッ!今助けに参りますぞ!」
「!?」
突然の加勢の声。その方向に思わず目をやると声の主はガレッタだった。猛然と俺の方へ向かって走って来る。瞬間的に彼の表情から決死の覚悟が読み取れるような気がした。
(イカン!)
そう感じた俺は咄嗟に制止の声を飛ばした。
「ガレッタ隊長!何をするつもりか!」
「下がれ!」
「アンタがやらなくちゃいけないのは周りの奴等と共に態勢を立て直すことだ!」
「俺を助ける事では!」
必死に説得を試みたがガレッタは聞く耳を持たなかった。鬼気迫る表情で青大将に斬りかかる!
「うおおおおお!」
「うわっ!」
大上段の構えから繰り出された渾身の振り下ろしの剣撃は俺を捕らえた青大将の脚を見事に斬り払い、彼の体当たりによって俺は青大将の拘束から逃れることに成功した。
しかし
「勇者様…街を…街を頼みます!ぐわーっ!」
代償はあまりに大きかった!鮮血が雨となって俺の身体に降り注ぐ。
「うう!」
何という事だ…自らを犠牲にして俺を逃すとは…俺の中で二つの想いが交錯した。
一つはあの頼りないガレッタがなんと、自らを犠牲にしてまで俺を救った事。正直、真面目なだけで頼りにならない、使えない男…という印象しかなかったがそんな男が命を賭けて俺を救ったという事実に驚愕した。
最後に俺を見た眼は悲壮感の中でも使命を忘れず、俺に街を託す気高い意志が宿っていた。
あの眼はどこかで見た事がある、そうアリセイで自らを囮にして俺達を逃がそうとしたトニーガ、あの時の彼と同じ眼だった。実力こそ雲泥の差があれ隊長としての矜持を守る、そういう意味では同じだったかもしれない。
街の奴等の情けなさは隊長譲りかもしれない、そんな風に考えていた自らを恥じた。彼もまた自分の責務を果たそうと必死だったのだ。
もう一つは、お前がやるべき事はそこれじゃなかっただろう…そんな思いだ。
彼には申し訳ないがこっちの思いの方がより強かった…
こんばんはちゅん助です。今回もお読み頂き有難うございましたお。
ラノベのイズサンは隊長の犠牲に助けられてますが現実のちゅん助は明日の市場の混乱に備えておりました。やはり筆頭はソニーFGかなお…
であまた次回。




