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錆びた秒針、逆時の梅雨  作者: 夜澄コウ
第六章 想いのパズルをはめて。
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第41話 間章Ⅳ 私の歩む道。

「ユウトくん!!!!」




ユウトくんが……




「ねぇ、返事してよ……呼吸してよ!!」




ユウトくんが……ユウトくんが!!




「誰か!!!!救急車を呼んでください!!」




「誰か!!」




私のせいで死んじゃう!!


そんなのダメ。


一緒に大学へ行くんじゃなかったの??




「これ以上……失いたくないのに……。」




必死に呼びかけた。


心肺蘇生も必死に続けた。


ユウトくんからは返事がない。


人工呼吸も行った。


私の初めてのキスは別れのキスだった。




近くにいた人が救急車を呼んでくれて、小田原の総合病院に運ばれた。




このときもユウトくんにたくさん呼びかけた。


けれど返事がなかった。




ユウトくんは緊急手術室に入っていった。


私はただ外のベンチで待つことしかできなかった。




何時間経っただろう。


緊急手術室の赤い光が暗くなると同時に医者が出てきた。




「ユウトくんは……どうなったんですか!!」




「お連れの方ですか……申し訳ございません。最善は尽くしましたが、救うことができませんでした。」




私の中でなにかがプツンと切れた気がした。




足の力が入らなくなって…ろその場に崩れ込んでしまった。




「ユウトくん……が……あぁ…あ…。」




この日からもうなんでも良くなった。




私の中の全てが消えていった。


今まで嫌に感じていた母にも何も感じなくなってしまった。


食事も飲み物も味がしない。




葬式にもいかなかった。


ユウトくんの姿を見届ける勇気なんてなかった。


そんなことできるはずもなかった。


事故の日から学校にも行けなくなった。




もう私の人生、どうでもよかった。




私の周りから全て、全て消えていった。


家族、希望、恋人、人生全てが。




考えることも嫌になった。




「もういいよ……」




こんなときも母親は私を気遣いなんてするはずもなく、結婚する男性の人と毎日毎日飽きることなく致していた。




もうこれに対してなんにも感じることはなかった。


耳鳴りが酷かったから。




何日経っただろうか……。


もうわかんないな。




「ねぇ、ミユ。相談があるんだけど、」




「……。」




「あのね、私結婚するって言ったでしょ!!その約束には条件があるの。」




「……。」




「少しは返事してちょうだいよ!!あのさ……私と3Pしてくれない……。」




「返事もないの?それはいいってことね。じゃあ明日だから体洗いなさいよ。」




何も感じなかった。


どう返事していいかもわからなかった。


こんな状態なのに、母はあんな感じだから。


しかも実の娘と親子丼……。


人って何考えたらそうなるのかな。




「ミユちゃん、いいよ。膣、気持ちいいよ。初めてだったんだっけ?」




「……。」




「高校生はピチピチでいいね。」




「今度は初めてちょうだいね。」




……何も感じない。


初めては奪われなかった。


けど、何も感じないのか私は。




その後も四六時中、この行為が続いた。


早く過ぎてくれないかなと願うばかりだった。




「もう生きてる意味ないな。私。」




こんなことされて、これからもされるだけの人生なら、もう終わりにしよう。




無理だよ、私にはこの世界が合わなかったんだ。




夕暮れ、綺麗だな。


私もあんなに綺麗になりたかったな。




「ユリ、一輪だけでいいの?」




「……大丈夫です。」




「大丈夫??」




店員さんが少し心配そうに私を見る。




「大丈夫ですから。」




そう答えたけれど、自分でも分かっていた。




私はずっと、何も大丈夫じゃなかった。




それでも、これだけは持っていきたかった。




ユウトくんに。




「そう、ならいいんだけど。」




「はい、二百円ね。」




「お願いします……。」




「ありがとうね!!下ばっか向いちゃいけないよ!!」




「……はい。」




改札を重い足取りで抜けて、二番線へ向かう。


私はある場所へ向かうことにした。


そこで最後にしようと思った。




「ここかな……。」




私は友人の瑛太くんに聞いたらここだと言われた。




松田駅から三十分ほど歩いて山を登った先にあるこの場所だと。




「……久しぶり、ユウトくん。」




私の最初で最後の場所はユウトくんのお墓にした。




「待ってて……洗うからね。」




初めてだったから難しかったけど、不器用ながら墓石を綺麗にした。




「横、座ってもいい?」




「……。」




「懐かしいね横になって夕暮れをみるのは。河川敷以来だっけ。」




「あ!そうだ。はい、これ。ユリの花、ユウトくんがさ……私に似合ってる花何って聞いたときにユリって答えてくれて、誕生日にはユリの花のヘアピンくれて、本当にうれしかったんだ。」




「私ね、自分のことも守れないし、何もできなかったの。笑えるでしょ笑」




「ユウトくんとの思い出は本当に楽しかった。私にとっての希望だったんだ。」




「私はダメダメだったけど、今まで頑張ってきたよ!!」




「……。」




「……いつもだったら褒めてくれるのに……。」




あぁ……私、こんなつもりじゃなかったのに。


すぐお別れを言って、そのまま……。


けれど、ユウトくんとの思い出を思い出すと楽しくて……なのにユウトくんは……。




ーーそんな悲しい顔するなよ。




「え?ユウトくん!!」




「…………。」




「気のせいか……けれど、聞いてくれてありがと。これで最後だね。」




「私、ユウトくんと会えてよかった。向こうで会えたらいいな。」




「じゃあ……私、行ってくるね。」




さっき墓場についた時にいい崖があった。




うん、そこにしよう。




手が震えてる。


自分で決めたのにな。


決断が歪む前に早くしよう。




「お父さん、ごめんね……。」




…………ボン。




………




……




「……きて。」




ん?




「ミユ、起きて。」




「ユウトくん!!……んぐ。」




……ここは……崖下。




最悪だ……死ねなかった。




あ……なんで、なんで私はこんなにも上手くいかないの?




右足と左腕が骨折してるよ……。




「いだいよ!!……私にまだこの地獄にいろっていうの!!」




「神様いじわるだよ……。」




これからどうしよう。


崖には登れない。


こんな中途半端にも死にたくない。




けれどこんな夜にどうしたら……。




とりあえず立とう。




大変だった。


右足は腫れていて使い物にならないから、近くの木の枝をささえにして、左足と右腕だけで立ち上がった。




「……いだいよ。」




これからどうしよう。




もうなんでもいいけど、死ぬならちゃんと死にたかった。




痛いし、まだ生きてるし最悪だよ。




一旦、光のある方へ行こう。


そしたら街に出るかもしれない。




もしかしたら死ぬのは今じゃなかったのかもしれない。


まだ何かやり残したことがあったのかもしれない。




私は光に向けて必死に一歩ずつ踏みしめて歩いた。


二時間はたったと思う。一向にまちに出る様子はなく、森の中へ入っているような気がした。




それでも諦めずに歩くことにした。


きっと何かある。意味はきっとあると思って。




けれどなにもなかった。


後ろも前もずっと森。


体力も限界だった。




「なにしてんだろ、私。」




「あ、ヘアピンが……なに、これ……綺麗。」




異世界に紛れ込んだような感覚だった。


満月が映る池、その真ん中に壊れた石鳥居。


ヘアピンを落とした先に、それが姿を現した。




綺麗だった。こんなに不可侵で綺麗な物は久々にみた。




奥に赤い光がある。


「もうここしかない……。」




最後の力を振り絞って、赤い光のある方へ向かった。




周りの道は季節がめちゃくちゃで、新しいものや古いものまでたくさんのものが周りに置かれていた。




「なに……ここ。」




神社みたいだけど、本殿がない。


道が続く先にはツタのかかった洞窟のみ。




私は迷わずこの洞窟に入った。


暗い道が続いた。


ただ光に向かって歩くしかなかった。




「なにここ……。」




そこには見た目からは想像できないほどの大きさの空間が広がっていた。




目の前の光景は異質そのものだった。


あの道を見て予想はしていたけど、四季がめちゃくちゃになっていた。




本殿もやけに大きかった。




「あれ、ケガの痛みが少しだけ収まった……。」




どういう仕組みかはわからない。


けれど、少しだけ体が軽くなった。




ここまできてようやく悟った。


私にはもう後がない。




もしかしたらこれ自体幻覚で死んでいるかもしれない。




最後の余興だ。


やれることをしよう。




私は迷わず本殿へ向かった。


時間がないと感じたからだ。




本殿前の門では、崩し文字すぎて読めない古文が書いてある看板と赤い紐がたくさん吊るされていた。




どうやらこれを右に結んでから行けということらしい。




私は壊れた右足になんとか紐を結びつけ、本殿へ向かった。




「ごめんなさい。お金はもうなくて……。こんな私のお参りを許してください。」




私はお参りをした。




願いは一つだけ。


「ユウトくんが生き返りますように。」




私がユウトくんの墓に行った時に思ったことだ。


ユウトくんには未来があって、希望もあった。


私にはそんなのはないのに、私だけ生き残った。


そんなひどいことはない。


私が代わりになるのに。




無理でもいい。


この願いが誰かに届いてほしい。


そう強く思った。




「もういいか。」




どうせ最後の余興さ。




私は本殿から去ることにした。


もうやれることはない。




帰り際、見覚えのある物が石道路の真ん中に落ちていた。




「ユウトくんの有線イヤホン??」




なんで??


けれど、なんか納得してしまった。


多分、思い出を見せてくれてるんだろう。




「神様ありがとう。さっきヘアピンなくしたところなんだ。最後にありがとう。」




私のすべきことはもうない。


ここも思い出作りみたいなものさ。


足掻いたけど、ついた先がこんな場所なんだから。




よし、神社の外で最後にしよう。




カチカチカチ……




楽しかったな……私の人生なんだかんだ。




カチカチ……




「ここは見かけによらず広かったな。」


時間がかかったけど、やっと入り口までついた。




ありがとう私。ありがとうユウトくん。




白い光に包まれながら、洞窟の出口に出た。




……




…………




「ミユ、大丈夫?」




なにここ?




「聞こえるか?」




「うん!!」




なにこれ?




……ミユはどうしたいんだ?




「は!!……はぁはぁはぁ……。」




ん?ここはどこ……?




……私の部屋?




「骨折は!!」




痛くない。


むしろ無傷だ、なにもなってない。




「夢だったの?あれ全部??……もうなんなの!!」




叫んだって意味ないのに……。




またどうせ母さんがいるんだ。




早くこんな場所から出よう。


なにかされたらたまったもんじゃない。




「あれ?お母さんがいない……。」




珍しい。朝の時間にいないなんて……。




外行ったのかな、外確認しよう……。




お酒の缶や使用済みの避妊用具を避けてベランダへ向かう。




「なにこれ……人が後ろに……しかも倍速??」




なに??目でも狂ったのかな?


……私がおかしいのかな。




倍速以上のスピードで……巻き戻ってる。




「時計は……これも??」




どうやら私以外は全て、巻き戻っている……。




私、どうしたらいいんだろう。


戻ってるって……どこまで戻るの??




「夢だと思ったのに……私、まだ一人なの……苦しいよ。」




あ……母が帰ってきて、




「痛い!!」




廊下から私の部屋のドアまで吹き飛ばされた……。




「……もうなんなの……これ。」




人に当たると痛いの……。




私、世界からも見放されちゃったみたい。


だって、ひとり残されたんだもん。




「……何のために戻るの……何で戻るの!!」




ああ……私、泣いてばっかりだ。


また自分だけが被害者みたいなことして。


……こういう私は嫌いだ。




「ユウトくん……どうしよう……」




いつもならユウトくんが隣に、そばにいたのに。




助けなんていないんだ……。




あれから何時間経っただろう。


いっこうに状況は変わらない。


夢から覚めることもない、一人の状況が続いた。




もう耐えられなかった。


また、ユウトくんのところへ行こうと考えたけど、そんな勇気もなかった。




私は自分が思っている以上に弱かった。


なのに勇気という力も失った私に何ができるんだろうか。




誰でもいい、答えてほしい。




「……苦しいよ。」




なにか、ヒントないかな。


私がするべき道は……




なにか……


ヒントを……。




「こんな所でどうしたの?」




「あ……ユウトくんか……。見苦しい姿見せちゃったね。」




「あんな事されたら誰だってそうなるよ。大丈夫?」




「大丈夫なわけないじゃん。私は何も悪くないのに……。」




「またいじめの延長??」




「そう……母親の噂がまだ続いてて……さ。」




「そうなのか……。大変だったな。」




私の頭をポンポンってしてくる。


ユウトくんがよく私にしてくれるやつだ。


やっぱり、とても安心する。




「うん……けど、教室には帰りたくない。あの子、ユウトくんが好きだから、目の敵に私にとことんひどいことしてするもん。」




「じゃあ、どうすればまた教室に来てくれる?」




「わかんない……。」




「僕はミユと一緒に授業受けたいな……。」




「嘘でしょ……。」




「嘘じゃないよ笑。困ったな……。」




「たくさん困っちゃえばいいんだ……。」




「じゃあ、僕もミユと一緒にこのまま教室戻らずにサボっちゃおうかな〜。」




「それはダメ!!……駄目だよ。」




「ダメなの??」




「私はこれでいいの。けど、ユウトくんがそんなことするのはダメ。」




「難しいな……笑」




「そうでしょ笑」




「落ち着いた??」




「少しなら……。」




「ならよかったよ。」




「無理するなよ……。ミユが来れそうなタイミングでまた来てね。」




「行っちゃうの??」




「ミユがそう言ったんだろ。」




「……いってほしくないけど……我慢する!!」




「なんだそりゃ笑」




「笑うな!!」




「わかったよ。でさ、」




「……?」




「ミユはどうしたいんだ?」




……は!ユウトくん!!




「あれ……ユウトくんは……。」




まただ。




夢か……けれど何かユウトくんをが伝えてくれたのかな。




「私どうかしちゃったのかな……。」




けれど、なにか意味はあるはず。


私はもう一回自分に問いかけてみた。




私がしたいこと、すべきことは何か。




「……ユウトくんを救うこと。」




私があの神社で願ったこと。


私が一番求めていたこと、私じゃなくて……ユウトくんに生きてほしいこと。




たとえ私が犠牲になっても、ユウトくんには生きててほしい。


そう、思ったはずだ。




「私にできること……これしかない。」




切れていた私の糸がかすかにつながった気がした。




「私が……ユウトくんを救うんだ。」




そこからは活気が戻ってきた気がした。


ユウトくんのためなら何でもできる、そんな気がした。




巻き戻る理由はわからない。


けれど、きっと私のために戻っていると思う。


だったら私の願いは一つ。




事故の日まで戻ってほしい。


私の後悔の場所、全てがなくなる場所まで。




そのことだけを願って、ただひたすらに待った。




この巻き戻る時間、何もすることがなかったから。




外にも行こうかと思ったけど、人とかたくさんいて危ないし、苦戦したけど近くにスーパーがあったから、遠くまで行く必要がなく、助かった。




私は決戦の刻を待つ武将のようなそんな感覚だった。




「懐かしいな……。」




ふと、ユウトくんの思い出を振り返りたくなって、ユウトくんとの思い出箱を久々に開封してみた。




私にとっては当たり前でありふれた日常。


けれど、それはいつしか大切な思い出になったり、かけがえのないものになっていたんだな。




「これは、江ノ島で潮干狩りしたときだっけ笑」




懐かしいな。ユウトくんの思い出を振り返るだけで笑顔になれるんだ。


昔はこの箱に救われてた。


いつしかこの箱に頼らずとも、一人でちゃんと立てるようになったのに。




「また、頼っちゃったな笑」




ユウトくん……待っててね、私が絶対に救ってみせるから。




いつだったかな。


この間河川敷でお昼ご飯を食べた後に、帰ろうとした時に、向こうに人影が見えた。




それはユウトくんだった。


幻覚かはわからない。けれど確かにユウトくん本人だった。




幻覚にしては鮮明で、こちらにとても呼びかけてくれた。




それだけで……本当に嬉しかった。


でも、私は「あなたはあなたでいて!!自分を信じて!!きっと大丈夫。」の一言だけ残してその場をさった。




本物かわからないけど、ユウトくんには申し訳ないことをした。


けれど、今ユウトくんになんて会っちゃったら、この決断が揺らいじゃうかもしれないし、何よりこの先立ち直れない気がした。




「ごめんね……ユウトくん。」




この出来事があってから、最悪の事態を考えて、私は何か残すことにした。




「……何だったらユウトくんは見るかな……。」




といっても何を残せばいいのか?


そもそも形残るのかわからなかった。




「あ……シチオウ。」




迷わずこれにしようと決めた。


確かこの小説のキーワードはノコギリソウ。


花言葉は犠牲、献身だ。




私が探していた答えにぴったりだった。




私は赤い付箋を持って、ユウトくんのお家へ向かった。




「ユウトくん……いないよね……よかった……。」




ユウトくんには申し訳なかったけど、勝手にお邪魔させてもらうことにした。




「たしかこのへんって……ユウトくんが……あ、あった。」




この箱だ。


ユウトくんもミユとの思い出を箱に入れていると高校の入学式のとき、ゲームで勝った罰ゲームで話してくれた。




その時、顔が赤くなるぐらい嬉しかったんだっけ。




「…………よし、これで多分わかるかな……。」




私は箱の中の真ん中に置かれていた小説の百五十ページの所のノコギリソウに濃い線をつけて、赤い付箋は貼り、「私にならないで。」と書いておいた。




もしかして、この間のユウトくんが本物だったら私と同じことをするかもしれない。




それだけは絶対に避けたかった。


そんなのは絶対に嫌だから。




その後、箱を元の場所に戻して、ユウトくんの家を後にした。




行ったのは中学生以来だった。


今度は不法侵入というカタチになっちゃったけど、許してほしい。




その日を最後に、私は事故の日以外やることがなくなった。





いつ戻るのか分からなかったから、ただ時間が過ぎるのを待った。




ただ待った。




その日まで。




ある日、耳から見覚えのある音が聞こえてきた。




カチカチ……。




「いよいよ……か。」




カチ……。




………カチャン。




「……帰ろーぜ。」




ん……。


周りが騒がしい……。




「そこうるさいぞ!!てなわけで今日は連絡事項なし。解散。」




戻ったの……。


クラスメイトがどんどん少なくなっていく。




「今日は何日……。」




五月十日だ……。


あ……戻ったんだ。




確かに私の願いが叶ったんだ。


長かった。


本当に長かった。


世界はまだ私を見放してはいなかった。




ありがとう……。




「おい、どうしたんだ??」




「あ……瑛太くん!!どうかしたの??」




「気づいてねーの?お前泣いてるぞ。」




「え……嘘。ごめんね……苦しい姿見せちゃって……笑」




「ちょっと屋上行かねーか?」




「でも……今日はユウトくんと帰る約束してて……。」




「あいつ今日はめっちゃ遅くなるって言ってたから大丈夫だって笑。ちょっとだけ……たのむ笑」




「……わかった。」




最後だしちゃんと話そうと思った。




「まださすがに明るいな笑」




「そうだね笑」




「で、大丈夫そうか?気づかないくらい何だからさ。何か抱え込んでんのか??」




「そういうわけじゃないけど……ね。」




「なんだよ、それ笑」




「私ね、少しだけ長い夢を見てたの……希望を持って進んだのに、周りからとことん壊されて……世界からも孤立して一人になっちゃうっていう夢。私はそれがどうしても耐えられなかったみたい……。」




「……。」




「ごめんね……私勝手に語っちゃったりして笑」




「あのさ……好きなんだ。」




わかってた。




「……え?」




「俺、ミユのことが好きなんだ。」




ちゃんと向き合うって苦しいな。




「ごめんなさい!!」




「はや!!もうちょっとためてくれよ……。勇気出したのに……。」




「その……ごめんなさい。」




「二度はきくな……。まぁ分かってたんだけどさ、俺自身、後悔がないようにしときたくてさ。」




「……うん。」




「だから返事聞けてよかったよ。ユウトのこと大事にしてやれよ笑。」




「……それって。」




「気にするな笑。ユウトの事頼んだぞ笑」




「ありがと。」




「え?」




「おかげで気分が晴れた!!もう迷いがないって感じかな……だから、ありがとう。」




「なんかわからんけど……ならよかった笑」




こうして私は屋上を後にした。




「あとはいつも通りに……。」




正直恐怖もあった。


けれど、助けることのほうが私にとっては大切だった。




その後はすぐだった。


五百羅漢駅に行って、縛りゲームをして……私の決戦の地、四連交差点まで来た。




三つ目まで来た、いよいよだ。




「……ごめんね。」




「ミユ、なんかいったか??」




「うんん、なんでもない!!」




「じゃあ俺、先に行くわ!!」




私は必死に走り始めた。




……私がユウトくんを救うんだ。




「……間に合って。」




私はユウトくんの背中をめいいっぱい押した。




痛かったらごめんね……。




「おい、押すなよ〜!!」




私が最後に聞いた、ユウトくんの声だった。

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