第36話
「やっと……帰れた。」
瑛太と喧嘩した河川敷を離れ、僕は最短距離で自宅を目指そうとした。
けれど前のようにはいかなかった。
前は夜で人通りも少なかったが、今回に限っては昼だったから、無理ゲーに近い横断歩道、不意打ちを狙ってくる、小学校の低学年、視界の悪い道などいつもは全然意識しないような道まで神経をすり減らして一つずつ着実にクリアしていった。
縛りゲームよりももっと無理ゲーに近かった。
けれどまだ安心はできない。
「親父がいるじゃん……。」
よりによって親父がいるのか……。
この巻き戻ってるときはごめんだけどいてほしくない……。
幸い、親父は寝ていてすんなりと僕の部屋に行くことができた。
親父、寝ててくれてありがとう。
「はぁはぁ……もうダメ。」
あぁ…ふかふかのベット気持ちいいな。
このまま寝ても……いや、ダメだ。
情報を調べてからだ。
帰る途中にもミユに関係のあるものを調べたりしたけど、何もなかった。
あとは、ミユと関連のあるといえば……。
押し入れのここら辺に……あった。
ミユとの思い出箱。
いつも決まって押し入れに入れていた。
オヤジが触らないようにと、ちょいと奥において頑張って隠してたな。
ミユが死んだあの日、嫌になって拒絶するようにミユのものすべてを封印してたから何も触れていなかった。
これを開ける日が来るのがこんなにも早くて、正直うれしい。
ミユとの思い出は自然と笑えるようなものばかりだから。
中はなんにも変わっていなかった。
中学三年生のときにしまったときのままだ。
初めて二人で貯めたお金で買ったチェキカメラとそれで撮った写真。
あの時フラッシュがあるなんて知らなかったから、二人とも目瞑ってるし笑
これは初めて花見に行った時に桜の花びらをテープで紙と挟んで思い出に名前を書いたやつだ。
他にもたくさんあるな。
たくさん色んなとこ、行ったな。
そして、ど真ん中に見えるように置いてあるから性格出てるなーなんて思う。
“シチオウ”の上巻、ミユが買った方のやつだ。
僕よりこの小説を早く見つけていて、上巻はミユが持ってて、それを交換したんだっけ。
ちゃんと表紙も逆になってるし。
「……ん??」
こんな付箋つけてたっけ?
僕とミユは読んだ場所までを僕は青、ミユはオレンジの付箋をつけて競ったり、ここでもいろんなゲームをしていた。
けれど、この付箋には見覚えがない。
だってここには、赤い付箋が貼られているんだから。
そのページを開いてみる。
「なんだこれ?」
その小説のページには赤い付箋とかなり濃い圧力で線がひかれていた。
「ノコギリソウ??」
ノコギリソウ??
この小説はノコギリソウという花がキーワードになっている小説だ。
なぜノコギリソウにこんなにも濃い線をひいたんだろうか?
上の付箋には「私にならないで。」のひと言だけ書かれていた。




