第35話
「……とう。」
瑛太が……目の前で巻き戻り始めた。
……てことはまずい。
当たったらたまったもんじゃない。
当たらないところまで下がろう。
「……はぁ。」
……最後まで言えなかった、伝えられなかった。
ここまでしてくれる友人はいなかったし、ここまで仲の良い男友達もいままでいなかった。
「”ありがとう”の一言すら言えないのか……僕はさ……。」
渡したくなかった、きっとミユと繋がれるのはこの小説だけだったのに、それを僕に渡す勇気……僕だったらきっとできない。
それを成し遂げた瑛太に僕は何にも言えなかった。
伝えることもできなかった。
この現象はどうにもならない。
少しぐらい待ってくれたっていいのにな。
次に会うときにはもうあいつはこの事があったなんて覚えててくれない。
……時が戻っているから。
あのとき、あの瞬間の瑛太に伝えないと意味ないのに。
あいつにはほんとに申し訳ないことをした。
「僕って……助けられてばっかだな笑一人じゃなかった……。」
お父さんも僕を助けてくれて、しかも他人であるはずの瑛太も僕を助けてくれて。
「ほんと……周りに恵まれたな。」
ああ、こんなに嬉しくて、嬉しくてたまらない気持ち、久しぶりだな。
うれし涙も久々だよ。
けれど、本当にありがとう。
おかげで立ち直れたし、僕も向き合う準備もできたよ。
今回の事があって、分かったことがある。
まず前提として、巻き戻っている間は基本一人だし、こないだたくさん検証したから大丈夫だ。
問題は何をトリガーにしているのか?という視点だ。
二つの事を踏まえて確信した、トリガーは「後悔した事。」だと思う。
僕は人生で自分が後悔したことが少なかった。
だから多分この仮説は合っている。
それに結びつけて、神社の試練はこのことを指すと思う。
そして、気をつけろって書いてあった看板はきっと”起きることは、事象は変わらない、だか運命は変えることができる。”ということだろう。
多分何かしら条件がないとこの現象は発生しないと思うが、どうやら条件が揃っちゃったんだろうね。
おかげで救われたり、複雑だけどさ。
以上のことを踏まえると、僕はこのあと葬式の日に戻ってすぐに交通事故の日に戻ると思う。
だから、少しでもヒントを探さないといけない。
運命を変える方法を。
この世界はスピードが速い分時間も少ない。
いまだってもう黄昏た日が出てきた……。
だからこそ、早くしないと。
まず、小説から確認してみよう。
渡したのは思い出以外にあるはず。
小説をパラパラと一瞥したけど何も手がかりになりそうなものはなかった。
けれど、久々に開いて懐かしい思い出をたくさん思い出せた気がした。
ミユもこの小説を高校に入ってからも読んでいるみたいだった。
カバーの裏に読み終わった日にちを買ったあの日から、欠かさずメモっていた。
僕が買った小説をここまで大切にしてくれてほんとにうれしい。
「ミユ、ありがとな。」
ミユとの思い出はどれも濃いのばっかりだ。




