第14話
相変わらず支離滅裂で何とも言えない景色だな。
ただでさえ目が復帰したばかりでチカチカするのに。
さっきのは本当になんだったんだ?
そもそもさっきの看板に書いてあった“試練”って何を指しているのだろう?
さっきのネジを巻くような変な音も気になる。
一番はやっぱりミユのヘアピンの事だ。
冷静に考えてもやっぱりここにある意味がわからない。
考えたい気持ちもあるが迷宮入りする気がする。
解決したいことはたくさんあるが、今解決できることは多分ないし、考えたら悩みと疑問が増え続けるだけだ。
とりあえず少なくともヘアピンがあった事を頼りに希望は薄いが、
もう一度だけこの不思議な神社と洞窟内にミユがいないか探そう。
僕は本殿の中や本殿の右手にあるダウンが欲しくなるぐらい寒い冬の場所から桜の甘い匂いが漂う春の場所まで四季を遡るように右から左へ隅から隅まで散策した。
やっぱり、ミユの姿らしきものは見つからなかった。
ミユを探すのと同時に他にこの神社について何か手がかりになるものはないかと探したがヒントらしきものですら見つからなかった。
けど一つだけ。
夏の場所の奥にまた似たような看板があった。
その内容はこの神社の事について記されていた。
どうやらこの神社は「後刻神社」と呼ぶらしい。
縄文時代から続く神社で江戸時代に一回建て替えられたそうだ。
本殿の「試練」というのは修行僧の長い試練の中の一つで乱れた心を正しい道へ戻すのが役割であり、目的らしい。
たしかに修行僧の試練ならこんな所に神社があってもおかしくない。
山奥にあるイメージだし。
そして一番重要であろう試験の具体的な内容が書かれている箇所は黒く塗りつぶされていた。
黒く塗りつぶしたやつは気でも狂っていたのだろうか。
こんな神社だし塗りつぶした奴には少しだけ同情してしまう。
はぁ…とりあえず深呼吸しよう。
いろんな気持ちが込み上げてきて、今でも立ち直れなくなりそうだ。
僕は湿った空気をめいいっぱい肺に溜め込む。
そして、ため息まじりに息を吐く。
気絶から目覚めてから、ずっと休んでないし気を張っていないと体中の傷で倒れそうだったからそれもあって身体的にも精神的にもいつもより体が重く感じる。
よくこんな状況でここまでやれた僕を褒めてあげたい…けどそんな余裕もない。
さすがに休憩しよう。
じゃないと体がもちそうにない。
その前に今何時かを確認しにこの神社を一旦出よう。
ここから出れば太陽の向きでなんとなく時間はわかる。
スマホは壊れてるから原始的な方法しか確認しようがないし、一回休憩でもしたらしばらくは動けない気がする。
休むのも洞窟の出口付近でする予定だ。
明日の行動する時間が遅れたりしたらこの森からは脱出できる可能性も生存率も確実に減る。
そんな事はあってはならない。
僕は最後の力を振り絞って来た道を丁寧になぞるようにたどっていく。
気が抜けたのか、さっきよりさらに体が重い。
音楽聴いてなんとか紛らわせるか…ってスマホ壊れてるんだって。
さっきも自分で言ってたのにお前は馬鹿なのか?
しかも、僕の大切にしていたスリーコインズで買った有線イヤホンがない。
さっきまであったのに…
というか僕は本当にこの遭難から抜け出せるのだろうか。
当たり前に誰も助けになんて来ないし、明日や明後日を生きていけるなんて保証だってどこにもないし…
元々こういう運命だったんだろうか、僕がしてきたことの罰がこれなんだろうか…
はぁ…なんでまたこんなこと考えてるんだよ。
ダメだ、早く違うことを考えないと。
……あ、そういえば食べ物調達しないといけないんだっけ?
後回しにしすぎて忘れていた。
時刻を確認したらついでに探しに行こう。
そしたら一息つこう。
黒く染まった壁に目立つように白い光が目の前に現れる。
…やっとついた。
同じ場所のはずなのにこの後刻神社はやけに広い。出口に行こうにも手軽に行ける距離ではない。
しばらく洞窟内にいたからか体内時計の感覚が狂ってしまったし、外がどんな景色になっているかが全くの未知数だ。
僕は真っ黒い細い洞窟の入り口を 逆走している。
ふと思ったけど…
食べ物探しに行くってのはいいけどここの洞窟を出たとして、周りに食べれそうなものなんてあったっけ?
まじで朝に何か食べとくべきだったな。
どっかに…カロリーメイトとか落ちてたりしないかな…
何考えてんだ、こんな時代遅れ洞窟に文明が発明した軽食なんぞ存在するはずがないだろ。
はぁ…ほんと疲れた。
遭難から脱出することばかり考えていたが、脱出した僕はミユの墓参り以外何をするつもりなんだろうか?
考えてもなかった。多分植物のようにこれから生きていくんだろうな…
次第に僕の前の白いアーチ状の白い出入り口がどんどん巨大化していく。
まぁ…それでいいさ、生きれるかまだわかんないし。
白く光った出入り口が途端に姿を消し、僕は暗闇に包まれる。
あぁ…困ったもんだ。




